終焉という名の平和と魔王という名の独裁者

鼯鼠モモン

第1話終焉の魔王

この世界には【終焉の魔王】という魔王達が存在している。魔王達はお互いを忌み嫌い対立しあっていた。劫炎ごうかの魔王、蓮水れんすいの魔王、森羅しんらの魔王、光歌こうかの魔王、殺悪さつあくの魔王、この5人の魔王達がこの世界を統一していた。だが魔王達さえ知り得なかった最後の魔王がいたその魔王の名は......




コツコツコツ、と自分の足音が響いて聞こえる。薄暗い照明、赤黒いマット、黒色の壁、こんな不気味な場所を俺は今歩いている。

少し進むと大きな扉があった、俺は扉の前に立って扉に手を当て俺は力を入れて押した。 ギギギギ 俺が押すと扉が開き、扉の先には角の生えた少女が大きな椅子に座って足を組んでいた、まじまじ少女を見ていると少女が口を開いた



「貴様、ノックもせずに入って来るとは無礼なやつじゃ、しかし貴様よくここまでこれたのう、妾の家来達はどうした?」



その少女は少し笑いながら冗談げに言葉を発した。だが俺はその言葉を冗談などとは思わなかった。その言葉は重々しくそして何より俺と少女の格の違いを感じさせられるようだった。それを言葉にするならば『蹂躙じゅうりん』と言うべきなのだろうか。だが俺はそれに負けじと少女に挑発的な言い方で言い返した。



「あー、すまないあれ家来だったなんて、虫かと思ったわ」



頭を掻きながら俺はそんなことを言った。



「はっはっは!まぁ今回は大目に見よう。で?貴様、何の用じゃ?ただの人間が何の用もなしに魔王城に、しかも1人で来るわけなかろう」



そう聞かれた瞬間その言葉を待ちわびたかのように俺は姿勢をただし大声でこう言った



「実は俺!魔王になりたいんです!なのでその席を譲って頂きたくおもいます!」



そう言うと案の定、魔王は口をポカンと開いたまま固まっていた、そりゃそうだあんな挑発的な言葉使いだったのにいきなり敬語になったらな。

だが少女すぐに眉を寄せ憤怒ふんどの顔になって俺を睨んできた



「馬鹿な人間じゃのぉ、妾より弱い者が、ましてや人間にこの席を譲るわけないじゃろ、」


「でも魔王、俺はアンタの城にいた魔物をすべて倒した、」


「だからなんだと言うのじゃ」


「アンタの家来をすべて倒した男だぜ?アンタもすぐに倒してその席から引きずり下ろしてやる!!」



俺のその言葉に魔王はわかりやすいよう怒りの顔になり魔王は椅子から勢いよく立ち上がりマントを翻して大声で叫んだ



「舐めるな!人間!たかが雑魚を殺っただけで調子に乗るでないぞ!人間、あまり妾を怒らせるでないぞ?」



その声を聞いた瞬間自分の心臓を貫くかのような殺意を魔王から感じた。だが俺はここで逃げられない理由がある



「悪いな、魔王、俺には引けない理由があるんでな!」



俺は啖呵を切るように魔王に向かって叫んだ、

俺の言葉を聞いて魔王が等々怒りの顔があらわになった。すると魔王の周りに赤い炎のような物が纏い始めた



「黙れウジ虫。貴様のような人間にどんな理由があろうと妾には関係ない、そろそろ鬱陶しい、妾の前から消えよ」



そう言って魔王は右手を上げ俺目掛けて振り下ろした。その瞬間赤い何かが飛んできて俺の右半身にとてつもない痛みを感じた



「ぐ、ぐうぁぁぁぁぁ!」



一瞬の事だったがとてつもない痛みが俺の右半身を襲った。苦しみを感じながらも俺はまじまじと痛みのする所をみると俺にさっきまであった右腕がなかった。そして右腕からは赤くそして綺麗な色の液体が大量に吹き出してきた。



「くそぉ!いでぇ、いでぇ!」


「ふん、その程度か、口ほどにも無い、あれだけ妾に啖呵を切ったのだ、もう少し楽しめるかと思ったのだがな残念だ。」



そう魔王が言って俺に止めを刺そうとするその魔王の姿を見て俺は思った

あぁ俺死ぬのか、と

今の俺にとってその言葉の重さは、計り知れないほどの恐怖を感じさせた。死の恐怖ではなくまた別の恐怖を、そして俺は再度思った、俺死ぬのか



『ふふ、死ぬ?そんなの許さないよ』



その言葉を聞いた瞬間俺の意識が一瞬にして消えてった―――。





「な!なんじゃ!?」



止めを刺そうとした瞬間人間から黒々としたものが吹き出した。その瞬間人間からは強大な魔力を感じた。今までに感じた事のない、いや何度かあるな、だが奴らとは少々違うようじゃがな。だが、魔力量は妾よりあるな。



「クッソ!なんなんじゃいったい!」



少し距離をとって様子を見ていると人間が立ち上がった



「あぁっ、あぁう」



その声をいや呻きを聞いた瞬間魔王はとてつもない憎悪を感じた、

しかし魔王はほんの一瞬警戒を解いてしまった、なぜなら立ち上がった人間は魔王を見るわけでもなく周りをキョロキョロしているからだ、まるで何かを探しているようだった。だが今の魔王には憎悪という負の感情の方が大きかった。



「な、なんじゃとこの妾が人間如きに臆しているというのか」



そして妾はその人間の姿を見た、人間の姿は黒く尻尾が生えそして何よりも魔王の象徴である角が生えていたその角は黒ぐろとし禍々しいオーラを放っていた。その姿はまるで魔王の様だった。



「何なのじゃ奴は!人間かと思ったらなんじゃこの魔力の量は!これは魔王に匹敵するぐらいの魔力じゃぞ!」



たかが人間がここまで魔力を持てるというのか、並大抵の魔物の魔力なら、ずば抜けて超えておる



魔王が思考を巡らせていると、魔王の体がいきなり強大な魔力の塊に衝突し、壁に飛んでった



「がは―――!」



衝撃を受けたところを見ると横腹丸々持っていかれていた。どうやら人間が魔王に気づき攻撃を仕掛けてきた。

ふ、久々に致命傷と言うものを受けた気がする、たが妾も魔王だここで引き下がる訳にはいかん!



「久々じゃな、本気を出すのは!」


「うぅぐぅ」


「覚悟せいよ人間、この妾が本物の魔王というものを貴様に見せてやるわい!」



すると魔王の角が紅く光だした、その瞬間魔王の手に紅い槍が顕現した。それを持つと魔王は人間の方にむかって大振りで投げた、一瞬の事だった魔王の投げた槍が人間の上半身に大きな穴を開けた。



「ぐ、ぐぅ、」



人間は苦しさのあまり地面にうずくまった



「はは、まだ生きておるというのか、」



ありえない、少しとはいえこのわしの本気の一撃に人間の肉体が耐えただと、

魔王がそう思いながら人間を見ていると、力を使い果たしたのか人間は元の姿に戻り倒れていたそしてその倒れている姿を見た魔王がいきなり笑い出した



「ふふ、ふははははは!面白い!面白いぞ!人間!」



魔王が見た人間の姿には右腕があり上半身に穴など存在しなかったのだ



「気が変わったぞ!人間、妾は貴様を気に入っただから貴様の望みどうり貴様をいずれこの妾が魔王にしてやろう!」



そう魔王が言うと魔王は人間の傍に行って人間の手を握った



『我、劫炎の魔王ヴィルチャーレ・クィントは汝を我々【終焉の魔王】の1人として魔王にすることを我ここに契約する』



そう魔王が唱えると魔王の左手の紋章が光を放ち出した。そして人間の右手には紅い炎の紋章が刻まれた、だがその人間の紋章は紅くも黒くもあった。

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