第64話

みわ「土曜日、パパとママに会ってほしいんだ」

僕 「え?」


僕は、突然の申し出に驚いた。


みわちゃんのご両親には、実はすでに同棲前から会っていて、

同棲するときもご両親に許しを得た上で同棲している。

なんで、今また?僕はまた疑問に思ってしまった。


僕 「あの、ご両親には、何回かお会いしているよね」

みわ「うん」

僕 「何かお話したいこととか、あるってこと?」

みわ「うん」

僕 「何だろう」


すると、みわちゃんは一息ついて、こう言った。


みわ「パパとママがね、

   石井さんに、婿養子に来てほしいって、言いたいって」

僕 「婿養子?」

みわ「うち、去年、妹がお婿をとらずにお嫁に行ったでしょ」

僕 「うん」

みわ「それから実は、あなたが婿養子をとりなさいって、

   猛烈に言われていたの」

僕 「え、そうなの?」

みわ「そう。で、何度も石井さんに頼めって言われていたの」

僕 「そうなの?」

みわ「でも、まだだからって言って、防いできたんだけど、

   最近、それなら家に帰ってこいって言いだして、大変なの。

   それできのう、実家に帰っていろいろ話したのよ」

僕 「そうだったんだ。それで?」

みわ「何度も言ったんだけど、

   だめで、もう連れて来なさいって話になっちゃった」

僕 「そうなんだ・・・でも、どうしてそんなに婿養子にこだわるの?」

みわ「財産よ」

僕 「財産?」

みわ「そう。うちはパパがおじいちゃんの資産をたくさん受け継いだんだけど、

   このままだとママと私と妹しか相続できないから、

   石井さんにもぜひって」

僕 「ええ、僕にも」

みわ「そう。いい話でしょ」



みわちゃんのお父さんは資産家で

「山河不動産」という会社を営んでいると聞いたことがある。


僕に財産をくれようとしているのか。

それは確かにいい話だし、みわちゃんを大事にしたい気持ちはあるけれど、

財産をもらうために婿養子に行くというのは、なんだか釈然としない。


僕 「でも、ずいぶん急だね。

   この間までは、結婚はいつでも、とか言っていたのに」


僕は、去年ご両親に会った時に、そう言われた。

みわちゃん自身も、急いでいなかったはずだ。それなのに、なぜ?

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