第9話
階段を登ろうとした銀河は軽い眩暈を感じて立ち止まった。
「な…何だ?この上には何か別の空間のようなものが被さっているようだ…」
眩暈を何とかやり過ごし、銀河は階段を登ろうとした。
「寿さんっ」
その時、急に広間から明川が飛び出して来た。
「明川さん?」
銀河は足を止めて彼を見た。
明川の顔色はあまり優れないように見える。
「あの、実はまだお話ししていない事があるんです」
「話してない事?」
「それが…その、この建物の中で行方不明になった方がいるのです」
「行方不明?それは瀬古嘉吉さんではなくですか」
銀河は訝るように首を捻る。
「ええ。これは瀬古様の方から伏せておくように言われているのですが、以前からこのお屋敷では「神隠し」が頻繁に起こっていたらしいのです」
「神隠しですか?それは一体……」
「こちらに来て下さい。ご説明します」
明川に促され、銀河はベースとなっている広間に戻った。
広間に来ると、先ほどまで感じていた眩暈は収まっていた。
明川は机の上に置いた分厚いファイルを銀河の方へ持っていく。
「これを見て下さい」
「……………」
差し出されたファイルを受け取り開いてみる。
A4サイズのファイルは新聞や雑誌のスクラップを集めたもののようで、開くと古い紙の匂いが広がった。
「これは……」
銀河の目が大きく見開かれた。
新聞の日付は大正12年、3月24日とある。
大きな見出しにはこうあった。
「密室から女児消える」
他にも時代は昭和になり、昭和3年、6月12日。
「消えた新妻。家族の目撃証言もなく」
そんな見出しの記事が他にも3件くらいあった。
銀河が緊張した面持ちで明川の方を見る。
「明川さん……これはもしかして…」
明川は頷く。
「ええ。全て瀬古家のご家族です」
「……………」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます