第19話 レストラン


 しばらく歩いていると湿原の中に木造の建物が見えてきた。

 正確には初めから見えていたので、木造の建物に近付いてきたが表現としては正しいだろう。


 中に人は居ないと分かっていても人工物があるとつい寄りたくなってしまう。


 ついでに何かしら物資の補給をしておくとしよう。

 先日の大型セルリアンに物を投げ付けたせいで、完全に壊れてしまいどうにもなら無いものがいくつかあるのだ。


 建物の中に入るといくつも四角いテーブルと丸い椅子が列を揃えて置いてあった。

 家具の配置から私は直ぐにここはレストランであると感付いた。


 そして、レストランの中には1名妙なフレンズが潜んでいた。


 まず、真っ先に目を引いたのがその服装。

 ここへ来るまでに多くのフレンズを見てきたからこそ分かるが、フレンズの大半は何かしらの制服をモチーフにした服を着ている。


 その点、昨日のコヨーテは休日の若者が着るようなフリーダムな服装だった。


 今回のフレンズは日本固有の服装である浴衣を着ていた。

 頭には日本の縁日にあるような仮面、そして筋がいくつも入ったヒレがある。


 私の知識で筋の入ったヒレのある動物に心当たりがある。

 魚類だ。


 鳥類と哺乳類、爬虫類のフレンズは確認していたが、まさか魚類のフレンズが存在していたとは……

 もしや脊椎動物なら全てフレンズになるのだろうか?


 そのフレンズはまるで幽霊を見たかのように数秒硬直した後に超ハイテンションで叫び始めた。


 いらっしゃああああああい!!


 飲食店の店員と言うより地元の八百屋のような歓迎の言葉の後に私の度胆を抜くような発言が飛び出した。


 料理作ってぇえええ!!


 ここのレストランは客に料理を作らせるのか!!


 その後、当然の流れのように私が料理を作ることになってしまった。

 どうやら私は期待の籠ったキラキラした眼差しに弱いらしい。


 一昨日のように遺言を書くような事態にはならないので一先ずホッとしている。


 キッチンに入り確認すると一通りの調理器具は揃っているようだ。

 しかし、調理器具はあれど食材の方はどうだろうか?

 業務用の冷蔵庫を開けると不自然なくらい新鮮な食材がところ狭しと並んでいた。


 定期的に補充されているのだろうか?

 補充されているとなればこのジャパリパークの何処かで食材が生産されていることになる。


 考えてみればジャパリまんが配給されているので食材を作っているところがあるのは当然の事だったか。


 となると、カギはボスと呼ばれるフレンズだ。

 ボス、いったい何者なんだ?


 ちなみにあの魚のフレンズは人面魚と言うらしい。

 あだ名はコイちゃん。


 人面魚は民話や都市伝説の妖怪の類いではなかっただろうか?

 いや、本人がそう思い込んでいるだけでただの鯉のフレンズだろう。


 さて、そろそろ料理を始めよう。


 最近はジャパリまんだけを食べていたので、そろそろ別の物を食べたくなってきていたところだ。

 確かにジャパリまんは美味しいのだが、流石に毎日となると話は変わってくる。


 食材は豊富にある。


 何を作ろうか?

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