アルパカの午後
小咄よしひろ
第1話
「それじゃあ、さっきも言ったけど、今日は雪山の向こうまで行くから今日はこの辺で失礼するわね。」
飲み終えたティーカップを置いて、椅子から立ってトキは言った。
「はい~、気を付けてねぇ」
飛び立っていったトキを見送って一人になったアルパカは、店内を見渡しため息をひとつ。
「…片づけちゃいましょうかね」
食器を洗い、棚へ戻してふと、あることに気付く
「あれ~どうしようかね」
残っているジャパリまんがあと一つだけ…
「これは麓までいかないと…まだ日も高いしだいじょうぶだいじょうぶ」
そう自分に言い聞かせ、背負い袋を持って、出かける準備をする。
「お店、どうしようかね。今日はもう来ないでしょからいいね~」
そうして店を出て山を下りて行ったアルパカ
「ジャングルまでいけばボスいるかねぇ」
山を下りてジャングルに入ってきたアルパカ
「ボスのいるところわかる人はいないかなぁ~」
そこへ草木をかき分け黒い影が降りてきた。
「やああんた、この辺じゃ見かけないね。」
現れたのは大きな黒い尻尾のフォッサだ。
「いやぁびっくりしたよぅ~私はアルパカだよ。あの山の上でカフェをやってるんだよ」
「へぇ、あんたがアルパカか。カフェのうわさは聞いたことあるよ」
「ほんとぉ?うれしぃな。こんど遊びに来てねぇ」
「でもあの山の頂上にあるんだろう?ちょっと大変かなぁって」
「それならねぇ『足漕ぎリフト』っていうのがあってね、それで頂上まで来れるんだって。この前ボスに取り付けてもらったんだぁ。…そ~だ、思い出した~ボス、このあたりで見てないかなぁ?」
「~~ん、今日は見てないな。なんだいジャパリまんか?だったら、わたしのを分けてやろうか。」
「いんやいんや、お店で出すからね、ちょっと多めにもらっておきたいんだよぅ」
「そうかーこの辺にいる仲間にも声かけてみるよ。あと、今度お店にお邪魔させてもらうね」
「は~い待ってるよぅ~」
アルパカはまたラッキービーストを捜し歩いた。
大きな川に出たところで、人影をみつけて声をかけた。
「こんにちは~どこかでボスを見かけませんでしたか?」
「いや、今日は見てないね」
「そうですか、おじゃましてごめんなさいねぇ」
「ぁ、あんたアルパカさんか?」
「へぇ?あらまぁジャガーさん、こんにちわぁ」
「どうしたんだい?今日はカフェやってないのか?」
「いやねぇ、ちょっとお店に置くジャパリまんがなくなっちゃってねぇ」
「それで、ボスを探して…ふむ、力になれなくて済まないな。」
「なんでもないよぉ、それじゃまたねぇ」
そう言って去ろうとするアルパカを呼び止めて
「そういえばさっきカワウソがジャパリまん食べてたな…」
「ほんとう?いまカワウソさんどこにいるかねぇ」
言うが早いか、ジャガーは小舟にアルパカを乗せて川を遡上し始めた。
「さっき見かけたから、この先だ」
「ごめんねぇ重くないかい?」
しばらく行くと河原でカワウソが小石をお手玉にして遊んでいた。
「あ!ジャガーわすれもの?」
こっちに気付いたカワウソが声をかけてくる。
「さっき食べてたジャパリまん、どこでもらった?」
ジャガーが質問する。
「どうしたの?ジャガーほしかったの?もう一個あるよ」
「そうじゃなくてアルパカさんが…」
あとをついでアルパカが
「あのねぇジャパリカフェに置くジャパリまんがほしいのよぅ、それでねボスがこの辺にいないかなぁって。」
「へぇ、そういうことね…えーとね、ここまで来るのにこっちから来たから…その前あっちも行ったし…今日もらったような昨日もらったような」
「聞いた相手が悪かった…どこにいるのか全く分からん」
そうしていると、茂みをガサッっと鳴り分けて、先ほどのフォッサが現れた。
「やあ、見つけた。」
「あら、フォッサちゃんさっきはどぉも~」
「このあたりの仲間に声をかけたんだけど、結局ボスは見つからなくて…」
「そうだったの~ごめんねぇ」
「それで、アルパカの話をしたら仲間たちが、ジャパリまんを持ち寄ってくれたんだよ。これ持って行ってよ。」
そう言ってツタ編みの袋いっぱいに入っているジャパリまんを手渡した。
「えぇ~こんなにたくさん。ほんとにいいのぉ?」
「そのつもりで分けてくれたんだろうからね。遠慮しないで持って行ってよ。」
「ありがとう、ありがとうねぇ…そうだ、みんなに伝えておいてね、カフェに来たらうんとサービスするって。」
「わかった、みんなに伝えておくよ。みんな喜ぶと思うよ」
ジャングルのフレンズたちに感謝して、アルパカは高山に帰って行った。
カフェに戻った時にはすっかり日が暮れていた。
「あら~明かり消さないで、出てきちゃったか~」
カフェに明かりがともっているのを見たアルパカだったが、中に入ると
「おかえりなさい、アルパカ」
そう言って出迎えたのは今朝出て行ったトキだった。奥にもう一人いて
「こんばんは、おじゃましています。わたくしロッジを営んでいます。アリツカゲラと言います。」
「あらまぁ、いらっしゃい」
「カフェのことをトキさんに聞いて、一度来てみたかったので、こんな時間ですがお邪魔させていただきました。」
「いいのよぅ…なんだったら何か飲んで待っててもよかったのにぃ」
「アルパカの淹れた紅茶が飲みたいのよ」
「そう言われてきましたので」
「なによぅ二人ともおだててもなにも出ないよぅ…お客さんに唾出すわけいかないしねぇ」
そうして、アルパカが淹れた紅茶を飲んで三人の夜は更けていった。今日ジャングルであった話を肴にして…
アルパカの午後 小咄よしひろ @kobanasi_yosihiro
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