無愛の情念

無愛の情念

　嗚呼、阿呆らしい。

　あなたは馬鹿じゃないんでしょう？ならそんな顔やめて。辛気臭いのが移りそうだわ。もっと堂々としなさい。

　私はあなたの中のあなたに惹かれたの。あなたの核に惹かれたの。あなたじゃないの。

　私は馬鹿じゃない。だからそんな目で私を見ないで。私まで惨めになった気分になる。

　いやだわ。その瞳、その呼吸、その鼓動、すべてが私を揺さぶる。

　ねえ、私を置いていくの？私がいないと何もできないくせに。

　私は馬鹿じゃない。私は馬鹿じゃないの。だからそんな濁った目で私を見ないで。

　苦しむあなたはとても魅力的よ。私に助けを乞わないで。あなた独りの苦しみよ。私は関係ないわ。私が惹かれたのはあなたの世界よ。あなたじゃない。あなたじゃないの。

　嗚呼、夜がふけるわ。名残惜しそうに私の熱を求めないで。私は誰のものでもないの。そんな風に愛されたくないの。そんな目で私を見ないで。

　私を離さないで。触らないで。私のことを考えて。名前を呼んで。私を愛さないで。嫌わないで。私についてこないで。見失わないで。

　いつか時が来たら全部終わる。あなたと私はもう何の関係もない。

　また会えた時には、私を。

　また、私を。