第51話 真昼の休息

 それにしても長い砂嵐だった。

 ヒメアルマジロもフタコブラクダもこんなに長い砂嵐は初めてだと言う。


 サンドスターによって気候が制御されているので、何かしらの異常気象はサンドスターの乱れによるものか?

 だとするなら、この島では何かしらの異変が起こりつつあるのかもしれない。


 SF小説の読み過ぎか。


 異常気象と言っても砂嵐は砂漠に起こる自然現象だ。

 時間が普段より長かったくらいでは、異常とは言えないだろう。


 太陽が少しずつ上に昇ってきて段々と周囲が暑くなるかと思われたが、想定していたよりかなり涼しい。

 具体的に言うとオオウミガラスが活動できる程度。


 昨夜、フタコブラクダが言っていたオアシスの周囲は昼間でもそれなりに涼しいと言うのは本当らしい。


 今日はここで日が暮れるまで休むことになる。


 外にテントを張り直して、その下で気持ち良さそうにオアシスの泉で泳ぐオオウミガラスを眺める。

 水着を持ってきた方が良かっただろうか?

 そして、その近くではフタコブラクダがオアシスの水を物凄い勢いで飲んでいた。


 明らかに自身の体積と同じくらいか、それ以上の水を飲んでいるように見える。


 確か、水でも飲み過ぎると中毒症状が起きて大変な事になると聞いたのだが、フタコブラクダはその辺は平気なのだろうか?


 おそらく、平気なのだろう。


 動物も奥が深い。


 そんな事を思いながらオアシスを眺めていたら、左手に何やら妙な違和感を感じて視線を向ける。


 そこには手の平サイズのセルリアンがいた。

 私は無言でそのミニセルリアンを捕獲する。


 どうやらセルリアンの大きさと言うのも幅広いらしい。

 流石にこの大きさではこちらに害することは出来ないようだが、こちらに無機質な瞳を向けたまま身動き一つ取らないのは少々不気味だ。


 一匹くらい観察用で捕獲しても良いかもしれない。

 そう思ったがセルリアンにやるエサが用意できない事に気が付いたので、泣く泣くと言う訳でもないがやめる事にした。


 こんな小さいのでも後に大きくなってフレンズ達を襲うようになるのだから、少しでも憂いを絶つために、ここは心を鬼にして握り潰してしまおう。


 運の良い奴め……


 私が目眩のような症状を起こした隙に、セルリアンは私の手から逃げ出してしまった。

 見た目通りに素早い奴で、オアシス周辺の茂みの中へ入り込み、私はミニセルリアンを見失う。


 さすがに無機物から生まれたと言っても、こうして生物のような特徴を持ったのだから、生存本能に従って逃げ出したのだろう。


 それにしても目眩だなんて、昼夜逆転生活の弊害が出たのだろうか?

 それとも、知らず知らずに旅の疲れが蓄積していたのだろうか?

 自覚症状を伴う身体の不調は感じられ無いが、気を抜くとそのまま意識を失いそうになる。

 いや、これが身体の不調なのだろうか?


 しかし、熱中症の症状とは違う。


 頭がぼんやりとしてきた。


 今回はこの辺で筆を置くことにしよう。


 今夜の旅に向けて私はゆっくりと目を閉じた。

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