第5話 バトルも駄女神だよ

「えーそんなわけでお前達の実力テストをする」


 朝九時。全員で朝食を取って、食休み入れて校庭に集合。

 駄女神はブルマ。俺はジャージ。


「身体測定はもうやりましたよ?」


「データは見た。だから今回はお前達の戦闘能力を計る。俺に攻撃してこい。全力でだ。女神界は頑丈だからな。銀河を滅ぼす程度の力では壊れない。思いっきりやれ」


「まずあんたが死ぬんじゃないの? 二日目で先生交代とか洒落になってないわよ」


「問題ない。俺は女神女王神より強い」


「そういえば倒したと聞きました」


「ふうん、なら試してあげようじゃない。くらってくたばれ! ハイパー女神ビイイィィィィムッ!!」


 サファイアの右手から飛び出すビームは確かに大した威力だ。

 色も白で善の神っぽい。悪くないな。ここはくらってあげるのが人情だろう。

 俺に直撃して爆煙が体を包む。


「シャイニング女神ビーム。それは女神の全てを絞り出した究極の一撃。抵抗することも許されず、ただ相手は死ぬ!」


「なるほど。愚直だが悪くないぜ。単純な威力のある攻撃ってのは好きだ」


 煙を振り払って指導に入る。当然俺は無傷だが、普通の隕石くらいは消せるな。


「うげっ!? マジで!?」


「もっと一点集中するか拡散させるかしてみるんだ。あとは連射してもいい。そして技名は固定しろ」


 ここでちゃんとバリエーションを増やしてやらないと、ただ俺が弱者で遊ぶだけになる。それは教師のやることじゃない。


「爆裂女神弾!! だゃだだだだだだだだだだだだ!!」


 両手に魔力を圧縮し、球体にして何百発もぶつけてくる。

 衝突と爆発のダメージで火力を上げるのか。こいつ妙にセンスがあるな。

 ちょっと面白いぞ。創意工夫があって楽しい。


「いいぞ、なんだ戦闘に関しちゃ上等じゃないか」


「なんで無傷なのよ!?」


「そりゃまあ戦闘経験の差だよ。鍛えたし」


「そんな理由で女神を上回ってんじゃないわよ!」


「かなりの耐久力ですね」


「先生は頑丈ですもの」


 カレンとローズは離れて見学。下手に動かれると怪我するのでちょうどよい。


「よし、このバリアを破ってみせろ。それでサファイアの実力テストは終了だ」


 半透明でドーム状の結界を張る。サファイアがギリギリ壊せるように、ちゃんと調節してある。


「ふっ、もうパワーなんて使い切ったわ!」


「ペース配分とか考えろよ」


「あれで無傷とかありえないのよ!」


 しょうがないから回復してやる。持っててよかった回復魔法。


「元気一万倍! 超スーパー女神キイイィィィック!」


 上空からの飛び蹴りは、あっけなく結界に弾かれる。


「むうぅぅぅ! 全然壊れないじゃないのよ!」


「さっき言ったろ。一点集中しろ。どこかに穴が空いたら合格だ。的確にぶち込め」


「すうぅぅ……はあぁぁ……人間相手に使うと殺しちゃうから封印していた奥義、魅せてあげるわ!」


 サファイアの魔力量が跳ね上がる。こいつ潜在能力でいえばトップクラスだな。

 全身を魔力の螺旋が駆け巡り、全てが右手へと集う。

 二本の指から放たれる、おそらくあいつの一番火力の高い技。


「究極女神螺旋!!」


 細いビームが螺旋を纏い、俺の結界を突き破った。

 ほんの小さな穴だが、確かに穴が空いている。


「よーしお疲れ。よくやった。休んでいいぞ」


「はあ……つっかれた……水持ってない?」


「ふりかけなら出せますよ?」


「口パッサパサになるでしょうが!」


 漫才やっている二人は無視。めんどい。次の相手はローズ。


「とうとうこのローブを脱ぐ時が来たようですね」


「別に脱がなくてもいいぞ」


「ご安心を。先生が嫌がるものですから、大事な部分には謎の光を当てています」


「アニメか!」


 うわあ横から光が当たって見えないぞう。どんな状況よこれ。


「一部放送地域では下の光が消えます」


「上を取れや! 放送できねえだろ!」


「いっそ両方取りますか。円盤売上激増ですよ」


「ただのエロアニメじゃねえか!?」


「二・期・確・定」


「まず一期の売上が不安だわ」


「ではいきます」


 ローズの姿が消えた。まあ後ろにいるのは気配でわかっている。

 回し蹴りが来ていることもだ。つまり、振り向くと全裸なんだろう。


「振り向きたくねえなあもう……」


 振り向かずに右腕でガード。威力は普通。

 頑張れば海くらい割れるだろうけど、その程度が限界だな。


「身体強化もできるんだったな。まあ普通だ」


「私が興奮する限り、その力は限界を超えて上がり続ける……はず……きっと」


「ただ脱ぎたいだけか。魔法メインだろ。そっち使ってくれ」


 魔法技術が秀でているはず。そう資料にも書いてあった。


「確かに魔法も撃てます。しかしながら重大な見落としが存在します」


「なんだよ?」


「撃つには服を着る必要があります」


「着ればいいだろ」


「着る服がありません」


「ブルマどうした!?」


 振り向くとこいつやっぱり全裸じゃねえか。最低限ローブはつけろよ。


「お気づきになりませんでしたか。私が最初からローブを羽織っていたことに」


「…………最初から着てねえのかよ!?」


「ブルマはいやらしくて好きですが、私の全てを見せるには、これしかないかと」


「全てが魔法じゃなくて裸体にかかっていることは見抜いたぜ」


「しょうがないにゃあ」


「そっちの見抜きじゃねえよ!」


 面倒なので空間を繋げ、魔法でブルマを取り出して着せた。

 そこで魔力の質が完全に変わっていることに気付く。

 別人レベルで変えてきやがった。なのにパワーは落ちていない。


「ではいきますよ……私にわざわざブルマを履けと強要した罪を思い知りなさい」


「人聞き悪いわ!?」


 俺がセクハラ教師みたいになるからやめて欲しいわ。

 ブルマを素肌に着ているため、微妙な違和感が鬱陶しい。


「スーパーブルマボール・ノヴァ」


 空を埋め尽くす巨大な火球があった。一瞬で作り上げるか。

 しかもコントロールで熱を逃がさない。魔法の才能はローズが上なんだな。

 潜在能力が高くて、燃費悪いが戦闘センスがあるのがサファイア。

 コントロールと魔力の質に自信があって、魔術的センスがあるのがローズか。


「これは無理やりブルマを履かされた裸体の苦しみです」


「普通は着るものなんだよ」


 迫る攻撃を空中で受けるために空を飛び、両手でがっしりつかむ。


「お、結構やるな。いい腕だ」


 まるで太陽のような圧倒的魔力である。

 それを外部に漏らさず攻撃手段としてぶつけるのか。

 絶妙なコントロールで成り立っているな。


「やはり受け止められますか」


「まあな。でもこれはお見事。実力はわかった。ローズ終わり」


 火球を抱きしめて、両腕で潰す。ベアハッグとかいうやつだ。

 あれで跡形もなく消し飛ばした。


「お疲れ。魔法が上手だな。そっちを伸ばそう」


「了解。休憩に入ります」


「ふりかけはいりますか?」


「拒否します」


 なんであいつ運動後にふりかけ食わせようとすんだよ。


「いいから準備しろカレン」


「はーい。それではお願いします!」


 一礼してマッハ六十くらいで動くカレン。

 拳圧を飛ばしてくるので全部叩き落とす。


「せえええぇぇぇい!!」


 かかと落としを左手でキャッチ。

 校庭にでっかいクレーターができる。


「威力は落ちちゃいないな」


「世界を救ってそのまま来ましたもの」


「そういやそうか」


 こいつの派遣された世界でも、こうして稽古をつけてやったな。


「ふりかけスプラッシュ!!」


 ふりかけが俺めがけて乱れ飛ぶ。

 名前もやっていることもアホだが、ふりかけは音速を遥かに超えて飛んでくる。

 ショットガンのようなものだ。


「まあそういう使い方になるわな」


 つま先で地面を蹴って、土煙と風圧で吹き飛ばす。

 本日最速で迫るカレンの拳を、まったく同じ威力で打ち返し、相殺する。


「調べるまでもなかったな」


「ただ加護が使えなくなっただけですから」


 レベルはそのままなんだから、身体能力だけは強いまま。

 異能さえ取り戻してやればいい。

 そんなわけで組手終わり。


「ありがとうございました。お水いります?」


「すまない。貰おうか」


「なんでそいつだけ水なのよ!」


「あるなら最初から水でいいのではないですか?」


「久しぶりにふりかけ出す訓練がしたくて……」


「他人に向けて使うなよ」


「気をつけますわ」


 戦闘面の課題は理解できた。まあもう少し強くなってくれたら大丈夫だろう。

 つまり性格面だなあ。こればかりはどうしたもんだか。

 悩みながら、明日の座学について考えるのだった。

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