第22話 漁獲魔法
川辺に辿り付いて休憩がてらリナにサバイバルで使える属性魔法や固有スキルを説明した。リナが持っている固有スキルは僕とほぼ同じだが、リナの強みは属性魔法が全て使えることだろう。単体の属性魔法では出来なくても、複数の属性魔法を用いた複合魔法なら可能なことだってある。
例えば、風と土の属性魔法を使った探知魔法などだ。探知魔法は元々固有スキルとして知られていたけれど、風と土の属性魔法を使えた過去の魔法使いが空気の揺れや大地の振動などを感知することで探知魔法と同等のスキルを完成させた。そのことから他に存在していた固有スキルも属性魔法の組み合わせを研究されて、今では殆ど再現されていた。
しかし属性魔法は適正があった者にしか使えず、訓練や修行などで使えるようになっても、最初からその属性に適正の合った人には到底その属性では敵わない。全属性が使える人は希のはずだ。僕自身も1600年で全属性が使えたことは一度も無かった。魔王でさえだ。
しかしリナは神の尖兵とハナに言わせただけはあって、僕が過去に複数の職業で扱った属性魔法の組み合わせによる固有スキルの再現をいとも簡単にやってのけた。
さらに今では自分で考え出して光と水と土の3つの属性魔法を用いて、水中探知魔法に光の矢を複合した水中追尾攻撃を生み出して、何故か川に入って魚を捕まえていた。
「これは使えますね。今後魚が食べたくなったら言って下さい。この漁獲魔法で仕留めて見せます」
「その魔法、魚専用にするの?!勿体なさ過ぎる!」
「ふふ、冗談です」
リナは川から上がってきて、教えた複合魔法で服を乾燥させた。もう完全に使いこなしている。そして僕は完全に空気だ。これはいけない、いけないが現状ではリナに頼るしか無いのが世知辛い。リナが漁獲してる間に出来たことといえば、乾燥した枝を集めたり、石を並べて作ったかまどくらいだった。
僕が魔法でかまどに並べた枝に火属性魔法で火をつけ、リナが捕まえた魚をアイテムボックスから出し、僕が枝に刺してかまどに並べる。完全に僕がサポート役してるなぁ。地上に降りる前の想像では、こんなはずじゃなかったんだけど。
「あ、そろそろ焼けてきたね。リナ、魚ありがと。頂きます」
「恐縮です。それでは私も、頂きます」
二人で黙々と食べながら、食べ終えた後どうするかを考える。まだ日中だとはいえ、このままでは森の中で夜を過ごすことになる。そうなると、野営の必要が出てくるがそんな装備もない。
だけどリナの力を借りれば結界を張って過ごすことも出来るだろう。出来ればリナの力ばかり頼るのは避けたいが、街道が見つからない限りは頼るしかなさそうだ。
それでも少しでも力になるために、僕が持っているスキルを使ってレベルを上げたい。そして考えてみたら、スキルのレベルは低いけどステータス自体は、普通の人なら辿り付けない状態だったことに思い至った。使い方次第では連射は出来ない闇の矢でも威力が上がっていて、熊など大型生物になら使い道があるのかもしれない。
剣はないから、とりあえず闇属性と威圧の効果を試そう。お互い食べ終わったところで、僕はリナに威力の確認をしたいと言ってみた。闇の矢はその辺の木なんかに試し打ちしたら良いけど、威圧は相手が居ないと確認が出来ないのでリナに効果があるか確認して欲しいと頼んだ。
「それもそうですね。構いませんよ、いつでもどうぞ」
「ありがとう。じゃあ威圧使うね」
僕は魔王をしていたときを思い出しながら、少しでもあの時の威圧感が出せるようイメージしながら威圧スキルを発動した。だけどリナは何も感じていないのか、まだ?って感じに首を傾げていた。
「申し訳御座いません。多少は威圧感を感じましたが、身震いがしたり身動きが取れなくなるという事はありませんでした」
「あぁ、いいよいいよ謝らなくて。僕の威圧のレベルが低いのが悪いんだし」
やはりスキルレベルが1では効果は出ないのか。まぁ、魔王でレベルが1だったらもしかしたらゴブリンくらいの威圧感しか出せていないのかも知れない。少しショックだった。
「そういえば、リナでも身震いしたり威圧されることとか今まであったの?」
「勿論あります。ハナ様もそうですが、神と対面したときはそうなりますね」
「え?僕、ハナに威圧されたことないけど」
「それはそうです。ハナ様も被害者に威圧する加害者には成り下がりたくないでしょう」
それもそうか。でも一度は神様の威圧感っていうのも体験してみたかったかもしれない。僕はマゾじゃ無いけど。
「じゃあ気を取り直して、次は闇の矢を撃ってみるよ。あの辺り撃ってみるから悪いけど探知して人とか居ないか念のため確認してみてくれる?」
「畏まりました。・・・問題ありません。鳥などは居ますが獣も魔物も居ないようです」
僕が指さした大きい樹木の辺りをリナが探知魔法を使って確認してくれた。あとは僕が魔法を使うだけだ。さっきの威圧の結果は一端忘れて、本気で撃ってみよう。ステータスが高くても所詮Lv1だ。万が一威力が高かったら使いやすくするために調整も必要だろう。
「よし、撃つよ。マジックアロー!」
ズドン!という音と共に自分が想像してたよりも大きい魔法の矢が樹木へ向かって飛んでいき着弾した途端、命中した樹木の幹の大半をえぐって更にその後ろに生えていた他の樹木も薙ぎ倒していった。
「・・・うわぁ」
「素晴らしい威力ですね」
僕がドン引きしているのに、リナは軽く手を叩きながら喜んでくれた。さっきの魔法の矢は僕が魔王だったときより威力があったかもしれない。今度はスキルのレベルばかり気にしすぎてステータスが上がっていることを考慮していなかったようだ。
僕はその後は威力を絞ったりしながら、30分位掛けて相手に合わせて攻撃出来るようになった。これで移動中でも攻撃に参加出来るようになったかな。
「ごめん、特訓に付き合わせて。じゃあそろそろ移動しようか。このままじゃ森の中で夜を過ごさないと行けなくなるし」
「そうですね、恐らくハナ様もそこまで森の真ん中に転送されるとは思いませんので多少歩けば街道に出られるのではないでしょうか」
「あぁ、言われて見ればそうだね。じゃあ移動しようか」
僕たちはかまどの火などの後始末をしてからその場から移動し始めた。1時間ほど川沿いを歩いて、獣や魔物と出会うことも無く街道に架かる橋を発見した。
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