第十四話【私、芋煮ません】
「うめぇぇぇぇえ!!!!」
「なんじゃこりゃああああ!?」
「ほくほくじゃぁ! ほくほく!」
「どうして野菜の切り方を変えてるの?」
「胃にしみるぅぅぅうう!!」
「これって鉄だよな? こんなでかい入れ物初めて見たぜ。え? 鍋? すごいぜこれ!」
「うま、かゆ」
「粥じゃなくて芋鍋だよ!」
ただいま芋煮会。芋鍋パーリィィィの真っ最中よ。
「野菜毎に切り方が違うのは、煮崩れを防ぐためと味の……」
「鉄ってそんなに作るのが大変なのか……」
「調味料ってなんです?」
現在異次元空間のような文化交流の真っ最中よ。
基本的にはほとんどがこちらのメイド人形たちが、村人たちの質問に答えていく形だけれど、1つわかったことがある。
元々村では、村長が村人一人一人に役割を決め、それを守っていくというスタイルで、男なら狩り。女なら家で土器や毛皮作りと言った、慣例に沿った役割を与えていたのだが、個々に話をすると、やはり一人一人興味を持つ物が違っていた。
例の大男さんが料理に興味を持ったのは極端な例だが、狩りしか知らないような男性が、鉄や鍛冶に興味を持ったり、料理しかやらせてもらえなかった女性が、畑に興味を持ったりと、芋鍋と、お酒の力を借りてわかってきた。
あ、お酒は村から持ってきた物よ。
私は飲んでないけど、本当、人類ってここまで退化してもお酒だけはちゃっかり作り続けるのね。
……退化とか言っちゃだめね。
別の意味で、必要は方向へ進化したのかも知れないし。
ただ私はそれを受け入れないけど。
問題はあるのかも知れないが、歌に彫刻、美食に絵画。芸術が無ければ生きていけないの。
くすん。だって女の子だもん。
……女の子は関係無いわね。私が私だからよ。文句ある?
でも私に芸術センスは無い。
ならセンスのある人に作ってもらうしか無い。
だから村人を助けて発展させるの。
イチから文明を作るような物ですもの。もしかしたら想像もつかないような新しい芸術が生まれるかもしれないわ!
……まぁその前に生活だけれど。とほほ。
芋煮会を横目に、製造型であるメイド人形のオレンジが、バナナの葉と材木を使ってあっと言う間に小洒落たコテージを建てまくっていく。
最初村人も手伝うと申し出てくれたのだが、時間が無い事と、まだ建てさせられないという理由で、お断りすることになったわ。
村人全員がオレンジの建築速度に、目を丸くしてというか、驚愕して、中にはリアルに驚き叫んで顎をはずしていた人がいたほどよ。
夜は彼らはちゃんと交代で見張るというので、念の為グリーンだけ女性コテージで休ませて、私たちは神殿の方へと戻っていった。
……神殿で寝るのが二日目とは思えないほど色々あった一日だったわね。
◆
次の日の朝、村人たちが神殿|(我が家)へと集まっていた。
最初は何事かと思ったが、わざわざ挨拶に来てくれたらしい。
これは彼らの習慣で、朝は長老に一言挨拶する日課を、私にもしにきてくれたという。
神殿様式の内部は教会の様に広いホールを持つ。ブルーはそこに村人たちを集めていた。
過剰なまでの丈夫さを持つ自室の扉を開けて、顔を洗い、ブルーに手を引かれていって、寝惚け眼で椅子に座る。
……。
あ。
これどう見ても私が偉そうなヤツだ。
寝起きでぼけっとしていたのも悪いが、村人たちに崇められるに一段高い上座で、偉そうに一人だけ椅子にふんぞり返り、その後ろには自分を象った真っ白い石像だ。
「女神……!」
「女神だ!」
「うぉおぉおっぉおおおお! 葉っぱ女神!」
「葉っぱ女神!」「葉っぱ女神!」「葉っぱ女神!」「葉っぱ女神!」「葉っぱ女神!」
「だああああ! その葉っぱ女神はやめて! せめて葉っぱは取って!!」
「女神さま、葉っぱを取るとマッパになってしまいますが?」
「誰が上手いこと言えって言ったのよ!? もう! わかったら! 女神でも何でも良いから葉っぱって呼ぶのやめて!」
「女神さま! 女神さま! 女神さま! 女神さま!」
「もう……好きにして」
こんな風に朝の挨拶は無事に終わった。
……大事故よ!!
◆
今日の仕事は、村に必要な職種の洗い出しと、その割り当てだ。
しばらくは希望の職種を希望順にいくつかローテしながら適材適所を見ていく事にした。
ローテなどの説明には苦労した(ブルーが)。
現状の人数であれば、メイド人形だけでも面倒みれるが、人口というのは増えるのだ。今のうちからやれることはやらせた方がいい。
私と彼らとでは寿命が違いすぎる。
あ、これは夜に確認を取ったのだけれど、魔力の活用法を知らない彼らの平均寿命は、だいたい60年と少しらしい。曖昧なのは平均値の取り方を知らない人間に聞いているからだ。
しかしそれほど大きくずれてはいないだろう。
だが魔導士は違う。体内の魔力を常に活性化させている私たち魔導士は大概長生きだ。
定説となっている論文では、魔法士が100年。魔術士が120年。魔導士180年。魔導師200年。と言われていた。真偽の程は定かでは無い。
ただ魔力を使えない人間の平均は、栄養状態が良くて、70年前後というのが定説だったので、おそらく60年という寿命は大体正しいと判断出来た。
プラッツ君とレイムさんは長生き出来る素質有り。他の人には……うーん。興味がある人に、生活魔法と呼ばれるセットを教えていきましょう。
この三点セットね。
そしてこの三つが使えるようになるには、ある程度の算学と読み書きが必要になる。必然的に文化レベルが上がることを意味する。
うん。悪くないわね。
でも寿命の事を話すのはもう少し後にしましょう。プラッツ君も知らない様子だしね。
さて、今回必要と判断された職種はこうだ。
・狩人
・料理人
・農家
・酪農家
・木こり
・酒杜氏
・革職人
・鍛冶職人
★戦士
★魔導士
★神官
★村長
意外と多いわね。
★になっているのは、一人で決定している職らしいわ。これは変えられないし変えないそうだ。
そりゃ魔導士なんて、プラッツ君意外にはできないし、神官もレイムさん以外できないもんね。
これだけあって、お酒を作る専門の人がいるところが、人類って逞しいと思わせるわね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます