底辺官僚 -汚職監察官近藤もも-

芝野奈々

第一話:期待と違う現実。

「主席卒業生。法学部政治社会学科、近藤ももさん」

大学の卒業式の恒例イベント主席卒業生発表。司会のアナウンスと共に、大きな拍手耳についた。

「はい!」

今年の主席卒業生の名は、近藤もも。彼女は優秀、有能で、学生間では”有能女子”と言われていた程だ。一生の中で最高とも言えるこの勲章には、彼女も胸を踊らせていた。

「続きまして、主席卒業生からお言葉を頂戴致します。」

司会が言う。主席卒業生には短いスピーチが課せられる。彼女は3日前から、内容を仕込んでいた。

「私は、国家公務員になり、これからこの日本を良くするため頑張って行きますっ!」

彼女の堂々とした公言に、会場は若干引いている者もいた。中には、日本を良くしたいなら政治家になれよ。と心の中で突っ込んでいた物もいるだろう。

スピーチを終えると、また拍手が湧いた。

「これからがんばってね!!」

モモの親友であるチカが言った。彼女もまた、有能女子であり、一流企業への就職が決まっている。

「うわあああん」

モモは号泣が止まらなく、返事を返せないほどだった。


無事に式は終了し、親友であるチカともお別れをした。

モモは泣き腫らして真っ赤になった鼻をすすりながら、家路についた。


「あっ!」

モモは家についてポストを覗いた瞬間、声を上げた。

「きたーーーーー!!」

モモの元に届いたのは、内閣府人事院からの書類。すなわち、”辞令”だ。以前まで入庁式に手渡しされていたが、いきなり地方支部への派遣もあったため、最近は入庁一週間前に郵送される。

「部署はどこだろう?、文部科学省がいいなぁ!あっ、でも外務省でも!!ここから私のエリート人生が始まるのだぁ!!」

モモは浮かれて戯言を繰り返していた。

早速、モモはハサミを片手に、封筒を丁寧に開封した。

そして、辞令書に・・・

「えっ?」

モモは一瞬声を失った。

「何この部署。えっ?」

辞令書書かれていた部署は”内閣府人事院監査室”だった。

「内閣府?希望は文科省にしたはずなのに!第三希望にも内閣府なんて書いてない!そもそも、監査室ってなに?」

モモは鞄からスマートフォンを取り出し、検索した。

「監査室。検索!!」

モモは理解できず。ホームボタンを押し、画面を消した。

「なにこれ。監視?調査?えっ?なんで?窓際族?えっ?」

モモは困惑し、若干取り乱していた。


彼女はまだ、この先待っている悪夢など、予想もしなかった。


続く。

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