第50話 砂塵の下で

 彼女の名はヒメアルマジロ。

 砂漠に暮らしているフレンズのようだ。


 どうして砂に埋まっていたのかは元動物の習性だろうと思って敢えて聞かないことにした。


 ヒメアルマジロによると、たまに砂嵐等が来るとこの洞窟の入口が埋まってしまうらしく、その度に掘り返しているのだそうだ。


 どうやらこの洞窟はヒメアルマジロが掘ったものではなく、元々存在していたものらしい。


 手で壁を掘ってみると程なく固い石に触れる。

 しかし、石にしては少々手触りが滑らか過ぎるような気がする。

 そう、まるでコンクリートのような……


 コンクリートだ。


 コンクリート製のトンネルの壁に土や砂が付いて、何かが掘ったような洞窟に見えていたようだ。

 天井の傾斜的にこのトンネルは地下に続いているようだが、入口から15メートル程で砂に埋まってしまっている。


 地下に何かあるのだろうか?


 砂を掻き出すにしてもこの少人数では時間が掛かり過ぎるし、砂を運ぼうにも砂嵐が近付く中での掘削作業は安全面から出来ない。


 それに当初の目的は砂漠の植物園のバス探索だ。

 物資にあまり余裕がない以上、余計なことはしない方が良い。


 そろそろ砂嵐が来そうだ。


 少しでも砂の侵入を防ぐように、入口にテントに使用していた布を張って入口を塞ぐ。


 さて、これで砂嵐が通り過ぎるまで暇になってしまった訳だ。

 砂漠のフレンズ達の経験上、砂嵐は長くて一時間程度で収まるらしい。


 しばらくは暇潰しだ。


 幸い暇潰しの道具もしっかりと持ってきている。

 セグロジャッカルからババ抜きで、中々白熱したと話を聞いてから一度はやりたかったのだ。


 私はトランプ取り出して3人に遊び方を教える。

 やはり、こういう遊びをするのは初めてのようで皆興味津々でルールを聞いてくれる。

 しかし、見た目が十代の少女にトランプの遊び方を一から教える機会なんて、滅多に無いだろう。


 ジャパリパークの天候について、トランプで遊びながら判明したことについて記述する。

 ジャパリパークの天候は各地方毎に完全に独立しているようで、砂漠地方の隣にツンドラ地方が存在するが砂漠地方に雪が飛んでくることは無いらしい。

 砂漠地方で発生した砂嵐の砂も他の地方に飛んで行く事もないようだ。


 ジャパリパークに置いては従来の天気予報はまるで当てにならない可能性が高い。

 もしも、ジャパリパークで天気予報をするなら、各地方毎に日々の天候の移り変わりを記録したデータが必要になるだろう。




 あれから、2時間くらいは経過しただろうか?

 相変わらず外からは強い風が吹き荒ぶ音が聞こえており、未だに砂嵐が収まっていない事を告げていた。


 今回は長い砂嵐なのだろう。


 私達は再びトランプで遊び始めた。




 さらに時間が経過していつの間にか砂嵐も止んで、外は薄らと明るくなっている。

 無事に私達は砂嵐をやり過ごすことに成功したようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る