EPISODE10『遭遇』
「光?あの人誰?」
「アイツは〝精霊マリア〟だ。主に光魔法を使う」
「精霊?」
「あぁ。精霊にも魔法みたいに、火、水、光、闇などの属性があるっていうのを聞いたことがある」
「ねぇ…あの人、ずっとこっち見てない?」
「なんか嫌な予感しかしないんだが…」
すると突然。
「あなた達も私の敵なのね…」
そんな事を呟くとその精霊は片手に持っている大剣を高く持ち上げた。そして勢いよく振りかざしたかと思うと、大きな光の刃が出現し瀬麗那達に向かってきた。
「瀬麗那あぶないっ!……プロテクションッ!!」
光は瀬麗那の前に立つと防御魔法を発動し、爆発と共に閃光が走る。
「きゃあ!!」
光は精霊の刃を防ぐことに成功するが、その衝撃で爆風が発生し瀬麗那は後方に数メートル飛ばされてしまい壁に激突した。
「いったぁ…」
「大丈夫か瀬麗那!?」
「だい…じょうぶ…」
瀬麗那は光の声かけに反応しゆっくりと立ち上がるが意識が朦朧としている上に身体を強く打っているようで上手く動けない。
「全然、大丈夫じゃないじゃないか!……こうなったらやるしかねぇな」
「光……何を」
「詠唱!我、本宮光の名の下に焔の力を!」
光が首に下げている紅色の宝石のようなペンダントを握りしめ詠唱するとそれが光輝き、右手に赤と銀を基調とした長剣が出現し即座に戦闘体制に入った。
瀬麗那は、なんとか光の所に向かう為ゆっくりと足を動かす。
「瀬麗那さん、お兄ちゃん、大丈夫!?」
右の方から、心春の声がする。ところが心春の声に反応した精霊が攻撃対象を心春に切り替えて先程と同じ光の刃を放った。
「心春ちゃん…あぶない…!」
意識がもうろうとしている中、瀬麗那はそれでも今ある力をもって心春の方に向かうと心春を庇った。その直後、瀬麗那達が離れた所で刃が爆発して再び爆風が襲い二人を飛ばす。
「がはっ……!」
「瀬麗那さん!大丈夫!?」
瀬麗那はダメージを受け続け今にも意識を失いそうだ。
「(でも…なんとかして皆を助けないと)」
そう思い願った……刹那。
「(…宝石?)」
手を開くと、そこには黄色く輝く丸い宝石に紐が繋がれたのようなものを手にしていた。
「(そういえば…さっき光が何か言ってた……そうか、あの言葉なら何かできるかもしれない!)」
瀬麗那は先程、光が何か口ずさんでいたことを思いだし、一途の望みを込めそのフレーズを口ずさんだ。
「詠唱……我、本宮瀬麗那の名の下に風の力を!!」
「え?」
「なっ!?」
次の瞬間、黄色い光が瀬麗那を包み込んでいった。隣にいた心春が驚きの表情で瀬麗那を眺めている。
包んでいた光が消えると瀬麗那の右手にはが握られていた。それに傷も痛みも先程の光で綺麗に無くなっているのが分かる。
「せ、瀬麗那さん!?誰にも教えてもらっていないのに何で出来たんですか!?」
「なんか二人を助けたくて、光が言っていた言葉を口ずさんだら…」
「もしかして瀬麗那さんが右手に握っているのって」
「長剣……だよね?」
「それ魔装具ですよ。要するに瀬麗那さんの武器です」
「(これが僕の武器…。これがあれば皆を助けられる!)」
「魔装具は使用者の想いが影響しますから、形、種類は人それぞれなんですよ。それに戦闘時に変形したりする魔装具もあります」
「ところで…魔法ってどうすれば使えるの?」
魔装具は出現させることはできたが魔法も使ったことが無いため当然使い方が分からない。
「魔装具無しで直接放つ魔法とがありますが、まずはその剣に魔力を流し込んで放つイメージをしてみてください!」
「分かった、やってみる」
まず両手で握っている長剣を精霊に向け目を閉じ長剣に魔力を流し込む。確かに少しづつ剣に溜まっていくのが感じられる。そして程よく魔力が溜まったところで一つのフレーズが浮かび射程内にいる光に叫ぶ。
「光ッ!逃げてッ!!」
「せ、瀬麗那!?わ、分かった!」
瀬麗那の警告に光が気づいて横に避けたのを確認した瀬麗那は間を入れず自身の出せる一撃を放った。
「ウィングショット!!」
〝ゴーッ!〟っという音と共に精霊めがけて一直線に向かった。
そして精霊に当たったようで爆発音がして辺りを衝撃波が呑み込んだ。
その後、衝撃波が収まって辺りを見回して二人を探した。
「光ーっ!心春ちゃんっ!大丈夫っ?」
前方に光と心春の姿が見えたので呼んだみた。光と心春ちゃんもこっちに気づいたらしく返事をしてくれた。
「俺は大丈夫だ!心春はッ!?」
「私も大丈夫だよ!」
「(良かった…二人とも大丈夫だった)」
僕は自分の放った魔力砲の威力に驚きつつ光に精霊の姿を探した。しかし、どこにも居なかったので念のため光に聞いてみた。
「光?なんか精霊の姿が見当たらないんだけど…?」
「あぁ、どうやら逃げたみたいだな」
「逃げたんだ…」
「さっき瀬麗那さんが放った魔力砲に恐れて逃げちゃったんじゃない?」
確かに手応えはなかった気がした。
「それよりさ、初めて魔法使ったはずなのにどうやったらいきなりあんな強力な魔力砲を射てるんだ!?凄かったんだぞ?防御魔法を使わなかったらお前にやられてた所だったんだからな!?」
「えっそんなに!?」
「確かにあの魔力砲は凄かったね~」
「ご、ごめんっ…」
「ま、まぁ~?あのままだと三人ともやられてたかもしれないから感謝はしてるけどよ」
どうやら光は照れているみたいだ。
「お兄ちゃん、瀬麗那さん?私思ったんだけど…ずっとここにいるの不味くない?」
「そうだな…とりあえずこの建物から逃げるか」
「そうだね」
こうして三人はショッピングモールを後にした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「あの少女………一体何者なのかしら?」
「まぁいいわ。それより、あの力…私たちの計画に是非とも手に入れたいわね」
瀬麗那たち三人がショッピングモールを後にして間もなく、先程三人が戦っていた場所でそんなことを呟いている一人の女性の姿があった。
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