第32話 またイチャイチャしてるし
3人で宿屋に戻ってロビーでアルディンさんと別れた後、僕とリナは夕食まで自分たちの客室へと戻った。
「これで冒険者ギルドに加入して駆け出し冒険者になれたし、あとはアスピラシオに着いたらアルディンさんに便宜を図ってもらって早く上位の冒険者になるだけかな」
「そうですね。私は冒険者ギルドに関しては余り知らないので、ご主人様にお任せします」
そう言うとリナはベッドに腰掛けながら膝をポンポンと叩きながら僕を見つめてきた。また膝枕をしてくれるらしい。好意に甘えてリナのベッドに移り膝枕をしてもらう。
「リナの膝枕はドキドキするね」
「まだ2回目だからですか?」
「いや後頭部からは膝の感触が気持ちよくて、目の前には大きな胸が視界いっぱいに広がってるから」
「なるほど」
何がなるほどかは分からないけど、リナは上半身を丸めて僕の顔に胸を押し当ててきた。なるほど。確かになるほどしか言えない。
リナの胸と膝の感触を堪能していたらドアがノックされた。僕の口は今リナの胸で塞がれているため、ふもふも言っているとリナが返事を代わりにしてくれた。
「お邪魔しま~す。って、またイチャイチャしてるし」
「うわ、ほんとだ。膝枕かと思ったら胸でサンドイッチしてる、わたしには無理だ」
どうやら入って来たのはイリーナさんとレメイさんみたいだ。というか視界が見えないしそろそろ息も苦しいのでリナの腰辺りをポンポン叩いて離してもらう。
「ふぅ、これは幸せだけど息苦しくなるのが問題だね」
「分かりました。次はその点を考慮してやってみます」
「よろしく。2人ともいらっしゃい。それで、何だった?」
「夕飯のお誘いに来たんですけど・・・何かどうでも良くなりました」
イリーナさんにジト目で見られることが多くなった気がする。まぁまぁと宥めながらイリーナさんたちと一緒に宿屋の食堂へと移動した。
今日は以前あった親睦会は無いようで、冒険者や行商人たちの大半は居酒屋で飲んでいるらしい。僕たちはどうするか相談した結果、あんまり酔っ払いに絡まれたくないから食堂で済ませようということになった。
4人で食事をしてそろそろ食べ終わるという頃に、アルディンさんが僕らの元へやってきた。
「食事中済まないな。マサト、少し良いか?」
「あ、はい。僕はもう食べ終わってますし良いですけど、何かありましたか?」
「あぁ。今日冒険者ギルドから2つのパーティが森へ資材調達のクエストに行ってたんだが、片方のパーティが血相を変えてさっき冒険者ギルドに駆け込んで来てよ。何でも森でモンスターを見つけたらしい」
このリリーフ村周辺の森には滅多にモンスターが現れないとはいえ、あくまで確率が低いというだけであって居ないわけじゃない。しかも、それほど強いモンスターが現れることがないため駆け出し冒険者のクエストに割り振られたりしているはずだった。
「血相を変えてですか?この辺は大した魔獣とかは出ないと聞きましたけど」
「あぁ、何でもキノコの化け物を見つけたらしい。人型って話だったから恐らくファンガスだな」
ファンガスといえばキノコが人型になったようなモンスターで、物理攻撃以外に毒を含んだ胞子を飛ばしてくる。強力なファンガスの亜種ともなれば胞子を人や動物に植え付け寄生することが出来るため危険なモンスターでもあった。
だがファンガスはそれほど移動速度は速くないため逃げようと思えば農民でも走って逃げられる。また風属性魔法や水属性魔法を使えれば胞子を無効化出来る。それにファンガスは火属性にも弱いなど厄介なモンスターだが色々と弱点があるので魔法使いを含んだパーティさえ組んでおけば遠距離攻撃だけで倒せる相手だった。
「ということは、魔法使いがパーティに居なかったんですか?」
「逃げ込んできたパーティはそうだな。だがまだ帰ってきてないパーティには魔法使いが居たはずだ」
「まだ帰ってきてないんですか?」
既に日は暮れている。これが森の中なら間違いなく真っ暗になっていて、熟練の狩人でも迷う可能性が出てくる。駆け出し冒険者だったらまず迷っているとみて間違いなさそうだ。
「そうだ。そこで冒険者ギルドから捜索と討伐の任務をマサトたちに指名依頼をしたい。他の冒険者は既に酔っ払いばっかりでな。エディスから相談されてマサトとリナを推しておいた。受けてくれるか?」
「えぇ、構いませんよ。直ぐに出ます。おおよそで良いのでそのパーティがいる方向とパーティの構成を教えて下さい」
アルディンさんによると、その2つのパーティはリリーフ村から東の方にある森へ採取へ向かったそうだ。それぞれ採取するものが違ったため森に入ってから別れたらしいが恐らくその森に居るだろうとのことだった。
また捜索するパーティの構成は、剣士のアルフォンス、弓使いのジェービズ、魔法使いのソーニャの3人だそうだ。剣士と弓使いが男性で魔法使いが女性らしい。
ファンガスの討伐は見つけたら倒すくらいで捜索を優先して欲しい言われた。森から出てきたら残っている冒険者で対処するけど、本格的な討伐は日が昇って冒険者たちの酒が抜けてからということになった。
「分かりました。それじゃあ装備を調えてから捜索に出ます」
「おぅ、悪いけど頼むわ。もしも入れ違いになったら村の外に篝火をつけるからたまに確認してくれ」
「ありがとうございます」
入れ違いになって僕らがずっと捜索のために森を彷徨うことになるのは勘弁だから助かる。まぁ、それは多分ないかなと思う。そのパーティ全員が生きていたらだけど。
アルディンさんに食料の用意をお願いしてみたら食料や水を用意すると言ってくれた。僕らは一度客室に戻り武器を装備してから、食堂に顔を出すとアルディンさんから食料などを受け取り、天引きでジュニアスさんから買ったナップザックに入れてイリーナさんたちに行ってきますと挨拶してから森へ出発した。
リリーフ村から出て東へ向かい、周りの目が届かない場所まで移動すると僕たちは全力疾走して森の入り口付近まで一気に走り抜けた。
「じゃあ、リナ。悪いけど索敵魔法を使って捜索対象とファンガスの位置を探ってくれる?」
「お任せ下さい」
リナが索敵魔法を使って直ぐに何かを察知したのか森の方へ指を向けこう言った。
「捜索対象と思われる人の気配が2つとそれを追いかける魔物か何かがこちらに向かってきています」
「もう一人は?」
「別方向へ走っているようですね。そちらも何かに追われているようです」
「ありがとう。それじゃまず二人を救出してから、もう一人を探そう」
リナに光属性魔法で明かり点してもらい僕とリナは森へと踏み込んだ。
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