さわわん
渡辺勘兵衛
(以下勘兵衛):「殿!!勘兵衛に御座りまする。」
渡辺勘兵衛
柴田勝家や羽柴秀吉より2万石もの高禄でオファーされた豪傑。
他大名からも評価の高い人物であったが
勘兵衛はそれら全ての誘いを断っていた。
しかしその後、勘兵衛は何故か秀吉の家臣である石田三成に。
それもわずか500石で仕えることになるのでありました。
当時。三成の所領は500石。
不思議に思った秀吉が三成に尋ねたところ
三成自身の取り分が100万石になった際、勘兵衛に10万石を与えることを条件に
今の三成の収入である500石の全てを勘兵衛に与えたとのこと。
秀吉から
「お前はどうするのだ?」
と重ねて尋ねたところ三成は
「勘兵衛の家に居候します。」
と返答。
のちに三成が佐和山を所領とした際、勘兵衛に加増を打診したところ勘兵衛は
「殿が100万石の大名になるまでは500石のままで構いません。」
と断った人物……。
四公六民と考えた場合。
500石の家臣が得る収入は200石。
1石を仮に10万円と見積もった場合。
その200倍でありますので勘兵衛の年収は2000万円。
……そう考えれば十分高給取りと言えば高給取りではありますが
収入の多寡によって
いくさで求められるものが変わるわけではありませんし、
勘兵衛自体も部隊を率いている。
と言うことは
勘兵衛もまた人を雇っている事業主でありますので
実質的な手取りはそれ程多いわけでは必ずしもない。
挙(三成):(……もらえるときにもらっておいたほうが……。)
(……とは言えこちとら2000万円を彼に払っているわけであるので。)
(彼に対する報酬の源はいくさ働き。)
(そのいくさは当面無いわけであるので。)
挙(三成):「勘兵衛!!」
勘兵衛:「ハッ!!!」
挙(三成):「そなたにこれを与えよう。」
勘兵衛:「……殿。これはどのようなことで御座いまするか!!」
挙(三成)が勘兵衛に下賜したのは
三成が普段いくさの時に被っていた『乱髪兜』。
三成自らの兜を与えられたことに事態を吞み込むことが出来ない勘兵衛。
勘兵衛:(……これはもしや殿は豊臣家の行く末に絶望され……。)
(……その形見分けとして私に……。)
(……いやここは是が非でもお止めしなければ……。)
と口を開きかけた勘兵衛に対し挙(三成)は……。
挙(三成):「今後お前はこれを着て公の場で活動をするように。」
勘兵衛:「……。……これは……?」
当惑する勘兵衛に追い打ちを掛けるように挙(三成)が指し示した先にあったもの。
それは……。
「大一大万大吉」
と縫い付けられた犬の着ぐるみ……。
勘兵衛:「……これを身に纏うので御座いまするか……?」
挙(三成):「左様。これを身に纏った上に、先ほど渡した兜を被るように。」
勘兵衛:「……何のために御座りまするか?」
挙(三成):(お前の稼ぎはお前で稼げ……とは言えないからな……。)
……と挙(三成)が答えに窮している内に勘兵衛は
勘兵衛:「……殿が仰られることでありますので。」
「私は殿の考えに従うのみであります。」
挙(三成):(……三成って慕われているんだな……。承諾してくれたよ。)
「うん。そうだな。勘兵衛。」
「折角であるから名前を付けようではないか。」
勘兵衛:「これは有難きお言葉。」
挙みつなり:「……そうだな……。」
「……私の居城は佐和山で……。」
「……犬の着ぐるみ……。」
「……犬は……あぁ鳴くよな……。」
「……佐和山に犬の鳴き声を組み合わせると……。」
(……あれどっかで聞いたことがあるような……。)
(……でも時代から見るとこちらが先になるわけであるから……。)
(……パクったことにはならないぞ……。)
勘兵衛:(……なんか嫌な予感がするのであるが……。)
挙(三成):「よし!!勘兵衛!!!」
勘兵衛:「(何が『よし』なんだろう……)ハッ!!!」
挙(三成):「そなたは本日より『さわわん』と名乗るが良い。」
勘兵衛:(……さわ??……さわ……わん???)
と困惑の表情を浮かべるも平伏する勘兵衛。
左近:(あいつ気の毒だな……。)
と同情しつつも笑いを堪えるのに必死の左近。
その左近に向かって。
挙(三成):「左近!!」
左近:「ハッ!!!」
挙(三成):「今後お前は話すことが出来ない『さわわん』のため。
あらゆる場所で『さわわん』の代弁者となると同時に
イベントの司会を行うように!!」
「お前は今の格好で構わないから。」
左近:「えっっっ!!!」
挙(三成):「どうした左近。」
左近:(家老って限りなく上座の位置から鑑賞するだけの立場のハズでは……。)
挙(三成):「なんだ!?お前も着ぐるみが欲しいのか?」
左近:「……いえ。そのようなことは御座いませぬ。」
左近:(……司会って!!?)
挙(三成):「そうだな。そなたたちはこれまで戦場での活動が多かった故。
このようなことには不慣れであろう。」
「そうだ。ワシが良い人物を紹介する。」
「お前ら両名はそこに通うように。」
と指示された両者が尋ねた先。それは……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます