山岳の集会
第10話 穏やかな朝
目が覚めると司書が私の顔を覗き込んでいた。
司書は私が余程興味深いのか昨日もずっと私の事を観察していた。
だが、今回は観察ではなかったようで、私と目が合うと動揺したかのように仰け反って私から距離を取った。
その手にはしっかりと私の日記を握り締めながら……
天誅
カラスほど身近な鳥ならばある程度彼女の行動が予測出来ただろうに……
好奇心旺盛な鳥で頭が良い。
彼女は文字が読めるので、私の日記に何が書いてあるのか気になって見ようとしたのだろう。
全く……油断ならないカラスだ。
司書に別れを告げて港へ行こうとしたら、さっきまで寝ていたオオウミガラスが慌ててやってきた。
どうやらオオウミガラスは私に付いて行くつもりらしい。
ここへ辿り着けたのは彼女の案内のおかげであり、非常に感謝しているが彼女は海に住むフレンズだ。
無理をして内陸を通る旅へ同行する必要はない。
私は一人で大丈夫だと伝えると、オオウミガラスはまるでムキになったかのように心配だから最後まで付いていくと返してきた。
私は困って視線で司書に助けを求めたが、司書は連れていけば良いではないですか、と言いたげな視線を返すだけ。
結局、オオウミガラスの押しに負けて私はオオウミガラスの同行を許してしまった。
そう言えば、カラスは光り物が好きだったか?
そう思ってルート構築を手伝ってくれたお礼にペン先が金色の万年筆を渡した。
司書のテンションが弾けた。
それはもう大興奮でこれは何ですか!?書くものですか!?どうやって使うのでございましょうか!?と質問責めにされた。
海水に浸かってしまってはいるが、インク壺があればまだまだ現役で使える。
最も、現在のジャパリパークにインクがあるのかどうかは疑問ではあるが……
すると、オオウミガラスが何やら拗ね始めるような気配を感じたので、オオウミガラスにもここまで案内して貰ったお礼を渡すとしよう。
オオウミガラスには星の形の髪留めをプレゼントした。
付け方が分からないようなので、オオウミガラスの髪に付けてあげると大層喜ばれた。
司書がお礼はジャパリまんじゃなくてこういう物が良いですねと感傷に浸っていた。
図書館の一室にはフレンズ達が司書へのお礼として贈られたジャパリまんが一人で食べるには多過ぎるくらいに備蓄されている。
フレンズ達の主食とは言え、さすがにジャパリまん漬けには参っているようだ。
どうにもこのジャパリパークはジャパリまんで経済が回っているようで、ジャパリまんが通貨のような役割を果たしている。
食べれる通貨で私が思い浮かべるのは硬貨の形をしたチョコだが、ここでは本物のお金になるかもしれない。
そしてジャパリまんはパーク内にある何処かの工場で生産されており、フレンズ達からボスと呼ばれる存在が配給しているらしい。
ボス……いったいどんなフレンズなんだ?
オオウミガラスに聞くとボスはボスだよと言う具体性のない返事が返ってきて、司書に聞くとその内会えますよとのこと。
オオウミガラスはともかく司書は教える気があまりないらしい。
いや、万年筆をガン見して調べたそうにそわそわしているので、返事が適当になっているだけかもしれない。
まぁ、図書館を管理するカラスのフレンズが居るくらいなのだから、工場を管理するフレンズが居てもおかしくはないだろう。
ボスの正体は直接会った時のフレンズ当てクイズまで楽しみにしておこう。
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