12.x話「かぷせる」
Win-CL
Aパート
ツチノコ・フルスロットル!!【前編】
「ここはどんな施設なんでしょう……?」
「‟としょかん”とはまた違った建物なのです」
建物の中は埃っぽくて、他のフレンズが住む場所にしていた様子もありません。沢山の見たことない箱が並んでいるのを眺めていると、右腕に巻いていた
『コレハマダ、動キソウダネ』
どうやら、バスや他の乗り物のように動かすことができるようです。
「動き始めたわ。歌うのかしら……」
「その発想がどこから来たのか疑問なんですけど……」
『コレハ、‟カプセルトイ”ダヨ。ジャパリコイント、フレンズノ人形ヲ、交換シテクレルヨ』
「ジャパリコインって確か、ツチノコさんが集めてた……ジャパリまんと交換してくれるって言っていたコインのことかな」
「ということは、その‟にんぎょう?”っていうのもおいしいの?」
「それも料理なのですか」
「我々も興味があるのですよ」
サーバルちゃんも博士も興味津々で箱に近づいていたけど、きっと食べ物じゃないんじゃないかな……。
「ラッキーさん、人形って何ですか?」
『生キ物ノ形ニ似セタ、作リ物ノコトダヨ。‟フィギュア”トモ呼バレテイルネ。コインヲ入レテ回スト、‟カプセル”ガ出テクルカラ、ヤッテゴラン』
「えーっと……。そうは言われても――」
「うわぁ、凄いですね。なんですか、これ」
ジャパリコインなんて持ってないんだけど、と言おうとしたところで飛びだして来たのはスナネコさん。さっきラッキーさんに教えて貰ったことをそのまま説明すると、何処からともなくコインを一枚取り出したのでした。
「ここにコインを入れればいいの? ボクが一番乗りでいい?」
「いいですよー」
「どうぞどうぞ!」
――チャリンッ。ガチャンッ。
珍しいものに目がないスナネコさんが、ジャパリコインを入れてクルリと‟はんどる”を回すと――下の方にある‟とりだしぐち”から、黒い玉のようなものが一つ。これがラッキーさんの言っていた“かぷせる”なのかな?
「……ふぅん……」
「スナネコ……もしかして、もう飽き始めてる?」
見る見るうちに、スナネコさんの目から興味の色が失われていました。まだ“にんぎょう”も見てないのに早すぎです。
「うーん……開かないようですね。これ、サーバルにあげます」
「待って待って! かばんちゃんならきっと開けられるから! 大丈夫、かばんちゃんはバスの運転だってできるんだよ!」
急にそんなことを言われたって、ボクに開けられるかな……あっ。
「分かった、この“かぷせる”も回してみればいいんですよ」
よく見たら“カプセル”の真ん中に線が入っていて、そこから動きそうな感じ。そのまま引っ張っても全然動かないなら、下半分をしっかりと持って上を捻ってみれば――ほら!
「かばんさん、何が入っていたのだ?」
「あれ? これって、アルパカさんじゃないですか?」
かぷせるの中に入っていたのは、『こうげんちほー』でカフェを開いているアルパカさんにそっくりな“にんぎょう”。“ふぃぎゅあ”って言うんだっけ。
それをスナネコさんに手渡すと、また興味に目が輝き始めて。『わぁ……』と呟きながら、しげしげと眺めています。
「アルパカにそっくりね……」
「うぇ、あたしぃー? あンまりよく見たことないから分からないけどぉ、へぇーあたしってこんな感じなんだねぇ。なんだか恥ずかしいねぇ」
「この造形……まさに職人技、ただものじゃない……」
「この子ったら、今度は何目線なのよ……」
「はー! 細かい所までキッチリっすねー。さすがヒトの技術っす!」
「ここまで小さくなると難しいであります! 作ってみて実感したでありますよ」
「え? プレーリーもこれ作れるの?」
「もちろんであります! ……でも、ちゃんと作ろうとすると、元の大きさと変わらないものになるであります……」
「……?」
プレーリーさんが残念そうに指さした先を見ると、木で作られていたビーバーさんが建物の入口に立っていました。
「十分凄いよっ!」
ボクやサーバルちゃん、他のみんなもプレーリーさんを褒めたのだけれど、『いやいや、まだまだであります!』と謙遜するばかり。本当に器用だなぁ、……いつ作ったんだろう。
「…………」
「あれ!? スナネコ、また飽きてる!?」
いつの間にか小さなアルパカさんを握ったまま、ふらふらと何処かに行こうとするスナネコさん。
「カフェに行けば本物見れるし……騒ぐほどでもないかなって……」
「ふへへ……いつでも来てくれていいんだよぉ。紅茶を用意して待ってるからねぇ」
それからは、コインを持っているフレンズさんたちが次々と“かぷせるとい”を回していきました。
「……ツチノコさん?」
その様子をそわそわしながら見ていたから声をかけたけど……ツチノコさんも回したいんじゃないのかな……?
「ツチノコってコインを集めていたよね? 回してみたら?」
「あ゛ぁ? オレがこんなの持ってても仕方ないだろ! ……ま、記念に一回ぐらいなら――」
――チャリンッ。ガチャンッ。
……ピピピピピピピピピピ!!
「おぉ!? 音が鳴ったぞ!?」
「やっぱり歌うのかしら……」
歌わないんじゃないかな……。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
コロンと音を立てて出てきた赤い“かぷせる”を開けて、声にならない叫びを上げるツチノコさん。みんなが注目する中で、高く掲げられた“ふぃぎゅあ”は――
「この大きな耳って……もしかしてサーバルちゃん?」
「え、私!? 私はこんな色してないよ!」
姿形はサーバルちゃん。でも、全身を金色に塗られていて。
「こ、こ、こ……これってレアなんじゃないか!?」
『トッテモ珍シイ、金ピカノフレンズモ、出テクルコトガアルヨ』
ツチノコさんは『これはこれで悪い気はしないなっ』と呟きながら、いそいそと金ぴかの“サーバルちゃんふぃぎゅあ”をお腹のポケットに仕舞っていました。
「金ぴかのサーバルちゃんは置いておいて……」
「置いておかないでよ!?」
「どの“ふぃぎゅあ”も、ボクたちが出会ったフレンズさんばかりですね」
「この辺りのちほーに住んでいるフレンズが出てくるようなのです」
「ここに描かれてあるのです」
そう言って博士が指さした先に貼られていたものに描かれていたのは、様々なフレンズの姿。……でも。
「後ろの方に描いてある黒いフレンズは何かな?」
「えーっと……。”しーくれっと?”ってなんでしょう……?」
『“シークレット”ハ、出テクルマデノオタノシミ、ダネ。パークデモナカナカ見ラレナイ、幻ノフレンズ、カモシレナイヨ』
「幻のフレンズぅ……?」
ラッキーさんのその言葉に、ツチノコさんの目がギラリと光ったような気がしたのでした。
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