大好きなのに。(恋愛ホラーのショートショート)
あんちゃ
第1話 無限デート
今日は大好きな彼とデート。
9時に起きて軽くシャワーを浴びたあと、念入りに髪をとかしてヘアアイロンをあたためる。
入念にトリートメントしてあるロングヘアは、彼がいつも褒めてくれた。だから今日も時間をかけてふわっとした内巻きのセットにした。
準備が整い、ちょっとくつろいでから家を出て、13時に彼と駅で待ち合わせをする。
彼はいつも少し遅刻しがちで、わたしはちょっと怒るんだけど、申し訳なさそうにする彼の綺麗な顔を見ているとついつい許してしまう。
今日もわたしがしっかりデートプランを考えてきたから、それに沿って動こうね。
最初は彼の好きな美術館へ。
ここの美術館はペアでチケットを買うと通常より200円安く買えるのだ。
だからいつも二人でくると少しお得。
さっそく美術館の入り口で入場券を買う。
「ペアチケットをお願いします」
「え?あ、はい。かしこまりました」
なんだか受付の人がわたしの横をチラチラ見てる気がする……。
彼がイケメンだから見惚れたのかな?
それほど彼が魅力的なのかと思うと、わたしは少し誇らしげな気持ちになった。
美術館を出たあとは、近くにあるアイスクリーム屋さんでアイスを買った。
「わたし買ってくるね」
アイスの味はいつも決まっている。わたしはバニラソフト、彼はソーダ味のシャーベット。
「今日は暑いから早く食べないと溶けちゃうね〜」
と、ソーダ味のシャーベットがポタポタわたしの手に落ちた。
街を歩くと、すれ違う人たちがチラチラとこちらを見てくる。
きっと彼がイケメンだからみんな振り返って見てしまうのだろうな。
彼は誰にも渡さないよ、と心の中ですれ違う人たちに叫んだ。
そのあとは夕飯の買い物をして、彼の家に一緒に帰った。
わたしがキッチンで夕食の準備をしている途中、ふと彼のスマホを見てしまった。
そこには知らない女の子との楽しそうなLINEのやりとりがあった。
わたしはカッとなって、キッチンにあった包丁を握りしめた。
「誰にも渡さないよ……」
わたしはその包丁を彼の方へ向けた。
彼はギョッとして、怯えた目をしている。
やめろ、やめてくれ、頼むから、
とわたしに訴えかけているように。
わたしが包丁を振りかざした瞬間、包丁は床に落ちた。
はっと我に返ったとき、目の前に彼はいなかった。
そこでわたしは
あっ
と気がついた。
そうだ、君は、わたしが3日前に殺していたんだった。
ごめんね、3日前から君と毎日デートしてるけど、いつも同じところでカッとなっちゃうんだ。だからいま君はベランダの土の中にいるんだよね。少しは反省してくれたかな?
また、あしたもデートしようね。13時に駅で待ち合わせだよ。
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