けものものがたり ~Lord of the Hat~
とみぃず
Ⅰ たびのフレンズ(上) “ヒト”の帰還(きかん)
ものがたりのはじまり
それは、まだ陽(ひ)も高く上らぬ“さばんなちほー”の、とある木の上でおこりました。
「おきるのだ……です」
えだの高く太いばしょでうとうとしていた一人のけものの耳もとで、ささやくものたちがおりました。
「おきるのです、サーバル」
「目をさますのです、サーバル」
「……むにゃ。なあに、いったい……」
あたまの上の大きな耳をぴくぴくとうごかして、サーバルとよばれた女の子が、よこたわっていた木のえだからすっと体(からだ)をおこしました。
そこには、それぞれ灰(はい)色と白のだぶだぶの“ろーぶ”をきて、やっぱりそれぞれ灰色と白の大きなつばひろの三角ぼうしをかぶり、やっぱりやっぱりそれぞれに長い木のぼうをもった、ミミズクとコノハズクの女の子が立っていました。
「だれ? あなたたち、鳥のフレンズ?」
二人はかおを見あわせ、ふたたびサーバルのほうをむきました。
「しーっ。われわれのことは“がんだるふ”とよぶのです」
「わたしが“灰色のがんだるふ”、となりのはかせが“白のがんだるふ”なのです」
「??」
ふわーと大きなあくびをし、
「よくわかんないけど、二人とも“がんだるふ”なんだね?」
サーバルが目をこすりながらこたえます。
「そうなのです。どうせとちゅうで生まれかわるので、めんどーだから、さいしょから二人でとうじょうなのです」
「けっして“どぅりんのわざわい”とたたかうあくしょんしーんを書くのがめんどーだったとか、そういうわけではないのです」
「??? まあ、いいや。で、わたしになにか用?」
きようにえだの上で正座(せいざ)し、サーバルは二人を見上げました。
二人の“がんだるふ”は“まじめなかお”をして言いました。(もっとも、二人ともあまりひょうじょうをかえないので、なにが“まじめなかお”なのかわからないのですが)
「これからここを、ある小さなけものが通りかかるのです」
「おまえには、そのけものをたすけてほしいのです」
「だれか来るの? 新しいフレンズの子?」
「フフフ。来ればわかるのですよ」
「フフフ。会えばわかるのです」
いみありげに(でも、ひょうじょうをかえずに)わらって、二人の“がんだるふ”はサーバルを見つめます。
「そのまえに、おまえにはおぼえてもらわなければならないことがあるです――」
「いっしょうけんめいおぼえるのです。あたまをつかうのです。がんばるのです――」
そのあと二人の“がんだるふ”は、サーバルがおぼえるまでねっしんに、いろいろなことを教えつづけました。
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