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バンッ!バンバンッ!


銃声が、響く。襲撃を受けてしまえば、感傷に浸る間など無い。

(あと、2人は居る……)

カスミはチラリと目配せをし、後ろに追いついたアズマとミサトに合図を送る。銃声の聞こえたポイントを中心に、アズマとミサトが左右から射撃。


ドスンッ!


遠くで何者かが倒れた気配がした。

「2人とも、走れる?」

コクリとミサトが頷く。

「同業者なら、深追いはしない。そういう事か?」

アズマが小さく問いかける。

「賭けでは、あるけれど……倒れた仲間を放置してまで追ってくるようなら、オーナーに連絡、お願い」

カスミの言葉が途切れた瞬間、3人は走り出す。旧車道から、今は無人の筈の旧居住地をひた走る。足音と、たまに聞こえる銃声以外は音の無い領域。ふと、カスミが足を止めた。

「だめ……追ってくる。1人だけ、強いのが。この領域では、迎え打つしかない」

無言で頷くアズマとミサト。武器は、構えたままだ。

緊迫した空気。数秒の間を置いて、爆音。カスミは付けていたヘッドフォンを外し、アズマに投げ渡す。

(それ使えば、脳波で直接オーナーに連絡、出来るから!)

出来るだけ襲撃者に気づかれぬよう、カスミはアズマに口パクで告げる。唇の動きを読んだアズマは、ゆっくりと頷き、ヘッドフォンをして目を閉じて集中。ミサトはアズマを護るように、側に控える。


キンッ!


金属同士のぶつかる音。襲撃者の動きは思いの外早く、銃弾の一部をカスミの短刀が受け止め、弾いた。

「ぐっ……」

短く呻いたカスミの肩口の服は裂け、血が染みを作り、滴っている。銃は、何発か放たれたらしい。

(連射してしまえば、私たちなどすぐに……)

そういう事か、と、何かに気付いたカスミは、ニヤリと歪に口角を釣り上げる。

次の瞬間、疼く血潮に身を委ねるよう、カスミは銃弾が飛んできた方向に、サッと駆け出す。チラリと目に入った黒服の男をめがけ、短刀を振りかざした。

「クソッ!小娘がっ!」

男の叫び。3発分の銃声の後、カチ、カチと弾の切れた銃の音。

(やはり、武器の所持は旧式の拳銃のみ。上手く正体を暴き出せれば……)

先程の分も含めて、銃弾を身体に掠め、血を流しながらもカスミは男の上に馬乗りになり、短刀を一本、男の喉元に突き付けた。

「あなた達は、何者?」

「……」

「だんまりでも、構わない……けど」

ツゥ、と、カスミの短刀が男の喉元を薄く切る。軽い切り傷から、うっすらと血が滲んだ。

「い、言える訳……ねぇだろ!クソッ!」

「そう……残念です」

カスミの、2本目の短刀が、男の利き手の手首を刺した。ズシャ、という肉に刃物が刺さる嫌な音。古びたアスファルトに広がる、血。


「退け!カスミっ!」

後ろから、アズマの叫び声。カスミは声を認識して直ぐに短刀を引き抜き、男の上から退いて後ろへ飛んだ。

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