ギンギツネの出会い

ハルノさん

第1話

巨大セルリアンとのたたかいが終わってから数日がたち。

ギンギツネとキタキツネの二人は温泉に戻らずに、他のフレンズと一緒にかばんのためにふねを作っている。


「これはここでよし、っと」


「ギンギツネ…ぼくもう疲れた…」


一区切りついたところでキタキツネがそういってきた。

確かにこの子にしてはいっぱい頑張っているし休ましてあげた方がいいかもしれない。


「そうね、キタキツネも頑張ってたし休憩にしましょうか」


「やったー…じゃあおやすみ…」


「あ、こんなところですぐ寝ちゃダメよ!ってもう…」


こっちが注意する間もなく地面に寝転がって寝息を立て始める。

仕方ないのでもう少し寝やすそうな地面が草になってるところまでキタキツネを抱きかかえて運ぶ。

起こさないようにゆっくりと下して自分もその近くに座って休憩する。

するとちょうど私達のいる方にかばんとサーバルが歩いてきていた。


「あ、おはようございます。ギンギツネさん」


「おはよー!ギンギツネ!」


「ええ、おはよう。かばん、サーバル」


二人とも私の方に声をかけながら歩いてくる。

ふね作りはかばんには内緒でやってるからばれないようにしないといけない。


「ギンギツネさんは何をしてたんですか?」


「あ、あのね!かばんちゃん!ギンギツネには別のこと頼んでてね!」


私じゃなくてサーバルがかばんに答える。サーバルはふねのことを知ってるからかばんに隠そうとして答えてくれたんだろう。

でもそんなことすると逆に怪しまれそうな気がする。


「あれ?なんでサーバルちゃんが答えるの?」


「えっとそれは…」


やっぱり、サーバルはそのあたりまで考えるのが苦手だからしょうがないんだけど。


「サーバルがあなたに自慢したかったらしいわ、片付けの場所を分担したんだって言いたくて頼まれたの」


「そうだったんですか…偉いね、サーバルちゃん」


「え!?あ、うん!ありがとう、かばんちゃん」


サーバルはわけがわからないような顔をしてたけどこれでよかっただろう。

とりあえず早く別の話題に切り替えよう。


「二人はどうしてここに?」


「少し休憩してるところで…もしかしてギンギツネさんも休憩中ですか?」


「そうよ、キタキツネが疲れて眠ちゃってるからもうしばらくはこうしてるつもり」


まだ隣ではキタキツネが幸せそうに寝てるから起きるまではこのままだろう。

そんな私を見てかばんとサーバルがニコニコしている。


「やっぱり二人とも仲良しさんなんだね!」


「そういえばギンギツネさんとキタキツネさんっていつから一緒にいるんですか?」


二人とも近くに座って私に話を振ってくる。

ちょうど私も話でもしながら休憩しないかと言おうとしてたからちょうどよかった。


「私達がいつから一緒か?そうねえ…いつからだったかしら」


「ていうかギンギツネっていつから温泉にいたの?」


「温泉にいたのは…確かこの子と会う前じゃなかったかしら」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


私はゆきやまちほーで生まれて…ってここまで話す必要はないわね。

私も最初からキタキツネといたわけじゃないのよ当然だけど。

しばらくは山で生活してたんだけど、ある日山のふもとで温泉の建物を見つけたのよ。

そのときはまだ温泉って言葉も知らなかったんだけどね。


「へー、わたしてっきりキタキツネと先に会ったんだと思ってた。」


「ボクもそうだと思ってました」


「実は温泉を見つけた方が先なのよ。といってもキタキツネと会ったのはその後すぐだけどね」


それで温泉の建物を見つけたのはいいものの、お湯が入ってなかったのよ。

だからとしょかんまで行って博士たちに、その建物が何なのかとどうすればいいのか聞いたの。

そしたら、


『それはきっと温泉というのです』


『温泉とは、くぼみの中にお湯を入れてそこの中に入り体を温めるもののことなのです』


『なのでまずはお湯を入れるのです。ゆきやまちほーの山の上にお湯を届けるための装置があるはずなのでそれを動かすのです』


『さあ、わかったら早く行くのです』


『お湯が用意できたら私たちを呼ぶのです、ちゃんと温泉になってるか確認してやるのですよ』


って言われてね。


「なんていうか…」


「博士たちらしいね…」


「まったく、私もそう思うわ」


それでとしょかんから帰りながらその装置を見に行ったんだけど、その途中でキタキツネと会ったの。

多分住処だろう穴から顔を出して寝ててね、それがなんとなくほうっておけなくて声をかけたの。


『あなた、どうしたの?大丈夫?』


『…大丈夫、ただだらだらしてたいだけ』


『…ここにいるなら一緒に行かない?温泉っていうのがあるの』


『おんせん…?』


『ええ、温泉。温かくて気持ちいものらしいわ』


『じゃあ…ぼくも行く…』


キタキツネと初めて会ったときはこんな感じだったかしら。

今思えばあの時声をかけたからこんなに苦労してるんだけどね。


「でもギンギツネ嬉しそうな顔してるよ?」


「もちろん、大変だけどこの子と過ごしてて楽しいもの」


「いいですね…そういうの」


「羨ましそうに言ってるけど…あなたたちだって似たようなものでしょ?」


「うん!わたしかばんちゃんと会えてすっごくよかったもん!」


「ボクもサバールちゃんと最初に会えてほんとによかったと思ってるよ」


「ね?あなたたちも同じでしょ?じゃあ話を戻すわね」


そこからキタキツネを連れてその装置を見に行ったのよ。あなたたちと初めて会ったときに行ったところね。

初めて見た時は何が何だかわからなかったんだけど、この子と相談しながらなんとか直してね。

二人で無事に温泉に戻ったの。最初は一緒に温泉に入ったんだけど、上がった後にあの子がゲームを見つけちゃってね…

それによってどうなったのかは二人も知ってる通りよ。

それからは私たちで温泉を管理しながら過ごしてたってわけ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「とまあそんな感じね」


一通り話終わって息をつく。ちょっと長話になっちゃったけど自分自身も懐かしかったしよかったと思う。


「へえーそんなことがあったんだー」


「ギンギツネさんにもいろいろあったんですね」


「当然でしょ?どんなフレンズだってみんないろいろあるものよ。もし他のフレンズには伝わらなくても本人にとっては大切なことがね」


サーバルは少しきょとんとしてるけどかばんは頷いてくれている。

けどなんか思い出に浸りすぎて恥ずかしいこと言ってる気がした…どうしよう。


「ねえねえ、温泉の管理ってなにしてたの?」


「いろいろよ?さっきも言った装置の修理だったり…あの建物の掃除だったり」


温泉の建物は意外と広いから掃除もそれなりに大変だったりする。

キタキツネにももっと手伝ってほしいものだけど本人はゲーム三昧でなかなかやってくれない。


「今度ボクたちが遊びに行ったときは手伝いますね」


「ありがとう!すごく助かるわ!」


「えーわたしもゲームしたいー!」


「サーバルもこういってるんだからぼくももっとゲームする…」


隣の声をした方を向くとキタキツネがもう起きていた。

まだ寝起きでちょっと眠そうな眼をしている。


「あなたはいっつもたくさんやってるでしょ?」


「でもサーバルがきたときならいいでしょ…?」


キタキツネがこっちを見ながら頼んでくる。

怒りたいところだけど確かにそういうときぐらいは少しぐらいなら…


「まったく…その時だけだからね?それに温泉にもちゃんと入ってからよ?」


「やった!ギンギツネ好き…!」


「はあ…ほんとにこの子は…」


ため息をつきながら答える。ふとかばんたちのほうを見るとさっきこの子の話をした時と同じような笑顔を浮かべている。

つまり、私も多分笑っているのだろう。


「さて、じゃあ次はかばんたちのことを聞かせてもらおうかしら」


「え?ボクたちのこと?」


突然話を振られて驚いてるかばんにまだ声をかける。


「あのセルリアンのことがあってまた新しくわかったこともあるでしょ?ぜひ聞かせてもらえないかしら」


「ぼくも聞きたい…」


キタキツネも一緒になってかばんに話しかける。

この子がこんな風に積極的に他の子と話そうとしてくれるのはすごく嬉しい。


「いいね!一緒に話そう!かばんちゃん!」


「じゃあ…うん!まずなにから話せばいいかな…」


「わかったことを一つずつでも話してくれると嬉しいわね」


「はい、そうします。そういえば前に博士から…」


そうして楽しく話をしながら時間が過ぎていく。

みんなで過ごす、楽しくて面白いそんな時間が。

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