第42話

 今日、伏線の張り方についてのリツイートを目にした。


「伏線の張り方を教えて下さい」と言われたが、伏線は謎として書くものではない。


 というような内容だったと思う。


 伏線は、「というのはどういうことだろう」とか「花子はまだ何も知らないのだった」みたいなものではない。

 伏線とはキャラクターや物事の状態の積み重ねから、未来に起こる結果のヒントや結果へとリードするためのものだ。だからミスリードも可能になる。


「誰それはなになにが好きだった」という結果やリードする道筋に、「なぜか意識してしまう」「無視されたりすげなくしてしまって切ない感情が生まれる」「誰それが何気なくくれたものを捨てるのがためらわれる」「誰それが笑うと回りの景色が一変して輝くように感じた」というような心理描写やなどの積み重ねから、「好き」という結果に導いていく。


「俺は目立ちたくないから引きこもっているんだ」という言葉を何度も積み重ねていく。結果的にそれは「目立つと能なしの王子とは思われなくなり命を狙われてしまう」という結果に繋がる。


 ミステリーで人が死ぬ原因は謎だが、それは伏線ではない。毒殺された。という事実を持ってきてもそれは伏線ではなく、要因の一つでしかない。


「誰それのために毎日強壮剤を届けている」と言う状況を積み重ね、「誰それは病気で寝込んでいる」という状況を盛り込んでいく。

 結果それは「毒を盛っていた」という結果に導く。


 伏線はセリフや状況等で積み重ねて、物事や心理状態の結果へと導いていくものである。


「俺はダイヤモンドは妻にする女性にしか送らない」というセリフが、「彼がダイヤモンドを買った」という状況へ導く。そこに、もしも彼のことが好きな女性がいて「わたしは彼が愛している女性ではない」と思っていることを書いておくと、「ダイヤモンドは自分に送られるものではなく、自分以外の人物に贈られるものだ」という状況へ導かれ、さらに、「そのダイヤモンドを持った彼が彼女のもとにやってくる」という結果へと繋がる。この一連の流れには二重の伏線があり、恋愛小説では王道であるため、読者は最初から「ダイヤモンドは彼女のために彼が買ったもの」ということを知っているが、話の道筋での伏線と結果にはなる。


 こういった結果が最初からわかっている王道もの以外に、伏線は「チート」や「ミスリード」といった使い方をされる。


 娯楽小説では物語の結果へと導くために何度でもこういった伏線を張り続ける。読者は伏線である何気ないセリフや小道具や状況を忘れないかぎり、結果に対してこれはこういうことだったのか!という気付きに導かれる。


 こうなるための状況をさり気なく詰め込んでいき読者を導いていく作業が伏線を張るということなのだ。


 だから気付きが終われば伏線は回収される。二重の伏線を張れば、気付きは二回やって来るため、それはどんでん返しや「チート」と呼ばれる結果になる。伏線が上手く張れていれば、「チート」はやってはいけないご都合主義にはならない。どんでん返しも同じなのだ。


 伏線は煽りではない。読者に気づかせずにそっと文章の間に挿入していくものだ。その積み重ねが上手く行けば、結果に対して読者はあっと気づくのだ。


 ※追記

 たまに伏線を張っていても、読者さんが忘れてしまって、なんでこういうことになるんだということになる場合がありますが、しっかり伏線を張っていればあまり気にせずに書いていきましょう。

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