第12話 山よりも高く
私の脳内ではどうしてこうなったと言うリピートと共に身体は石像の如く硬直していた。
何故なら眼下には複数の気候が入り交じった不思議で雄大な景色が広がっているからだ。
つまり、私は現在上空にいる。
背中から脇を通して持ち上げられている状態なので背後を振り替えれないが、少し前を行く一団を見て私は現状を理解する。
どうやら私は鳥のフレンズに誘拐されたようだ。
後に理由は分かるがこの時の私は落とされるんじゃないかと戦々恐々で石像の如く硬直しており、何か考える余裕などは全くなかったのだ。
恐怖の空中搬送で辿り着いたのは山岳の中程にある山小屋のようなところで、私達はテーブルの周りに下ろされた。
改めて私達を誘拐したフレンズ達を見る。
全員が貧相なオオウミガラスの翼とは対照的に大きな翼を持っており、飛行能力が高そうな見た目をしている。
そのうちの一人がマーコールに絡んでおり、マーコールは必死に違うと拒絶している。
さて、物凄く怖い思いをしたのだから……
いい加減理由を吐いてもらおうか?
久々に怒ったかもしれない。
それにマーコールもこれ幸いと私の怒りに乗じて叱り飛ばしていた。
さて、この三名が今回私達を拐った理由を簡潔に記そう。
彼女達は昔このジャパリパークで開催されていたと言うスカイレースなるものを復活させたいのだと言う。
それで一緒に手伝ってくれるフレンズを募集していて、あのトンネルの前が集合場所だったようだ。
なるほど、私達をお手伝いだと思ったわけか。
でも、そのくらいならマーコールも手伝ってやっても良かったんじゃないかと話を振ってみたらとんでもない事実が判明した。
なんと、空を飛べないフレンズすらレースに参加させようとしていたらしい。
私は丁寧にフレンズにはそれぞれ出来ることと出来ないことがあると説明したが、どうやら昔のスカイレースは本当に飛べないフレンズが参加していたそうだ。
どうやって参加していたんだ?
その疑問は周囲を確認するとすぐに解決した。
山小屋の周囲に壊れた自転車、プロペラと何かの骨組み、ボロボロの布……
これを組み直せば人力飛行機が出来るような気がする。
もしや空を飛べないフレンズ達は人力飛行機でレースに参加していたのだろうか?
その可能性は濃厚だ。
昔は人も沢山いただろうしそう言う道具が作られて、空を飛べないフレンズもイベントに参加できるような仕組みを作っていたのだろう。
それを教えるとオオウミガラスがまるでタイミングを見計らったかのように、そう言えばヒトだったよね?と私に言ってきた。
そしてヒトと聞いて鳥のフレンズ達がこちらをじっと期待の眼差しで見詰めてきた。
マーコールも期待の眼差しで私を見詰めてきた。
オオウミガラスも目をキラキラさせて期待の眼差しで私を見詰めてきた。
皆、人って生き物も出来ることと出来ないことがあって……
私の退路は何処にもなかった。
はっきり言って私は人力飛行機等作った事はない。
精々紙飛行機くらいだ。
だから、そんな期待の眼差しで見詰めないでもらいたい。
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