流血戦
八幡と守山がオクタゴンの仲で対峙する。
「ルールはどちらかがギブアップまたは最後まで立っている者を勝者とする。それと開始から10分経過すると金網に電流が流れるような仕組みになってるから10分以内にケリをつけた方がいいぬブヒョヒョヒョヒョ」
「ナニ?」
「何だって?」
「ホンマかいな?」
3人共、塗呂の言葉に驚く。
「オーナー、そんな事したら死んじゃうヨ」
陳は不安げな様子だ。
「ブヒョヒョヒョヒョ。大丈夫だぬ。あの二人はそう簡単には死なないぬ。何せ血を分けた兄弟だからぬ」
「エッ?兄弟?」
陳は驚きの声を上げた。
しかしオクタゴンにいる二人の耳には届いていなかった。
「オーナー、あの二人はホントに兄弟なんですか?」
陳は信じられないと言った顔をした。
「だぬだぬ。母親こそ違えと正真正銘の兄弟ぬ」
「だったらこの闘い止めさせるネ!」
「陳くん、黙って見ようじゃないかぬ!これは兄弟喧嘩だぬブヒョヒョヒョヒョ!」
塗呂の高笑いが響く。
「では今からスタートするぬ!10分後には電流が流れるからそれまでに終わる事を祈るぬ!」
【カーーーンッ!】
塗呂がゴングを鳴らした。
八幡と守山は睨み合ったまま動かない。
緊張が走る。
二人共早く決着をつけないと金網に電流が流れ感電してしまう。
「朋友!早く終わらせるんだ!」
陳が守山に向かって叫んだ。
守山もそれは承知だ。しかし動かない。いや動けないのだ。
それは八幡も同じで下手に動いたら、あっという間にやられてしまう程の威圧感が二人にあるからだ。
ただ対峙し、睨み合うだけで両者から汗が滲み出た。
そして先に動いたのは守山だ。
先手必勝とばかりに右の拳を振り抜く。
しかし八幡はスイングの大きい守山のパンチをかいくぐり懐に入る。
そのまま抱え上げ投げ捨てる。
背中を強かに打ち付けた守山が苦悶の表情を浮かべる。
八幡が覆い被さるように守山の腕を取り関節を極めにかかる。
柔道で言うところの腕がらみ、アームロックという関節技だ。
八幡が締め上げる。
しかし守山は八幡の脇腹に膝を叩き込み、脱出した。
「ぐぅっ!」
今度は八幡が苦悶の表情を浮かべた。
守山は八幡にエルボーを落とす。
「ぐへぇっ!」
守山の全体重を浴びせられ八幡は悶絶した。
「やっぱり朋友の勝ちだな」
陳はそう思った。ケンカで守山に勝てる者はいない、強いのは守山だと。
しかし、八幡は立ち上がり守山の頭を掴み頭突きを連打した。
ゴツゴツと頭がぶつかる音が何度も響く。
守山の額から血が流れた。
そして守山は倒れた。
八幡は守山の両足を掴みブンブン振り回す。
遠心力で守山の身体が宙に浮く。ジャイアントスイングで守山を金網に叩きつけた。
八幡も三半規管をやられ、グルグルと目が回る。
守山は起き上がり八幡めがけて蹴りを顔面に叩き込み、背後に回りジャーマンスープレックスでマットに叩きつけた。
勝った!これを食らって起き上がってきたヤツはいない。
守山は勝利を確信し、オクタゴンから出ようとした。
しかし背後に凄まじい殺気を感じた。
「っ!!」
振り返ると顔面を血に染めた八幡が仁王立ちしていた。
球界の紳士と言われた面影はなく、野獣と化した男が守山に襲いかかった。
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