べっぴん毛玉セミロング
木船田ヒロマル
プロローグ
「やっぱり、別れよ」
突然だった。
楽しいデートの最後の最後。
「あなたの押しの強さに負けてズルズル今日まで来ちゃった。ごめんね。でも--」
港の見える夜の公園は、時間帯もあって殆ど誰もいない。冷たい風が控え目に吹き抜ける。
「--人と妖怪が幸せになれるわけ……ない」
そう言った彼女は、見る間にむくむくと毛むくじゃらの大きな塊に変わった。
そうなってなお、悲しそうに身をゆすりながら。
僕は、深呼吸を一つすると、黙ってその大きな塊を抱き締めた。
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