ギッタンバッコン大騒ぎ
楠樹 暖
岩屋から出られなくなったオオサンショウウオ
かばんちゃんとサーバルが湖畔から川縁をさかのぼっていくと、川上の方からギッタンバッコンと音が聞こえてきた。
「たのしー」
見ると二人のフレンズが木の板に座って交互に上下している。
「なにしてるのー?」
「これは『シーソー』っていういうの。はかせに教えてもらったの」
「私はサーバルキャットのサーバル。ねえねえ、私たちにもやらせて!」
「いーよー。あっ、うちは、ハツカネズミでちゅう」
「わいは、アフリカゾウだぞう」
「かばんちゃんも反対側に座って!」
サーバルとかばんちゃんはシーソーに座ってギッタンバッコンと遊んだ。
「あー楽しかったー! ありがとうね、ハツカネズミ、アフリカゾウ」
小さなハツカネズミと大きなアフリカゾウの凸凹コンビと別れ、ジャパリバスはまた川縁をさかのぼりはじめた。
「誰かー助けて!」
小さなフレンズが叫んでいる。
「君は?」
「あたしはメキシコサラマンダー。みんなはウーパールーパーって呼んでるの。
ってそんなことより大変なの。手を貸して!」
ウーパールーパーに付いていくと、川の中の岩で囲まれた穴に出た。
「オオサンショウウオ、フレンズを連れてきたよ」
「やあ、ウーパールーパー。まずはジャパリまんをくれないかい。お腹が減って動けないんだ」
「実は、オオサンショウウオが岩屋に入って出られなくなったんだ」
「入れたんなら出られるんじゃないですか?」
「それが、中に入って食べ続けていたら体が大きくなっちゃって」
「おらは、このままでもいいよー。ウーパールーパーがジャパリまんさえ届けてくれれば」
「そういうわけにもいかないでしょ。あたしだっていつセルリアンに襲われるか分からないし」
「それは困るなー」
「みんなで岩をどかしてみませんか」
三人は岩をどかそうとするがビクともしない。
「困ったなぁ。もっと力の強いフレンズが居てくれたら……」
しばらく考え込んでいたかばんちゃんが何かを閃いた。
「そうだ! サーバルちゃん、長い木を探してきて」
「何に使うか分からないけど、かばんちゃんの言うとおりにする!」
サーバルが木を探して持ってきた。
「この岩がいいかな。その木をこの岩に乗せて、木の先を岩の間に差し込んでっと。
そして、反対側の端を押せば……」
かばんちゃんが木の先を押すと、反対側の岩が少しだけ動いた。
「すっごーい! さっきまで動かなかった岩が動いた!」
「ハツカネズミとアフリカゾウが遊んでいたシーソーを見て思ったんだ。
体格の違う二人なのに、シーソーは釣り合ってましたよね。
あれはハツカネズミさんは端っこに座って、アフリカゾウさんは真ん中寄りに座ってましたよね。
真ん中から離れたところの方が小さい力で物を持ち上げられるんじゃ無いかって思って」
かばんちゃんは説明をしながら木の端を押し続けた。しかし、岩は少ししか動かない。
「どいて! かばんちゃん! みゃみゃみゃみゃみゃー!」
サーバルは高くジャンプをし、空中で一回転をして木の端に着地した。
反動で反対側の木の端が持ち上がり、見事岩を動かした。
「あー、出られそうだよ-」
のそのそとオオサンショウウオが出てきた。
「オオサンショウウオ! よかった出られた!」
「あー、でも、広い世界は居心地悪いなー」
のそのそと、また岩屋へと入っていった。
「ウーパールーパーもおいでよー。気持ちいいよー」
「もう、困ったヤツだな。お二人ともありがとうございました」
ウーパールーパーはお辞儀をしてオオサンショウウオの隣に入っていった。
「よかったね、かばんちゃん!」
「うん、シーソーの仕組みが役に立ったね。
テコでも動かなかったモノが動かせるようになったから『テコの原理』だね」
「よく分かんないけど、かばんちゃんはスゴイね!
ところで、いま言ったテコって何?」
「何だろう? ボクもよく思い出せません」
「あはははは!」
「ふふふ」
かばんちゃんとサーバルを乗せたジャパリバスの旅はまだまだ続く。
(了)
ギッタンバッコン大騒ぎ 楠樹 暖 @kusunokidan
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