図書館は今日も平和でした

じょうたいいじょう

第1話

 図書館。

 様々な知識が詰め込まれた、人類の大いなる遺物。

 時を置いて、なお伝えられる様々な情報は、限りない価値を持つ。


 これは、その中で発生した一つの事件である。


「博士、この部分は前に見たのでは」

「今見ると、新しい発見があるという場合もあるのですよ助手」

 図書館を生息地としているフレンズ、フクロウの二人は今日も知識の探求をしていた。


 それが読めているかどうかは存じ上げないが、今立っているコーナー。

 それは『お客様お忘れ物預り所』。

 つまり、ジャパリパークの来場客が各地から訪れて、置いていったものである。

 意図したかしないかは問わず。


 様々なものがある。

 手袋や鍵など、ただの物品も多く、由来を追うだけ無粋というものも多い。

 ここの住人、アフリカオオコノハズクとワシミミズクも、そう思って見捨てていた箇所だ。

 本もある。

 ただし、それは図書館にあるシリーズがそろった知識の欠片ではない。

 歯抜け、もしくはシリーズであったもののたった一冊で意味の分からないものも多いのだ。

 それを、今回、博士は紐解いた。

 すると、今になるとなかなかに興味深かったらしい。

「これによるとですね、助手」

「なんでしょう」

「ヒトは1秒間に数10発のパンチを放つことができるそうなのです」

「!!」

「不思議な生物なのです…」

「可能とは思えないのです…」

 訝しむ助手。

 博士は、そこに脅威を感じるのを確信したように書物を差し出す。

「見るのです」

 そこには絵による図解で、体に部分的に硬いものを付けたヒトが描かれている。

 ヒト同士の争いを描いた本だと今読むとわかる。

 音速を超えたそのヒトのパンチで、何十人が吹き飛び、倒されていた。

 なんということだろうか。

 野性を解き放ったどのフレンズより強いまであるのではなかろうか?

「さらに、こちらでは、ヒトは指で体の一部を押すだけで生き物を爆発させているのです」

「まさか!!!」

 ハカセの顔を見る助手。

 真面目だ。

 悪ふざけではないことを確認する。

「さらにさらに、最も興味深いのは、これです」

 新しい本を広げる。

「サイコぱうわー……?」

 ヒトの野性開放であろうか。

「野性開放については、こちらにその図があるのです」

「どれどれ」

 光に包まれ、しかもなにか姿が違う。

 鎧のようなものが増えている。

 しかも、その書籍によると、野性開放したヒトはなにか光を飛ばすらしい。

 その図では、なんと山を一つ吹き飛ばしていたのだ。

「誇張にしても、これに近い力は持っているとみるべきなのです…」

「その力で、パークの遺物を作ったというのなら、それは納得なのです…」

「ヒト…恐ろしい生き物なのです…」

「この続きはないのですか、博士。気になるのです」

「図書館にはないのです、助手。これは別のところから持ち込まれた断片的なものなのです」

「秘匿資料の可能性があるのかもしれませんね博士…」

「秘匿資料なのです助手…」

 様々な謎の絵をメインとしたヒトの生態。

「試すのです」

「フレンズに出来るかどうか、知る必要があるのです」


 それから、ハカセのパークでは内緒の実験が始まる。

 手を滑らせて、木や生き物を切断する。

 これは意外とできた。

 ハカセの得意技として、ちょっと実になる出来事であった。


 オーラを身に着ける。

 身体を光らせるのは至難の業だった。

 眼だけは光るが全身光っているのを見るとやりたくなる。

 助手と博士の協力体制によって後ろから電気をあてることで光ることを発見したが、これはやめることにした。


 様々、まさに様々。


 それは、ラストページの「これはフィクションです」の文字を理解するまで続いた。

 おそらく、数か月後…。


 そしてこれは、絶対口に出せない、博士と助手の黒歴史として、封印されることになる。

 でも、置かれていた本は今も二人でたまに読む。

 楽しいですよね、少年漫画。

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