バトルも駄女神だよ
「えーそんなわけでお前達の実力テストをする」
朝九時。全員で朝食を取って、食休み入れて校庭に集合。
駄女神はブルマ。俺はジャージ。
「身体測定はもうやりましたよ?」
「データは見た。だから今回はお前達の戦闘能力を計る。俺に攻撃してこい。全力でだ。女神界は頑丈だからな。銀河を滅ぼす程度の力では壊れない。思いっきりやれ」
「まずあんたが死ぬんじゃないの? 二日目で先生交代とか洒落になってないわよ」
「問題ない。俺は女神女王より強い」
「そういえば倒したと聞きました」
「ふうん、なら試してあげようじゃない。くらってくたばれ! ハイパー女神ビイイィィィィムッ!!」
サファイアの右手から飛び出すビームは確かに大した威力だ。
色も白で善の神っぽい。悪くないな。ここはくらってあげるのが人情だろう。
俺に直撃して爆煙が体を包む。
「シャイニング女神ビーム。それは女神の全てを絞り出した究極の一撃。抵抗することも許されず、ただ相手は死ぬ!」
「なるほど。愚直だが悪くないぜ。単純な威力のある攻撃ってのは好きだ」
煙を振り払って指導に入る。当然俺は無傷だが、普通の隕石くらいは消せるな。
「うげっ!? マジで!?」
「もっと一点集中するか拡散させるかしてみるんだ。あとは連射してもいい。そして技名は固定しろ」
ここでちゃんとバリエーションを増やしてやらないと、ただ俺が弱者で遊ぶだけになる。それは教師のやることじゃない。
「爆裂女神弾!! だゃだだだだだだだだだだだだ!!」
両手に魔力を圧縮し、球体にして何百発もぶつけてくる。
衝突と爆発のダメージで火力を上げるのか。こいつ妙にセンスがあるな。
ちょっと面白いぞ。創意工夫があって楽しい。
「いいぞ、なんだ戦闘に関しちゃ上等じゃないか」
「なんで無傷なのよ!?」
「そりゃまあ戦闘経験の差だよ。わかりやすく言えばレベル差だ」
「女神のレベルを上回ってんじゃないわよ!」
「かなりの耐久力ですね」
「先生は頑丈ですもの」
カレンとローズは離れて見学。下手に動かれると怪我するのでちょうどよい。
「よし、このバリアを破ってみせろ。それでサファイアの実力テストは終了だ」
半透明でドーム状の結界を張る。サファイアがギリギリ壊せるように、ちゃんと調節してある。
「ふっ、もうパワーなんて使い切ったわ!」
「ペース配分とか考えろよ」
「あれで無傷とかありえないのよ!」
しょうがないから回復してやる。持っててよかった回復魔法。
「元気一万倍! 超スーパー女神キイイィィィック!」
上空からの飛び蹴りは、あっけなく結界に弾かれる。
「むうぅぅぅ! 全然壊れないじゃないのよ!」
「さっき言ったろ。一点集中しろ。どこかに穴が空いたら合格だ。的確にぶち込め」
「すうぅぅ……はあぁぁ……人間相手に使うと殺しちゃうから封印していた奥義、魅せてあげるわ!」
サファイアの魔力量が跳ね上がる。こいつ潜在能力でいえばトップクラスだな。
全身を魔力の螺旋が駆け巡り、全てが右手へと集う。
二本の指から放たれる、おそらくあいつの一番火力の高い技。
「究極女神螺旋!!」
細いビームが螺旋を纏い、俺の結界を突き破った。
ほんの小さな穴だが、確かに穴が空いている。
「よーしお疲れ。よくやった。休んでいいぞ」
「はあ……つっかれた……水持ってない?」
「ふりかけなら出せますよ?」
「口パッサパサになるでしょうが!」
漫才やっている二人は無視。めんどい。次の相手はローズ。
「とうとうこのローブを脱ぐ時が来たようですね」
「別に脱がなくてもいいぞ」
「ご安心を。先生が嫌がるものですから、大事な部分には謎の光を当てています」
「アニメか!」
うわあ横から光が当たって見えないぞう。どんな状況よこれ。
「一部放送地域では下の光が消えます」
「上を取れや! 放送できねえだろ!」
「いっそ両方取りますか。円盤売上激増ですよ」
「ただのエロアニメじゃねえか!?」
「二・期・確・定」
「まず一期の売上が不安だわ」
「ではいきます」
ローズの姿が消えた。まあ後ろにいるのは気配でわかっている。
回し蹴りが来ていることもだ。つまり、振り向くと全裸なんだろう。
「振り向きたくねえなあもう……」
振り向かずに右腕でガード。威力は普通。
頑張れば海くらい割れるだろうけど、その程度が限界だな。
「身体強化もできるんだったな。まあ普通だ」
「私が興奮する限り、その力は限界を超えて上がり続ける……はず……きっと」
「ただ脱ぎたいだけか。魔法メインだろ。そっち使ってくれ」
魔法技術が秀でているはず。そう資料にも書いてあった。
「確かに魔法も撃てます。しかしながら重大な見落としが存在します」
「なんだよ?」
「撃つには服を着る必要があります」
「着ればいいだろ」
「着る服がありません」
「ブルマどうした!?」
振り向くとこいつやっぱり全裸じゃねえか。最低限ローブはつけろよ。
「お気づきになりませんでしたか。私が最初からローブを羽織っていたことに」
「…………最初から着てねえのかよ!?」
「ブルマはいやらしくて好きですが、私の全てを見せるには、これしかないかと」
「全てが魔法じゃなくて裸体にかかっていることは見抜いたぜ」
「しょうがないにゃあ」
「そっちの見抜きじゃねえよ!」
面倒なので空間を繋げ、魔法でブルマを取り出して着せた。
そこで魔力の質が完全に変わっていることに気付く。
別人レベルで変えてきやがった。なのにパワーは落ちていない。
「ではいきますよ……私にわざわざブルマを履けと強要した罪を思い知りなさい」
「人聞き悪いわ!?」
俺がセクハラ教師みたいになるからやめて欲しいわ。
ブルマを素肌に着ているため、微妙な違和感が鬱陶しい。
「スーパーブルマボール・ノヴァ」
空を埋め尽くす巨大な火球があった。一瞬で作り上げるか。
しかもコントロールで熱を逃がさない。魔法の才能はローズが上なんだな。
潜在能力が高くて、燃費悪いが戦闘センスがあるのがサファイア。
コントロールと魔力の質に自信があって、魔術的センスがあるのがローズか。
「これは無理やりブルマを履かされた裸体の苦しみです」
「普通は着るものなんだよ」
迫る攻撃を空中で受けるために空を飛び、両手でがっしりつかむ。
「お、結構やるな。いい腕だ」
まるで太陽のような圧倒的魔力である。
それを外部に漏らさず攻撃手段としてぶつけるのか。
絶妙なコントロールで成り立っているな。
「やはり受け止められますか」
「まあな。でもこれはお見事。実力はわかった。ローズ終わり」
火球を抱きしめて、両腕で潰す。ベアハッグとかいうやつだ。
あれで跡形もなく消し飛ばした。
「お疲れ。魔法が上手だな。そっちを伸ばそう」
「了解。休憩に入ります」
「ふりかけはいりますか?」
「拒否します」
なんであいつ運動後にふりかけ食わせようとすんだよ。
「いいから準備しろカレン」
「はーい。それではお願いします!」
一礼してマッハ六十くらいで動くカレン。
拳圧を飛ばしてくるので全部叩き落とす。
「せえええぇぇぇい!!」
かかと落としを左手でキャッチ。
校庭にでっかいクレーターができる。
「威力は落ちちゃいないな」
「世界を救ってそのまま来ましたもの」
「そういやそうか」
こいつの派遣された世界でも、こうして稽古をつけてやったな。
「ふりかけスプラッシュ!!」
ふりかけが俺めがけて乱れ飛ぶ。
名前もやっていることもアホだが、ふりかけは音速を遥かに超えて飛んでくる。
ショットガンのようなものだ。
「まあそういう使い方になるわな」
つま先で地面を蹴って、土煙と風圧で吹き飛ばす。
本日最速で迫るカレンの拳を、まったく同じ威力で打ち返し、相殺する。
「調べるまでもなかったな」
「ただ加護が使えなくなっただけですから」
レベルはそのままなんだから、身体能力だけは強いまま。
異能さえ取り戻してやればいい。
そんなわけで組手終わり。
「ありがとうございました。お水いります?」
「すまない。貰おうか」
「なんでそいつだけ水なのよ!」
「あるなら最初から水でいいのではないですか?」
「久しぶりにふりかけ出す訓練がしたくて……」
「他人に向けて使うなよ」
「気をつけますわ」
戦闘面の課題は理解できた。まあもう少し強くなってくれたら大丈夫だろう。
つまり性格面だなあ。こればかりはどうしたもんだか。
悩みながら、汗を流すために風呂に向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます