第2話 納得の駄女神だよ

「そんなわけで先生をやることになっちまった。まあよろしく」


 異常なまでに綺麗で整った教室で、三つの机にそれぞれ座った女神。

 どいつもダメっぽい。女神を山ほど見てきた俺には本能的に理解できた。

 一年だ。一年で解放される。最悪願いを叶える力で逃げよう。


「女神の力の底上げや、能力開発、心構えから教養まで一通り担当する。それ以外の専門的なことは、補佐であるカレンと協力してやるらしい」


 カレンは俺の補佐役として来てもらった。

 なぜ生徒側の机に座っているのか謎だけど。

 ぶっちゃけひとりじゃ不安だった。魔王や悪の帝国滅ぼす方が楽だわこれ。


「はい先生。質問があります」


 そこでとんがり帽子にローブという魔女っ子女神が手を挙げる。

 どんな質問をするのか興味があるので許可。


「あの有名なふりかけ駄女神カレンをどうやって更生させたのですか? 完全に匙を投げるレベルであったはず」


「ひどい!? そこまでじゃありませんわ!」


 完全にそこまでだったぞ。口には出さないでおいてやるけども。


「単純に女神として経験を積ませただけさ」


「はい。ひとりの女として、先生には色々経験させていただきました」


「言い方考えろや!?」


「なるほど。やりたい放題やったのですね?」


「やってねえよ! 真面目に冒険したわ!」


「ど変態ね! わたしにもいやらしいことする気なんでしょう!」


 はい完全に誤解されました。ああもうめんどいなチクショウ。

 初日にエロ教師の烙印はきついぞ。


「本当にやってないの? カレンちゃん結構かわいいじゃない」


「生徒に手を出す淫行教師では、不安です」


「本当に手を出していない。俺から誘ったこともないし、完全にお互い清い体だよ」


 これは本当だ。完全に旅の相棒としてしか見ていない。

 きっとカレンもそれは承知だろう。一度もそういう話にはならなかった。


「そうですか……では嘘かどうか魔術で調べてみても?」


「構わんよ。俺は潔白だ」


 いっそ徹底的に調べた方がいいだろう。異性と一緒って抵抗あって当然だしな。


「では……信じましょう」


「いや、やらせろよそこは!? 潔白のために魔法で色々するシーンだろ!」


「先生の目は嘘をついていませんでした」


「いやもう完全にやる流れだったろうが! そこはやらせろって!」


「そんな大声でやらせろとは……なんと卑猥な」


「そういう意味じゃねえよ!!」


 もうやだこの環境。

 ぐだぐだになったので全員着席。個別に見ていこう。


「えーまずサファイア」


「超スーパー凄い女神といえばわたし、サファイアよ! 会話できるだけでもありがたく思いなさい!」


 なんだ……この無駄に溢れている自信は。

 金髪碧眼。さらさらロングヘアー。胸が大きく、態度は更にでかい。

 なんかどっかで似たやつを見かけた気がする。


「女神女王様の力を継ぐもの……まあ娘のようなものです」


「ああ……だからか」


 あのアホ女神の娘なら、性格が似ていても納得。

 カレンにもらった三人分の資料を見てみると。


「えーと……力は大きいけれど加減ができず、制御もできない。人間に加護を与えると強すぎて暴走させ、与えられた人間は死ぬので派遣できません。なるほど」


 アホも魔力強かったからな。アホジュニアも強くて当然か。


「人間ごときが使える力じゃないってことね!」


「力を弱めたらどうですか?」


「そんな力で世界が救えるわけないじゃない」


「最初は弱く。強くなったら新しい加護をやるとかどうだ?」


「めんどいわねえ。弱っちい人間といつまでも戯れているより、強いやつが来るまで昼寝でもしていた方がマシよ。ザコを送っても死人が出るだけでしょ?」


 一理ある。その世界によってはどうしようもない敵もいるのだ。

 俺は慣れているからいいが、素人では厳しい場合もあるだろう。


「てなわけで、もう帰っていいでしょ? 積んでるゲームもあるし、まだ救っていない世界がわたしを待っているわ!」


「現実の世界を救ってやれよ」


「別世界という意味では一緒よ。漫画の世界は読んでいれば自動で救われるのよ! これほどお手軽な救済はないの!」


 こいつただ横着したいだけだな。女神というのは寿命がない。

 よってサブカル方面に詳しくなる。そうしなければ暇だからだ。

 そしてどっぷりはまったわけか。


「意識改革からですねえ」


「そうするか。次、ローズ」


「私のどこに再教育が必要か疑問ですが、まあよろしくお願いします」


 長く青い髪を後ろで二つに縛り、深い青の瞳が特徴のローズ。

 黒いマントだかローブのようなものを着ているが、それだけ。

 サファイアのような問題点は見つからない。


「魔力と知力が高いな」


「選択科目が魔法なもので」


 資料によると魔術や陰陽術、精霊魔法など全般を得意とするらしい。

 それ関係のステータスが異様に高い。


「えーっと……脱げば脱ぐほど強くなる脱衣闘法の使い手で、加護もそれ関係のため拒否られる」


「脱衣は女神の証。この体は見られるためにある。それが世界の真理です」


「んな真理があってたまるか!」


「真理とは探求の果てにある極地。世界をあるべき状態へと導くには、全裸が必要なんです」


「まずお前の心理状態をどうにかしろ」


「とりあえずローブを脱ぎますね」


 そしてローブの下は何も着ていない。サファイア発育のいい高校生くらいだったのに対して、ほどほどの中学生くらいだ。それでも女神と呼ばれるに相応しい綺麗な体ではある。っていうかさ。


「お前ふざけんなよ!? 突然脱ぐなや!」


「ダメですよローズさん! ちゃんと服を着てください!」


「力を発動するには全裸ですよ」


「発動せんでいいわ!」


「では発動しないので裸体だけさらけ出してもいいですね?」


「いいわけあるかあああぁぁぁ!!」


 もういや。俺は今日ほど自分の選択を後悔したことはない。

 もうめんどいわあ……初日からこれですよ。


「いいからまず服を着ろ」


「そして脱ぐのですね。男性の前で脱ぐのは初めてですが……ふむ、これが羞恥心ですか。少々抵抗がある。意外です」


「意外でもなんでもねえよ。いいからずっと着てろ。次の駄女神は…………カレン?」


「はい!」


「いやいやなんでだよ。お前はもう強くなっただろ」


「全て資料に書いておきましたわ」


 よくわからんが、確かにカレンの資料がある。渋々読んでみると。


「もとふりかけ駄女神、願いの女神カレン。世界を救うため、その力の殆どを加護として与え、残った力も世界の平和のために使ったため、またふりかけが出せるだけになる」


「そういうことですわ!」


「マジか。俺のせいかこれ?」


「いえ、もともとあの世界を救うための力ですし。身体能力や魔力も落ちたとはいえ、完全な初心者ではありませんから」


「加護を与えられるようになればいいってことか。楽そうでいいな」


「だから補佐なのですわ」


 よし。とりあえずカレンは心のオアシスにしていこう。


「あの世界はちょっと難易度が低かったからな」


「ふりかけでもなんとかなる。それは奇跡であり、先生のお力ですわ」


「そうか? 楽な異世界ベスト百に入るぞ」


 既に滅亡しかかっている世界とか、人間がクソな世界よりだいぶマシ。


「先生は本当に色々な世界を救っているのですね」


「その結果こんな仕事させられちまってるけどな」


「いいじゃない。駄女神とはいえ可愛い女の子よ? 役得じゃない?」


「ひたすら面倒だよ」


 いまさら女神連中にときめきとかねえよ。ぶっちゃけ旅のおともだ。

 おもしろオプションであり、一人旅が寂しい俺の話し相手だな。

 そういう意味では旅の癒やし成分であり、救われていると言ってもいい。


「まあ一年間よろしく頼む、文句は女神女王神に言え」


「よろしくお願いします!」


「まあいいわ。よろしくね!」


「歓迎しますよ。女神界は男性がいませんからね。よいサンプルになりそうです」


 こいつらを育てる……不安しかないな。


「では全員で住む寮へ行きましょう。初日は顔見せだけ。授業はありません」


 とりあえず温泉旅館を建てたんだ。風呂入ってさっぱりしよう。

 この憂鬱で疲弊した心を癒やしてやるのさ。

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