第2話 優花はうきうき!
有原優花は買ったばかりのパナソニック製電動自転車をこぎながら、火照った顔を四月の爽やかな風で冷やそうとしていた。なにしろいきなり二人も部員が入ってきたのだ。こんなことは初めての経験で、優花は今でも信じられない気持ちでいっぱいだった。
「ついに後輩が入部した! 私も立派な先輩部員!」
どの部でも当たり前のことが、部員一人の美術部ではとてつもなくうれしい出来事だった。
ただ何となく腑に落ちない。現れたのはイケメンと美人。ほぼ同時に教室に入ってきた二人。あれはどう見ても口裏を合わせていたように思える。
世間では地味な部活の代表格と思われている美術部に、あんなイケてる二人が急に入部してくるなんて。
「あんたたち本当に絵を描くのが好きなの?」思わずそう聞いてしまった。だってそうだろう? あんな二人が、地道に黙って絵を描く姿なんて想像できない。
「じゃなかったら来ませんよ」男の子にあっさり言われて優花は思わずひるんでしまった。
「ま、まあ、そりゃそうだわね」
女の子の方は潤んだような瞳でじっと私の様子をうかがっている。あんな目で見られたら女の優花でも惚れてしまいそうな純粋な目だ。
「まあいいわ。明日までに活動計画を考えておくから、今日のところは名前だけこの紙に記入して」
油絵の具で指紋の付いた無地の紙を二人に渡すと、それぞれが相手の様子をうかがいながら用紙に名前を記入した。
神谷未来、佛圓かこ。これが二人の名前だった。
「神と仏で未来と過去?」
なんか面白そう! 能天気は優花にはそう思えた。
団地の下り坂をフルスピードですり抜ける。スカートが風にあおられて下にはいているハーフパンツが丸見えだったが、そんなことも気にならない。対向車を運転するおっさんがにやけた目で見つめてくる。
「ヤッホーーー!」
優花の歓喜の声が団地中に響き渡った。
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