りょうりフレンズ
阿武隈 嵩
第1話サーバルちゃん頑張る
「図書館はもうすぐだよ! かばんちゃん」
「ま……まってくださいよぅ~」
「ほらほら! いっくよー」
元気が有り余るサーバルちゃんに手を引かれ、迷いの森を駆け抜ける、かばんちゃん。
「でもどうしたんでしょう? 博士さんの急用って」
「うーん……わかんないや! ともかく博士が呼んでるなら行こ!」
「そうですね。あっ!」
森の出口直前で、かばんちゃんが前のめりで転倒してしまい手を擦りむいてしまった。
「いたたた」
「かばんちゃん、だいじょうぶ? 手から血がでてるよ、わたしが舐めてあげるね」
サーバルちゃんはペロペロと、かばんちゃんの出血した手のひらを舐める。
「サーバルちゃん大丈夫だよ。そんな……あはは、くすぐったいですよ~」
「血はとまったね。でも……」
「どうしたのです?」
「あんまり遅いから、助手と迎えに来たのです」
森の出口上空から、アフリカコノハズクと助手と呼ばれたワシミミズクが降りたつ。
それを見たサーバルが、不安そうに二人を見つめた。
「ごめんね。かばんちゃんを連れて図書館に行こうとしたら引っ張りすぎちゃった……」
いつも元気印のサーバルが、しょんぼりしている様子を見てワシミミズクがアフリカコノハズクに聞く。
「博士、取りあえず二人を図書館まで連れていくのです」
「良い考えなのです助手。さっそく移動するのです。何をしているのですサーバル、かばんを連れていくのです」
「うん。わかった。かばんちゃんちょっと、がまんしてね」
そう言いサーバルは、かばんをお姫様抱っこして図書館まで走って行く。
「うわわ! サーバルちゃん速いよー!」
「みゃみゃみゃみゃみゃみゃー!」
森を出てすぐの所にある図書館。
その中の椅子に、かばんを座らせてアフリカコノハズクが、かばんの手を触る。
「イタッ!」
「あまり強く触っていないのに、これではダメなのです」
「博士、今日は諦めるのです」
「しかたがないのです助手」
「そういえばボクに用事って、なんだったんですか?」
かばんが、目の前に座るアフリカコノハズクに聞く。
「かばんに、もう一度料理を作ってもらおうと思ったのです」
「そうなのです。博士は、かばんの料理をとても気に入っているのです」
「助手、あまり余計な事はいわなくていいのです」
その会話を、かばんの隣で聞いていたサーバルが、またシュンと大きな耳を垂らす。
「そうなんだ……」
「ボク、少しくらいなら! いたた……」
「無理をするな、なのです」
「ここまでオロオロする博士は初めて見たのです」
「助手、おくち閉めるのです。しゃべりすぎなのです」
「むぎゅ」
「わかった!」
「どうしたの? サーバルちゃん」
「かばんちゃんに、おしえてもらいながら、つくればいいんだよ!」
「それ、良い考えですよサーバルちゃん!」
二人のやり取りを見ていたアフリカコノハズクとワシミミズクが同時に首を傾げる。
「でも、サーバルだけでは無理だと思うのです。どう思います? 助手」
「むぎゅ」
「話していいのです助手」
「博士と同じ意見なのです」
「だいじょーぶ!」
サーバルは胸を張り、ドンッと叩く。
「ほかのフレンズにも、てつだってもらうから!」
◆ ◆ ◆
かばんの代わりに料理を作るために、洗うグマ、フェネック、コツメカワウソ、トキ、ライオンが集まった。
「アライさんにお任せなのだー!」
「おーがんばれー、アライさん」
「フェネックも手伝うのだ!」
「わーい! なにするの? なにするのー?」
「私は歌えばいいのね?」
「わたしの眠りを妨げないでくれ……」
「ツチノコがまだきてないけど、はじめよっか」
サーバルが、フレンズの前に立ち声をかける。
「サーバルいったい何するのだー?」
「アライさん、なにも知らないできたのねー。サーバル言ってたじゃない、料理するって」
「そうなのだ!? フェネックは物知りなのだ!」
「なにするの? なにするのー?」
「きょうは……なにつくるんだっけ?」
「サーバルちゃん、カレーですよカレー」
「カレー、そうだったカレーつくるよー!」
「「「「おー!」」」」
「ぐー……」
「(むむむむむ!)」
木の陰から覗いているツチノコに気づくこともなく、サーバルとフレンズによるカレー作りが始まる。
「みゃみゃみゃみゃみゃみゃー!」
アライさんが洗った野菜を、サーバルが細かく刻んでいく。
「こっちも、お任せなのだー」
そう言いアライさんは、お米をとぐ。
「アライさーん。がんばれー。じゃあ私はっと……」
フェネックが虫眼鏡で太陽光を集め始める。
「やめるのだフェネック! それは怖いものなのだ!」
ぼう!
「だから言ったのだ!」
「すごいねー」
「あは、あはは、あはははは」
「恐怖のあまり、カワウソが壊れたのだ!」
「なんだよー、わたしが気持ちよく寝ていたのによー。うわ! 何じゃこりゃ」
寝起きのライオンが、反射的に尻尾ではじいた火種は、カマドへと見事入る。
「すごいのだ! やっぱりライオンはすこいのだー!」
「トキイィィィィィ―――!」
カマドの近くで歌っていたトキの叫び声が、辺り一面に広がる。
「「「「うあっ!」」」」
シュンとコノハ博士が、身を細める。
「皆さん。もう少しですよー頑張ってくださーい!」
「「「「おー!」」」」
火が入ったカマドに切った野菜の入った鍋と、研いだお米の入った鍋を両方乗せ火にかける。
かばんがコノハ博士とミミ助手に調合してもらったスパイスを加え、カワウソがオッカナビックリ混ぜていく。
その様子を木の陰から、ずっと見ていたツチノコが飛び出してくる。
「ちげーよ! そうじゃないんだよ。見てろ、こうやるんだ!」
器用に鍋を混ぜていくツチノコに、歓声が沸く。
「「「「おおー!」」」」
「あれー? ツチノコいつきたの?」
「サーバルに呼ばれたから、最初から居たよ! あそこで!」
ツチノコが指差したのは、遠くの木。
「そこじゃ、わかんないよー」
グルグルと煮込んでいる間に、良い匂いが鍋から立ち込める。
「そろそろ、ご飯も大丈夫でしょうか」
「かばん、早くするのです。お腹ペコペコなのです」
「博士のお腹がグーグー鳴っているので、お願いするのです」
「助手」
「むぎゅ」
◆ ◆ ◆
「「「いっただきまーす!」」」
「はぐはぐっ、かばんが作ったのと同じくらい美味しいのです」
「辛いのだー、でも止まらないのだー」
「あはは! からーい! おーいしー!」
「何だか私の喉の調子も、良くなってきたみたい」
「うむ! 中々いけるな!」
「そりゃ、アタシが混ぜたんだもん当然でしょ」
美味しそうに、『皆で』作ったカレーを頬張るフレンズ達。
「かばんちゃん」
「なに? サーバルちゃん」
「はい! あーん」
「いいよーボク自分で食べられますから」
「だーめ。ケガしてるでしょ? だから、あーん!」
「あ……あーん。むぐ」
もぐもぐ咀嚼するかばんを、サーバルが不安そうに見つめる。
「ごくん。美味しいよ。サーバルちゃん!」
「ほんと? よかったー」
「やっぱり皆で作ったカレーは美味しいですね」
「そうだねー。また皆でつくろうね」
満面の笑みを浮かべるサーバルと、かばんは、また一つ絆を深めるのでした。
~FIN~
りょうりフレンズ 阿武隈 嵩 @abukuma-takashi
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