来る災禍

第113話 厄災の黒

 それは突然降ってきた。


 スカイレースの授賞式の会場に到着した直後に私達のすぐ目の前に黒い石柱が突き刺さる。

 直前に誰かが危ないと警告をしていなければ怪我人が出たであろう。


 何の前触れもなく降ってきた謎の黒い石柱。


 以前に砂漠地方で見掛けた石柱と似たような質感だが、こちらの方が形が整っている。

 何処から飛んできた?


 石柱の角度から逆算すれば、これは南から飛んできたであろうことは分かる。


 私がこの石柱に対する考察をしている最中にオオウミガラスが好奇心からその石柱に触れようとする。

 だが、オオウミガラスの手は石柱の手前で止まった。


 小刻みにオオウミガラスの体が震える。

 何事かとオオウミガラスに近付こうとした瞬間にそれは起きた。


 飛び散る黒い破片。


 石柱を砕いて中から凶悪な爪を持った足がオオウミガラスを切り裂かんと襲い掛かる。


 このままでは……!!


 こちらへ引っ張ろうと手を伸ばすが、私の手は僅かにオオウミガラスに届かない。


 だが、その爪は誰かの攻撃によって弾かれてオオウミガラスの直ぐ横を通過した。

 偶然オオウミガラスの近くにいたコヨーテがオオウミガラスに襲い掛かる爪を弾き飛ばしたのだ。


 どうやら、オオウミガラスの異変に気が付いたのか直ぐ側にまで近付いてきていたようだ。


 私は放心状態のオオウミガラスを引っ張ってこの場から退避する。


 それを見届けたコヨーテは改めて目の前に現れた敵に目を向ける。


 そいつは今まで見たこともない全身が真っ黒なセルリアン。

 だが、私の目にはセルリアンではなく、一瞬別の存在に見えた。


 極地戦闘用四足歩行型戦車。

 第三次世界大戦終了後も世界を破壊し続けてる完全自立型の新世代兵器。


 偶然、形状が似ただけなのだろうか?


 幸いなことにそのセルリアンには戦車のような砲台は付いていない。


 異変に気がついてコヨーテの仲間のブラックジャガーとアメリカバイソンがやってきた。

 ハンターと黒いセルリアンとの戦いが始まる。


 周囲のフレンズ達は突然現れたセルリアンに驚いて逃げたしたが、ハンターが揃ってから離れた位置で戦いを見ている。

 ハンター達の実力はかなり信頼されているようだ。


 始めにアメリカバイソンが槍を構えて駆け出す。

 それを黒いセルリアンが真っ向から爪で受け止める。

 その隙にコヨーテが近付き黒いセルリアンに爪による連撃を繰り出した。

 しかし、コヨーテの攻撃が軽いのか黒いセルリアンの表皮には細かい傷が付くだけで、致命的なものにはならない。


 セルリアンはコヨーテの攻撃が鬱陶しくなったのか、アメリカバイソンの攻撃を受け止めている足とは別の足でコヨーテを攻撃する。

 それを軽い身のこなしでいなしながら、なおも攻撃を加える。


 そこへ一瞬だけ黒いセルリアンの懐ががら空きになった瞬間にコヨーテを身体を捻りながら飛び越える形でブラックジャガーが黒いセルリアンの懐へと飛び込む。


 上段から下段へ。

 スピードと体重と遠心力を乗せたブラックジャガーの一撃が黒いセルリアンへ叩き込まれる。

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