四字熟語短連伝

鯖ジョーカー

画竜点睛

二三角高校にて、恒例行事である二三祭が行われていた。

今体育館上で行われているのは、紅蓮という文字の書き初めである。

これは見せ場の一つという事もあり、書き初め担当で書道部のルーキー...田中君は緊張しているのか、体のぶらぶらが少し目立っている。


おっと、ここでアナウンスが入ったようだ。

「書き初め2017、お題目は紅蓮、です。一年四組、田中正喜君、お願いします」

「はいっ!!!!!!!」

田中君の低くも規律正しい声が響いた。

そこでかきはじめる。


一画............また一画と、丁寧にしかし力強く文字を書いていく。

もはや一枚の風景を描いた絵のように。

見とれているのもつかの間、紅の字をかきおえた。

ここまでは臨場感と丁寧さがある、絵のように美しい字、になっている。

問題は画数の多い次のやつだ。

国語の先生によれば、バランスが崩れやすい字の一つだという。

田中君は、更に注意深くやらなくてはいくない。

こんなささいな事でも、伝統、いや運命を背負った勇者なのだ。画竜点睛を欠く、訳にはいかない。


ここまでは順調だ、俺だってやれるはず。

いや、予想してるんじゃない。やれる。

俺なら絶対出来る。やってやるうううっ‼️


さあ、勇者は再び行く。あの山のてっぺんに立つ城の紅蓮という名の魔王を倒しに。

行け。


草かんむりを書き。


核となる車の部分を書き。


最後の魔物、しんにょうを書く............が

突如田中君は手がすべり、墨が余計な所にばらまかれる。


嘘だ。嘘だ。

この俺が。気を緩めるなど。

全国大会優勝のこの俺が。

馬鹿な............馬鹿ナァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!















そう。どんな猛者であれ、僅かな気の緩みで............画竜点睛を欠くのだ。




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四字熟語短連伝 鯖ジョーカー @akatsuki333

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