第42話 まさか、マサトさんの趣味・・・とか?

 魔力を込めすぎていたので、威力を抑えて再度灯火ランプファイアを出してみると、普通のサイズの火の玉が手のひらに浮かんだ。

そしてリナと同じように酸素を送り込むイメージを思い浮かべる。


 リナの灯火ランプファイアはガスバーナーのように空気を送り込んでいたみたいに見えた。自分もその方がイメージしやすいと思い、横から上へ押し上げるように空気を取込むようにイメージする。


───ゴォォオ!


 ちらりとソーニャの方を見て、注意深く灯火ランプファイアを見ている事を確認したところで、空気を送るイメージを止めてまた普通の火の玉に戻す。

そして今度は火の玉が飛び出すイメージを思い浮かべ、無属性魔法で運動エネルギーを火の玉に与える。


「あっ!」


 すると火の玉は手のひらから飛び出し少し離れたところで地面に当たり、少し焦げ目を残して消えていった。ソーニャが声を出したのは恐らく普通ではあり得ない灯火ランプファイアの動きにビックリしたからだろう。


灯火ランプファイアが火の弾丸ファイアバレットのように飛んでいきました・・・」


 ソーニャが呆然と呟くようにそう言うと、僕と灯火ランプファイアが飛んでいった地面を交互に見る。


「あれはね、一応複合魔法だよ。火属性と無属性の」

「え?!どういうことですか?」


 僕は単なる灯火ランプファイアに移動するよう運動エネルギーという無属性魔法を混ぜ合わせ飛ばせたことを説明した。そして火の弾丸ファイアバレット自体もある意味火属性と無属性の複合魔法だと伝える。


「そもそも火が勝手に飛ぶわけ無いしね」

「・・・言われてみたらそうですね」

「なるほど」


 ソーニャも何とか理解が追いついたようだ。リナもふむふむと首を振っている。同じようにしてみてと2人に伝え、実際にやってみるように促した。


 リナは直ぐに灯火ランプファイアを吹っ飛ばしていたが、ソーニャの灯火ランプファイアは手のひらでユラユラと揺らめくだけで今のところ飛んでいく様子はなかった。


「運動エネルギーとか言われても訳が分からないかも知れないから、その灯火ランプファイアは飛んでいく前の火の弾丸ファイアバレットだと思って、飛べとイメージして魔力を込めてみて」

「は、はい!」


 僕がそうアドバイスするとソーニャはコクリと頷いた後、前を見据えて手のひらを差し出す。


「・・・んっ!」


 するとソーニャが差し出した手のひらから灯火ランプファイアが飛び出し、少し飛んでから地面にぶつかった。


「あっ・・・出来た。出来ましたよ!?」

「うん、見てたよ。おめでとう」

「おめでとうございます」


 よっぽど嬉しかったのかソーニャが、呟いた後こちらをみて嬉しそうに喜んでいた。


「あとは慣れるだけだけど、これで無詠唱とは行かないかもだけど詠唱破棄と複合魔法の足がかりにはなったね」

「え?あ、ああああ!本当だ!」


 そう灯火ランプファイアと唱えているから無詠唱ではないけれど、その後火の弾丸ファイアバレットとして攻撃出来て、かつその火の弾丸ファイアバレットは火と無属性の複合魔法だ。


 無属性は魔法使いなら誰でも持っているスキルのはずなので、扱いやすいかもしれないけど、これを別の風などの属性と混ぜるとなると苦労するかもしれない。だけど、一度でも出来たという自信があれば、いずれソーニャも複合魔法を使いこなせるんじゃないかと思っている。


「さ、折角掴んだ感覚が消える前にもう少し練習をしよう」

「あ、はい!分かりました!」


 再度ソーニャは灯火ランプファイアを唱え、さっきと同じように飛ばそうと頑張る。最初は数分に1回飛ぶかどうかだったけれど、徐々に感覚を掴んだのか灯火ランプファイア飛んでいく時間が短くなってきている。


 僕とリナはこれ以上この練習をする必要はないので、ソーニャの練習を離れて眺めていた。しかし、流石に灯火ランプファイアと言っても、慣れないやり方で火の弾丸ファイアバレットを実行しているせいか、ソーニャも肩で息をするようになってきた。


「ソーニャ、そろそろ一旦休憩しよう」

「あ、ふぁーい。分かりましたー」


 ソーニャ自身もそろそろ魔力と集中力が切れてきていることに気づいていたのか、素直にこちらへ歩いてくる。


「疲れましたー。けど、だいぶコツを掴んできました」

「そうみたいだね。徐々に発動まで早くなってきていたよ」


 ソーニャが地面に直に座り、ローブで額に付いていた汗を拭う。その姿を見ていたリナがアイテムボックスから竹コップを取り出し、水属性魔法で水を生み出しソーニャに渡した。


「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして。ご主人様もいかがですか?」

「じゃあ、折角だし貰うよ」


 僕もソーニャの対面に座り、隣に座ったリナから竹コップを受け取って水を入れて貰う。喉を潤しながら、休憩の後どうするかなと考えていると。


「休憩のあとどうされますか?」

「あぁ。まさに今どうしようかなと考えてた」


 リナと同じ事を考えていたからか、お互いに顔を向け笑い合った。その姿を見てソーニャが首を傾げていた。


「マサトさんとリナさんって主従関係というより、恋人同士に見えますね」


 見つめ合って笑ってたら、主従には見えないか。僕は頷きそれを認める言葉を言った。


「あぁ、そうだn」

「いいえ、夫婦です」


 ぶふっ!リナの発言に何も口に入れてないないのに息が詰まった。まぁ、確かにいずれ責任は取ると言ったから間違いじゃないのかもしれないけど。


「ご、ご夫婦だったんですか?!」

「ああ、申し訳ございません。未来のと付け加えるのを忘れていました。婚約者ですね」


 ソーニャはビックリした顔で確認してきたが、リナが訂正した。だけど、あんまり変わってない気がするなぁ。


「婚約者なのに、メイドなんですか?・・・まさか、マサトさんの趣味・・・とか?」


 おっと。普通は主従から恋人に、そして婚約者になったとか思わないの?何故かリナの格好は僕の趣味だと思われているんだけど。実際はメイドさんになる前から惚れて惚れられての関係だけどね。リナがバニーさんやってる頃から。・・・これ言うと更に僕の趣味を疑われるな。黙っておこう。


「いいえ、私の趣味です」

「「ぶふっ!」」


 訂正が訂正になっていない!というか、結局メイドは趣味だったのか!?僕とソーニャが噴き出した後、呆然とリナを見つめていると、一緒になって座っていたリナが立ち上がった。


「さて、冗談は置いておいて一旦村に戻って昼食でも取りませんか?」

「え、冗談だったんですか?それはどこから・・・」


 僕としても何が冗談だったのか聞きたいところだったが、これ以上爆弾を落とされても困るので、ソーニャを促し3人で村に戻ることにした。

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