11.帰る!!

次の日。

ひとりで行くっていう私に、千草はひかる歯科までついてきた。


病院の中に私を押し込んで、

「がんばって」

と背中を叩くと会社に戻っていった。


「都築さーん」


すぐに順番になって診察室に呼ばれた。


やっぱり椅子に座ると、器具を準備するがちゃがちゃという音やコップに水がじゃーっと入る音がドナドナを盛り上げる。


「じゃあ、今日は右上の親知らず、抜きますね」


椅子が倒されて和久井先生の顔が上に見えた。


……マスクはずしてもイケメンだったけど。

マスクして、目元だけしか見えない方がもっとイケメンに見える。


あ、なんかどきどきするんだけど。

いやいや、これは歯を抜くのが怖いからで。


「相当痛い麻酔なしで激痛に襲われながら抜くのと、結構痛い麻酔して痛くなく抜くの、どっちがいいですか?」


レンズの奥の瞳が、愉悦を含んで歪む。


……やっぱりこいつは、変態ドS眼鏡だ。

抵抗して、別の病院行くべきだった。


「どっちも嫌です。

というか帰ります」


「んー?

椅子に縛り付けた方がいい?」


「帰る!」

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