新しいハンターを見つけよう!

三佳ユニ

彼女の残した”きせき”

「そうか、私たちはパワーが足りない‼︎」


「どうしたんですかヒグマさん突然大きな声出して」

キンシコウ、リカオンと共に巡回中に突然発言したヒグマに、キンシコウが驚きながらも尋ねた。


ヒグマは少し悲しそうにしながら、応える。

「あれからずっと考えてたんだ、ハンターとしてセルリアンを倒すために足りなかったものはなんだったのかってよ」


先日起きた巨大セルリアンとの戦闘、結果的に被害も少なくフレンズ側の勝利となったが、ハンターだけでは惨敗していただろう。

ヒグマは次に同じようなことが起こった時のことを考えていた。


「すいません、私が非力っすから…」


「いや、キンシコウとリカオンに不満を言ってるわけじゃないんだ。だが私たち三人では手がでなかったのも事実だからな」


近くにあった椅子に腰掛け、凛とした表情でヒグマは言った。


「そこで新しいハンターのスカウトをしようと思ってよ!」


「あてはあるんですか?」


「強いやつのあてはないが…知識のあてはあるだろ?」


キンシコウはああ、と気付いたような表情をしたが、リカオンはまだキョトンとしている。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

ここはじゃぱりとしょかん。

ヒグマの言う知識のあて、とはここにいる博士を訪ねハンター候補となるフレンズの情報を聞こう。といったものだった。


「そこでわれわれの知識を借りに来たのですか」


「よいですよ。ただしなにかーー


「料理」


博士が対価を求めようとしたその時、ヒグマが笑みを浮かべながら発した一言に博士と助手は鋭く反応した。


「かばんがいなくなってから火が扱える奴が必要だろ?」


博士も助手も料理というもの素晴らしさに魅せられていることをヒグマも知っていた。


博士と助手はかばんが旅立ってから新しい料理はもう食べられないと諦めかけていたのだが、火を扱えるヒグマならばもう一度あの味を作れるかもしれない。


そんな期待は、情報の対価としては十分すぎる内容だった。


「は、博士、カレーのためなら仕方ないのです」

助手が慌てながら言う。


「わ、わかったのです。では何を知りたいのですか」

博士も慌てながらもヒグマの提案を飲むことに了承し、ヒグマは博士にハンター候補となる強い動物がいないかを尋ねた。


「…なるほど、そういうことですか。強さだけでいえばライオンやヘラジカなどそうげんちほーのフレンズたちが候補になるのですが…」


と、そこで言葉を濁らせる博士。

助手が気付いてそこに続ける。


「そうげんちほーのフレンズたちはヘラジカかライオンと行動を共にしているのです。戦いに向いてないフレンズもいては戦力の増加にはならないのではないか、ということなのですよ」


確かにその発言は的を得ている。

そうげんちほーには強いフレンズも多いがそこからスカウトしては行動を共にしているフレンズたちを巻き込む、もしくは孤立させ危険な目に合わせる可能性もあるのだ。


「あぁ、それは確かに危ねぇなぁ」

納得しながらも残念そうな顔でヒグマはそう呟く。


「フレンズを危険に晒すのはハンターとして一番ダメっすからね…」


それなら、と助手が続ける。

「カバが適しているのではないですか、博士」


「助手、こちらもそう思っていたところなのです。カバは力が強く動きも早いですからね。行って話してみるといいのです」


「そうか、じゃあカバのところに行ってみるぜ。ありがとな」


「待つのです。我々もついていくですよ」


「用が済んだらすぐにカレーを作るのです。そうやって逃げようとしても無駄なのです。我々は賢いので」



ーーーーーーーーーーーーーーー


カバに会うためサバンナちほーの水辺にハンターたち一行はやってきた。


「あなたたち大勢で一体どうしましたの?」


「単刀直入に言うぞ、お前をハンターとしてスカウトしにきた」


カバが目を丸くして首をかしげる、頭の上に?とでも出ていそうだ。


「話が見えてきませんわ、一から説明してくださる?」


一行が一から、ハンターだけではセルリアンに勝てなかったこと、パワーが足りないためスカウトに来たこと、おまけに情報の対価に料理を作らなければいけないのでそれも手伝って欲しいことを説明し終わったあと、カバは哀しそうな顔をしながら口を開いた。


「あなた何もわかってないのね」

《ルビを入力…》

「あなたたちがあの時セルリアンに勝てたのは数のおかげでも力の強さでもないでしょう?かばんさんの知恵とフレンズみんなが協力して勝てたのではなくって?」


「でもそれじゃハンターとしてーーー

キンシコウが言葉を遮る。


キンシコウだって心の中ではこの言葉が間違っていないことなどわかっているが、ヒグマがあれほど悩んで出した結論なのだ。

それをここまで言われては感情的にもなってしまう。


「ハンターとして、何?一番大事なのはフレンズが1人でも多くセルリアンの被害にあわないことでしょう?」


キンシコウは冷静になって喉まで出かかっていた言葉を飲み込み、

ヒグマはその言葉でハッとして、自分のいままでの考えを捨て新しい考えにたどり着いていた。


「確かにその通りだ。…よし、行くぞ。キンシコウ、リカオン」


「もういいんですか?」


「ああ、自分が恥ずかしいくらいだぜ。こんな当たり前のことに気付けなかったなんて」


「まずは戦えないフレンズともできる作戦と、戦えないフレンズたちに身を守る方法を教えるところから始めよう。私はハンターって名前に、こだわりすぎてたのかもしれない」


やれやれ、とため息をつきながらカバはヒグマのそばへ行き、こう続けた。


「わかってるじゃない。そういうことなら、手伝ってもいいですわよ?」


「ありがとな。でもまずは…」


「まずは?」


「料理の手伝いから頼んでもいいか?」

ヒグマが微笑みながらそう言って、リカオンとキンシコウもふふ、と思わず笑いだす。



「博士、かばんはいなくなってからもパークの平和に貢献してるのです。ヒトとはここまですごいフレンズだったのです」


「その通りなのです。かばんはとてもすごいフレンズだったのですね。 パークをもっとよくして、かばんが帰ってきたとき驚かせてやりたいのですよ」


(おわり)




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