第172話 病院
通電は無しと……
二、三回照明のスイッチを弄って照明が付かないことを確認した私達は薄暗い建物の中を探索する。
やはり、屋根に穴が開くような事態が起きたのだから、何処かから漏電しているのかもしれない。
さすがに探索し辛いと判断したのか、突然ラッキービーストの目が光だして照明代わりとなる。
その身体にどれだけの機能を詰め込んでいるのか……
中を探索していて気付いたのだが研究施設の割に何故かベッドが置いてある部屋が多い。
私は机の上に置いてある資料を取る。
フレンズの名前と病名……ガオガオ病?
もしかするとこれは病院等で使われるカルテなのだろうか?
何やら珍妙な病名を私が呟いた時に今まで黙っていたラッキービーストが突然喋りだした。
ここは病院としても使われていたみたいだね。
……言われなくても分かる。
先程までずっと黙っていたのはこの施設についてのデータがなかった為のようだ。
ラッキービーストは胸を張るように上体を反らして言う。
ここは管轄外だからマップデータしか無いんだ。
ゴコクのラッキービーストなので仕方無いと言えば仕方無いのかもしれない。
ちなみにガオガオ病と言うのはフレンズだけに罹る病気のようで、特殊なセルリアンの粘液に接触することにより感染するらしい。
病状としては感染したフレンズはヒトの言葉が喋れなくなり鳴き声しか出せなくなる。
病気が進行していくと言葉だけでなく、徐々に理性をも失っていく怖い病気のようだ。
オオウミガラスはラッキービーストの解説にそんな怖い病気だったの!?と驚きの声を上げていた。
現在は発病したフレンズにはワクチンを混ぜたジャパリまんが投与されているので、最終段階まで病状が進行したことはないとのこと。
それとガオガオ病は一度完治すると抗体により二度罹ることはないらしい。
ワクチンの名前はガオナラーズQ
……名付けた人物の顔を見てみたい。
さて、一口に研究と言ってもは様々な分野がある。
研究施設に辿り着いたは良いが、ここは医療系の研究施設だった。
私が求めているものは工学系や化学系なのでこの研究施設は外れである。
しかし、何もないと早々に切り捨ててしまえるものでもない。
外の世界でセルリアンを利用した何かしらの技術が使用されている可能性が出てきた今となっては、セルリアンが引き起こすヒトへの影響を知る必要がある。
探索続行だ。
意気揚々と隣の部屋のドアを開けると中にいた先客と目が合ってしまった。
数秒の空白の後、私は叫んだ。
セルリアンだ!!
サイズとしては頭より少し大きなくらいの小型のセルリアン。
まるで針をなくした注射器のような形をしている。
セルリアンは私達目掛けて突撃してくるが、私がドアを思いっきり閉めるとタイミングが良かったのかドアに挟まってしまう。
私は必死にドアの縁を何度も蹴ってセルリアンを切断するように無理矢理ドアを閉めた。
なんか、最近大きなセルリアンばっかりだったから、小さいセルリアンを見ると逆にほっこりするよね。
私が悪戦苦闘しているのにオオウミガラスは随分と呑気である。
……ところでオオウミガラス、背後を見て先程と同じセリフを言えるか?
オオウミガラスが背後を振り替えると、騒ぎを聞き付けて小さなセルリアン達が何処からともなく集まってきていた。
まるで何処かのゾンビ映画のような光景だ。
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