第4話『魔女の遣い』
頭をトンカチでたたかれているのかような鈍痛と共にルークは目覚めた。
頭上には見知らぬ白色の天井が広がっており、どこかから零れてくる微かな光がそれを照らしていた。
「まだ寝たりないのかね?……」
低い男の声が寝起きのルークへ向けられる。
横になっていたソファーからルークは瞬時に身を起こし、声のした方へと身体を捻る。
「うん。まあ、よろしい」
そこには、ドワーフのような男が黒塗りのレザーチェアにふんぞり返って、咎めるような目でルークを見ている姿があった。
――誰だ此奴は。いや、それよりも此処はどこだ……?
ルークが周りを見渡しても、ブラウン色のシックな家具が置いてあるばかりで、居場所を知ることのできるような物はどこにも置かれていない。カーテンの引かれた窓から淡い光が零れているのを見る限り、まだ日中らしい。
もし、竜のような女に襲撃され、此処まで連れ去られてきたのだとすれば……。
「何が目的だ?」
ルークがドワーフのような男に問う。
すると、男は肉で埋もれた細い目を更に細めて、訝しげにルークを見ると、面倒くさそうに答えた。
「はぁ……? 仕事だよ。仕事。選手達、勝手にミニゲーム始めてるんだけど」
「仕事。そしてゲームというキーワード。……貴様、魔女の遣いか」
ドワーフのような男がズルッと椅子から滑り落ちる。
それから宙を見上げて溜息をすると。「ああ、終わりだ……」と呟いて、頭を抱えた。
「その様子を見る限り、何か弱みを握られているのだろう。詳細を教えれば、従うかどうかは別として、他言はしない」
ルークは俺もあいつには酷い目に遭わされてきたのだ。とばかりに先輩風を吹かし、組んだ足を目の前のテーブルに預けた。
「……はぁ、もうそういう事で良いからさ、一応現場には顔出してくれないと不味いんだよね。早く行ってくれやしないか」
そう言うと男は机の上に山積みになった書類へと目を移し、ルークとの話を区切ろうとした。
「構わん。して、その現場というのは何処にある?」
それを聞いたドワーフは口をぽかんと開けると、小さい声で唸り、やがて観念したかのように「現場」の位置をルークに教えた。
「この仕事とやらを続ければ魔女と対面することができるのだろう? 奴に聞くことはあまたある。次いでに今朝の事は許さんと伝えておけ!」
そう言ってソファーから飛び退くと、ルークはこれから起こるであろう未知の脅威を想像し、楽しげな表情で扉へと歩を進めていった。
「ああ、貴様の名を聞いてゆこう」
「……くっ、楠木だよ。チームの会長を忘れないでね」
楠木は引きつった笑顔でルークに名を教える。
額には脂汗が溜まっており、ルークに早く出て行ってほしい様子である。
ルークは何度かその名を復唱すると、魔女は俺が何とかしてやる。
などと楠木にとっては意味不明な事を口走りながら、部屋の扉を開け、部屋の外へと歩を進めた。
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