第6話『目覚めたら』
「…………」
気がつくとルークは何の気配もない薄暗い廊下に置いてある休憩用のソファーに寝かされていた。
頭には大量の氷が入ってるであろうビニール袋が乗っている。持ち上げてみると、どっぷりとした水の重みがする。
「気がついた?」
隣に座っていたナギが何の変哲も無い顔でルークに聞く。
「お前は看病なんてする柄じゃないと見通していたんだが……。例え気絶させた相手であっても」
予想が外れた事について不愉快な気持ちになりながら、ルークはナギに皮肉をぶつける。
「うっ、うるさいわね。あたしが見られたくないって知ってる癖に、あそこで突っ立ってたあんたが悪いんでしょ!」
真っ赤になって理不尽に逆ギレするナギに、ルークは蹴られた患部を指差し、冷ややかな目線を送った。
「悪かったわよ。いつもベタベタしてくるあんたが急に素っ気なくなったから調子に乗ってるんだと思って、つい良いのを決めてしまったの」
「お前……全く反省していないな」
「終わった事を悔いても仕方ないでしょ。ていうか、いつも通り竜宮寺さぁ~んって呼びなさい。そのキャラ本当に似合ってないから」
話していた問題を自己完結させて、突然話題を切り替えるナギ。
「まだ痛みは残ってるぞ」
「うぐっ…………」
痛い所を突かれたとナギは狼狽して、気まずそうな表情を浮かべる。
「……まぁいい」
額に手を当てて嘆息するルークが、視線を外して気まずそうな表情を保っているナギに向かって言う。
「俺は一体どんな人物だったんだ?」
「はぁ?」
拍子抜けしたようにナギは口を開いてポカンとする。
それから怪訝そうな顔でルークを見ると鼻で笑い。
「どういうつもりだか知らないけど、それでチャラってなら教えてあげてもいいわよ」
「いやダメだ。他にも聞くことはある」
「チッ……」
ナギは舌打ちしてめんどくさそうな顔をした。ルークの身体に何の恨みがあるのかは分からないが、酷い扱いとは裏腹に嫌っては居ないようにも見えるのが不思議だ。
「まずは俺の事についてだ」
「言っとくけどプライベートな質問は無しだからね。したら蹴るわよ」
「ああ心得た。とりあえず俺の名前は何と言うんだ」
至って真面目な顔でルークは言う。
「あんた大丈夫?」
やっぱり打ち所が悪かったんじゃないか……とルークの顎を気にするナギ。
「いや、お前が忘れているんじゃ無いかと思ってな」
「……忘れるわけ無いでしょ、――――」
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