ぴかぴか?

冷やしたぬき

第1話

「わっせわっせ!」 キコキコキコ


「フェネック……このバスはとても疲れるのだ……」

 「わっせわっせ!」 キコキコ

おや、アライさんも流石に気づいたね。

 わたしたちはハカセたちにいわれて壊れたじゃぱりバスの部品を探す旅に出発したんだけど……。

 じつはまだ、スタート地点の遊園地の入り口がすぐ後ろに見えるくらいしか進んでないんだよね。


「アライさーん、それでどっちにいこうか」

「とにかく前進あるのみなのだ! アライさんの進む先にバスはきっとあるのだ」

「おー、さすがアライさん。凄い自信だねえ」

 こうやっていつもアライさんは明後日の方角につきすすんでいくんだよね。

 でも、それなのにいつもなんとかなってしまうのもアライさんだ。

「ちょっと休憩しようよアライさん。まだまだ先は長いしゆっくり行こうよ」

「なにー! そんなことしてたらかばんさんの出発に間に合わないのだ。かばんさんの旅の成功はアライさんにかかっているのだ」

「それはそうだけど……勢いで出てきちゃったからお水もじゃぱりまんも持ってきてないし、ちょっとハカセのとこに行ってもらってくるね」

「フェネック? あ、ちょ、ちょっとなんで歩いていくのだ? バスてきなものに乗っていかないのか? フェネーック!」

「すぐ戻るからアライさんはちょっとここで留守番しててよ」


 まあアライさんがやる気がありすぎるのはいつものことだけど、この広いパークのなかでいきあたりばったりは流石に無茶すぎるかな。

 かといってわたしにもアテはないしなぁ……これはどうしたものやら。


 遊園地の入り口まで戻ってきた。

 そういえばさっき通ったときになんか大きな絵があったね。アライさんは前しかみてないから気づいてなかったみたいだけど。

 これは……遊園地の絵なのかな? ジャパリパークのあちこちでこういうのは見たことがあるよ。

 絵には赤くて大きな矢印がある。これが今いる場所を表してるのかな?

 この【P】ってのはなんだろう……すぐ近くみたいだね。

 ちょっとついでにみてみよう。


「うーん、これは……」

 まさかのまさか。

 そこにはバスがいくつもあった。

 わたしたちが乗ってた「ばすてき」なものじゃないほう。かばんさん達が乗ってたやつ。

 んー、でもちょっと形がちがうかな。

 こっちのはライオンさんに似てるし、あっちはクマさんみたいな丸い耳がついてる。

 アライさんみたいなのは……ないね。

 でも下についてる丸いものはかばんさんのと一緒みたいだ。

「バスはパークに来たヒトを乗せるためのものだったみたいだし。遊園地みたいな大きな場所なら当然こういうこともあるわけだね。これは盲点だった」

 さて……どうしようか……。

 これをもっていけばわたしとアライさんの旅は早くも終ってしまう。

 まだハカセたちと別れてからちょっとしかたってないのに。

 あれだけ大見得切って(主にアライさんが)まさかの日帰りってのはちょっとかっこ悪いかなぁ。

 うーん。


 よし。


「これは……ぴっかぴか具合がちょっと足りないかなぁ。こんなんじゃアライさんは満足しないねきっと」

 きっとアライさんならもっとまんまるで立派なやつをみつけるよ。

 というのは言い訳だけどね。わたしがこの旅をまだ終らせたくないだけなんだ。

 見つからなかったら、そのときはまたここにくればいいしね。


 ごめんね~かばんさん。

 でもね、せっかくだからもうちょっとだけアライさんと冒険がしたいんだよ。

 アライさんは方向音痴でウカツで根拠の無い自信はあるけど結構泣き虫でどこにいっても面倒なことを引き起こしてわたしがいないと全然ダメだけど……。

 でもアライさんと一緒にいるとワクワクする楽しいことには不自由しないかな。

 かばんさんもいつかアライさんと旅をしてみればわかるよ。まあそのときはわたしも当然ついていくけどね。

 大丈夫、かばんさんの出航までにはちゃ~んと戻るから、いまだけわがままを許してほしいなぁ。

 それに、アライさんなら……本当にもっとぴかぴかで立派なやつを見つけちゃうかもしれないよ。


 そんな予感がするんだ。

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