落ちこぼれ少年の黒魔術《マギアネラ》

皐月 遊

一章 落ちこぼれの努力

プロローグ 「落ちこぼれの少年」


迷宮ダンジョン。 それは、100年前に突如この世界に出現した、謎の建物。


迷宮ダンジョン。 それは、現代の建築技術では、絶対に造る事の出来ない、謎の建物。


迷宮ダンジョン。 それは、凶暴な怪物モンスターが大量に住み着いている、危険な建物。


迷宮ダンジョン。 それは、沢山の財宝が眠る建物。


迷宮ダンジョン。 それはーー若者達の、冒険の場所。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここは、冒険者が生まれる街、アルドーラ。


このアルドーラには、アルドーラ学園と言う、冒険者になりたい子供を育成し、優秀な冒険者を育てる学校だ。


「それでは、第30回アルドーラ学園卒業式をはじめる」


レンガで出来た校舎の前で、白髪に白ひげの老人が、大勢の生徒の前で言う。


この老人は、ここ、アルドーラ学園の校長だ。


「第30回アルドーラ学園卒業生は、103名。

君達にはこのアルドーラ学園で学んだ事を活かし、より優れた冒険者になる事を期待している」


この103名の中には、僕も入っている。


僕…グラン・ブライト 16歳は、今日、アルドーラ学園を卒業する。


アルドーラ学園の授業はとても大変だった。


12歳の頃から通い始め、四年間ひたすら剣術、魔術、怪物モンスターの生態の事を勉強した。


その後はアルドーラ学園の校長の長い長い話があり、卒業式は終わった。


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「よし、ようやく僕も冒険者だ」


冒険者は、基本は10歳以上なら誰でもなれるし、学校に通わなくてもいい。


だけど、名のある冒険者は殆ど学校で剣術などを学んでから冒険者になったらしい。


「よう。 落ちこぼれのグラン君?」


「……クライブ君…な、何か用?」


家に帰ろうと道を歩いていた僕の背中を叩いて来たこの男は、四年間僕のクラスメイトだった、派手な金髪を持つクライブ・ロッゾだ。


「よくもまぁ落ちこぼれのお前が卒業出来たよな。 なんだ? 金でも渡したのか?」


「…そんな事してないよ」


「あぁそうか。 卒業試験は筆記だったな。 お前は筆記”だけは”得意だったもんな」


嫌味な言い方だけど、クライブ君の言った事は事実だ。


僕はこの四年間、僕はずっと最下位だった。


だから僕はクラスメイト達からこう呼ばれてきた。


”落ちこぼれ”…と。


「剣術も魔術も人並み以下のお前が、明日から冒険者か! お前、明日死ぬぜ? ははははは!」


クライブ君はいつものように大声で笑う。


クライブ君は僕とは違ってアルドーラ学園の首席だ。

だから皆を見下すし、その中でも最下位の僕にはよくちょっかいを出してきた。


「…僕は死なないよ」


「…あ? 」


それまで笑っていたクライブ君が急に真顔になり、僕の胸ぐらを掴む。


「おいおい…お前マジで言ってんのか? 熟練の冒険者でも油断したら死ぬってのに、最下位のてめぇは死なないってか?」


「…今は弱いかもしれないけど…これから強くなる」


「…ほぉ…」


クライブ君は掴んでいた胸ぐらから手を離すと…


「最下位のお前が? 剣術も魔術も人並み以下のお前が? 強くなる? …ははっ…はははは!」


また、先程のように大笑いをする。


性格は最悪だけど、冒険者としては天才と言っていいほどらしいから、タチが悪い。


だから誰も、クライブ君に逆らえなかったんだ。 ……僕もだけど。


「…やっぱ面白いわお前…強くなるってんなら、俺を超えてみろよ」


「…え?」


な、なんか話が大きくなってないか…?


なんで僕がクライブ君を超える事になってるんだ…?


「人並み以下が人並みになってもつまんねぇだろ?

だったら、天才のこの俺を超えてみろよ。

そしたら、謝罪でも土下座でも何でもしてやるよ」


「……分かった。 目標は高い方が良いもんね」


どっちにしろ、強くならなきゃいけないんだ。

クライブ君を超えられるくらい、強くなってやろう。


僕がそう言うと、クライブ君は去って行った。


「…さて、早速準備をしよう」


明日、早速迷宮ダンジョンに行く。 子供の時から、ずっと冒険者になるのが夢をだった。


その夢が明日、やっと叶うんだ。


絶対に、強くなってやる。

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