丁-ドラゴンポーノレ・クエスト

T-DRAGON

第1話「グルーヴを持たざるもの」

30XX年、地球はグルーヴ帝国に支配されていた。


グルーヴ帝国の皇帝、ライド・シンバル13世(かつて、ドラム専門雑誌リズムアンドドラムスにおいて「グルーヴとはすなわちライドシンバルであると言っても過言ではない」との特集が組まれたことがあった、と筆者は記憶している)は自らの権力の象徴として全国民にリズム天国を強制し、グルーヴの無い者の眼鏡を容赦なく潰し(視覚を失えばそれを補う為に聴覚が発達する為)、脳にメトロノームを移植インプラントした。また、高得点を取ったものには貴族リズムマシンの位を与えた。民衆の間でリズム感格差が広がり、次第にリズム感のない者達は音楽そのものや、つんく♂(リズム天国の開発に関わった。ドラムサムライとしてゲーム中に出演)を恐れ、太鼓の達人を練習するようになった。電子ドラムの価格は低下し、防音のしっかりした住環境が整備された。練習スタジオの使用には国から補助金が出た。


そんな絶望の時代に、ドラムスティック2本で帝国に立ち向かう一人の漢がいた。名はT-DRAGON。彼は生まれつき、全くと言ってよいほどグルーヴを持たぬ、伝説ハードコアのドラム戦士ウォーリアーであった。

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