第129話 思いをぶつけて
オオウミガラスの叫びに呼応したのか、手の中の御守りが熱を帯びてオオウミガラスの指の間から強烈な光が溢れる。
握り締めていた手を開けると御守りが強烈な輝きを放ち始めていた。
その輝きを見て女王は弾かれたように後退りオオウミガラスから距離を取る。
オオウミガラスと女王が見ている前でその輝きを浴びた周囲のサンドスターが火を付けられたかのように輝きを増す。
そして、御守りの表面に神社の鳥居を逆さにしたような深緑色の紋章が浮かび上がった。
それを見た女王は錯乱したかのように叫ぶ。
アリエナイ、アリエナイアリエナイありえる筈がありません!!
この地で眠る守護けものが目覚めるなど!!
施した封印が綻んだ……?
そんな、どうして!?
先程とはまるで違う口調。
これが女王の本性なのか、あるいは……
オオウミガラスは駆け出した。
身体の奥底から力が溢れだしてくるのを感じながら、風よりも速く女王の懐へと飛び込んだ。
一閃
女王はオオウミガラスの攻撃を避けようとするが、オオウミガラスの向上した速度に対応しきれずに左の角がへし折られて宙を舞う。
女王は咄嗟に地面に刺した槍を引き抜いて、オオウミガラスの二撃目を槍で受け止める。
あなたはいつまでそうしているつもり?
オオウミガラスは再び女王に問い掛ける。
しかし、女王はオオウミガラスを無視して、槍を押し込みオオウミガラスを弾き飛ばす。
女王は驚異となったオオウミガラスに対して槍を突き出し攻撃を始める。
素早い突きに対してオオウミガラスは手刀を用いて反撃した。
何度も繰り出される両者の攻撃に甲高い相殺音が砂浜に響き渡る。
セツナちゃんから“かがやき”を奪ったときにあなたは泣いていたよね。
どうして泣いていたの?
教えて!
その涙の意味を!
あなたが本当にしたかったことを!!
オオウミガラスは繰り出される槍の柄を掴み、思いっきり自分の方へ引き寄せて歯を食い縛りながら頭を思いっきり背後へ反らす。
槍を引っ張られて女王の身体がオオウミガラスへと引き寄せられ……
オオウミガラスは思いっきり反らした頭を前へと突き出した。
ゴッ!!
物凄く鈍い音を響かせてオオウミガラスの頭と女王の頭が衝突する。
残った右側の角が砕けて女王は砂浜へと突き飛ばされた。
瘤が出来たと頭突きをした事を後悔しながら、オオウミガラスは倒れた女王を見詰める。
……だって、報われないじゃないか。
女王は立ち上がりながら、今までと違う流暢な口調で言葉を喋り始める。
人の未来を案じていたのに……
頑張ってきたのに……
理不尽に恨まれて……
裏切られて……
……人は最低だ。
何度でも同じ過ちを繰り返して、反省すらしない。
変わらない。
変わろうとしない。
その結果がこの世界の惨状だ!!
こんなケモノなど居なくなってしまえば良い!!
角を無くし1対の翼のみとなった女王は怒りと悲しみが入り交じったような表情を浮かべて顔を上げた。
その瞳は先程までの感情を感じさせない虹色の瞳ではなく、深い海を思わせる藍色の綺麗な瞳になっていた。
私と同じ、藍色の瞳だ。
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