ノーサイドとなるか

榊はトーマスJr.が羨ましかった。


1年日本でプレイした後でメジャーと契約できるからとおもっているはずだ。


自分はここまま日本球界で現役を終えるのだろうか?


そんな時にトーマスJr.が来日してきた。


現役バリバリのメジャーリーガーがエンペラーズにやってくる。


日本球界に骨を埋めるつもりで来たわけではなく、たった1年でアメリカに帰ってしまう。


何しに日本に来やがった?


たかだか1年で日本の何が解ると言うのだ。


しかもアメリカに帰ればまたメジャーに復帰できる。


しかし実際は必ずメジャーに復帰できるという保証はない。


榊もその事は十分に解っていたはずだ。


しかしトーマスJr.を前にすると

、どういうワケか憎まれ口の1つや2つ言いたくなってしまう。


納得してエンペラーズに入団したが、メジャー挑戦の未練はまだ残っていた。


そんなモヤモヤを抱えながら榊はマウンドに上がっていたのだ。


エンペラーズというチームに関しては何のわだかまりもない。


ただトーマスJr.という存在が羨ましく、そして嫉妬の対象でもあった。




この日トーマスJr.はスタメンを外れた。


榊から受けたダメージが残り、大事をとって欠場した。


試合はボンバーズ矢幡の3打席連続ホームランを食らい、3対10という大敗を喫した。


敗けはしたが、榊とトーマスJr.の中には少しづつだが、わだかまりが溶けていくような、そんな思いも芽生えてきた。


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