人魚の赤ちゃんはどうやって作るの?

ちびまるフォイ

来いよベネット。ボンベなんか捨ててかかってこい!

趣味はダイビング。



そう言っておけばモテるかと思って始めたダイビング。

ふと潜った海の底で目を疑った。


『ソープランド:マーメイド』


水中に風俗店のネオンが輝いている。

入口近くには看板がたっている。



――当店ではボンベを含む異物の持ち込みを禁止しています。



「ボババビィ!?(なにぃ!?)」


水中でぶくぶくと泡が口からあふれた。

しかし童貞の行動力はその程度ではゆるがない。


フィンもボンベも、何もかもを捨てて店内に入る。


店内には全員貧乳でこそあるが、

うるわしの人魚たちが貝殻ビキニで待っていた。


水中ではしゃべれないので人魚はジェスチャーで問いかける。


"どの子にしますか?"


「そこの金髪の子にします!!!!!」


口より先に俺の息子が声をあげた。

人魚に連れられて個室へと案内されると……。


「ボバァァ!!!」


もうだめだ。息がつづかない。

たまらず店を出て水面に上がってしまった。


「ちくしょう! これからめくるめくピンク色の性体験だったのに!!」


店内にはボンベの持ち込みはできない。

つまり、本番をするには息を止め続ける必要がある。

ならばやるしなかい。


その日を境に、俺の趣味はダイビングから素潜りへと変わった。


すべては人魚とえっちなことをするため。

どこまでも息を止められる体に作り変える必要がある。



『素晴らしい! 童貞選手、素潜りギネス記録です!!』


気が付けば素潜りの世界記録になるほどの肺活量を手に入れた。

童貞の本気は無限大なのだ。


「よし、いくぞ! 人魚の風俗店へ!!」


少年漫画で修業を終えた主人公のように、決意新たに海へ飛び込む。

あでやかなネオンライトに照らされた人魚ソープが見えてきた。

こっそり秘密兵器も用意している。


店に入るとすぐに金髪の子を指名する。


"部屋に移動しましょう"


人魚はジェスチャーで部屋へと案内する。

ここからはまさに未知の世界。股間が高鳴る。


部屋はそこだけ温泉のようにぬるい温度に設定されていた。


さぁおっぱじめようと、人魚の貝殻に手を伸ばすが人魚は顔を横にふった。

指さした先は風呂だった。


"先に体を洗う必要があるのか……"


通りでちょっと暖かいわけだ。

しかしこれくらいのタイムロスで素潜り世界記録保持者は揺るがない。

体を洗い終わってもなお息が続く余力がある。


"今度こそ! 人魚の生態を解き明かすぞ!!"


と鼻の下を伸ばした矢先、人魚はまた顔を横に振った。

部屋の壁にある注意文を指さした。


"人魚たちは繊細です。よく知らない相手とは本番できません"



こうなればどこまでもやるしかない。

水中でできるうる限りのジェスチャーで自分の素性を伝えた。


でもいくらやっても限界があるので人魚は「?」のジェスチャーを返すばかり


小一時間の格闘したがいつまでたっても本番の「ほ」の字も見えてこない。

もう息が続かない。

そこでやっと俺は自分のバカさ加減に気がついた。


"最初から本番なんてさせる気ないのでは"


部屋にはそれらしい道具も置いていない。

ただのシンプルな個室。


この店は最初からそんな気なんてないんだ。


ぶくぶくっ……。


どんどん息が苦しくなっていく。

人魚はそれを待っていたかのようにほほ笑んだ。


こうなったら秘密兵器を使うしかない。


俺はスーツの内側に隠していた道具で網を発射した。

蜘蛛の巣のように広がった網が人魚をとらえて離さない。


"ふははは!! 息が続かなけば、外に持ち出せばいい!!"


俺は人魚の網を持って水面へと急上昇。

人間……いや、童貞の本気を舐めないでほしい。


地上に上がるとやっとジェスチャーではなく声でコミュニケーションが取れる。


「さぁ人魚! これでもう先延ばしはできないぞ!

 海に戻りたければ、どうするかわかってるな!」





人魚は声変わりした野太い声で答えた。



「や ら な い か」





「えっ……」


海の底で見えなかった薄い胸毛が目に入る。

人魚がみんな貧乳っていうのはまさか――。



終わり。

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