第53話 夜空の星に願いを

 休憩を取りながら再び夜空を眺める。

 相変わらず、満天の星が夜空に広がっている。


 ずっと眺めていると星空に一筋の線が流れる。

 流れ星だ。

 昔から流れ星に願いを掛けると、その願いが叶うと言う話があるが、彼女達は知っているだろうか?


 意外と知らなかったようだ。

 これも廃れてしまった文化の一つと言うわけか。

 星に願ったところで願いが叶うわけでもない。

 他人任せな迷信が消えてしまうのは、当然と言えば当然の事なのかもしれない。


 願ってみようよ!


 オオウミガラスが私の話を聞いてそう言い出した。

 夢を壊すようで悪いが、願っても叶わないと忠告はしてみるけど、それでも願ってみようと言う。


 星空をじっと見上げていると、再び流れ星が流れる。


 隣を見るとオオウミガラスもフタコブラクダも目を閉じて何かを願っていた。


 流れ星に何を願った?と聞くとフタコブラクダは砂漠地方にもっと沢山のフレンズが遊びに来るように願ったそうだ。

 オオウミガラスに何を願ったか聞いてみると、内緒と言われてしまった。


 では、私は何を願ったか?


 私は何も願えなかった。


 私には沢山叶えたいものがあった筈なのだが、いざ願おうとすると煙を吹き散らかしたかのように願いが霧散してしまった。


 私が本当に叶えたい願いとは何だろうか?


 一見、他人任せな迷信のように見えて、その実は己の目標を再確認するための儀式なのかもしれない。


 すっと心の中に大きな空洞が広がっていくような感覚が身体を満たす。


 私の願いは故郷へ帰ることだ。


 私はそう自分に言い聞かせるように、オオウミガラス達に嘘を吐いた。

 帰りたい……その気持ちは本物の筈だ。



 さて、私達はやっと目的地へ辿り着いた。

 そこは私達がやってきた岩石の砂漠の出口から、少し西へ迂回したところにある大きな岩盤だ。


 オオウミガラス達はこんな大きな岩は登れないよと言っている。

 なるほど、フレンズ達にはこれがただの岩に見えたらしい。


 一見すると色合いもあって岩の一部にしか見え無いのかもしれないが、一つ決定的な違いがある。

 それは取手の存在だ。

 これは岩の一部ではなく、岩っぽい塗装がなされた大きなゲートである。


 私は取手を握り、思いっきり横へ動かした。


 ……動かない。


 オオウミガラスとフタコブラクダの力を借りて、何とか二人並んで通れるくらいの隙間を開けることが出来た。


 おそらく、何か大きな物がゲートに激突して歪んだせいで、最大までゲートが開かないのだろう。

 だが、通れるようになったのなら上々だ。

 私達はゲートの中へ入っていった。


 ゲートの中は比較的短いトンネルとなっており、歩くと直ぐにトンネルの出口へ辿り着いた。

 時間的に日の出が近かったので、私達がトンネルの出口へ辿り着く頃には薄らと辺りが明るくなっている。


 さらに進んでいくと辺りがすっかり明るくなる頃には、何処と無く見覚えのある道だった。


 どうやら私は完全に道を見落としていたらしい。

 しかし、仮にこのゲートへ続く道を見付けても、3人で力を合わせないと開かないので、どの道無駄足になっていた可能性が高い。


 まぁ、帰りに見付けられたのは幸運だったのかもしれない。

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