~森で蛞蝓を助けし触人の事~

 昔、郷州の森にじゃがーといふ触人ありける。川獺の好みに任せおかしき形の石を集め、それを携ひて、あんいん橋の北にいたるときに、一つの蛞蝓の、河を渡れずして、往生せるを見て、あはれと思ひ、その蛞蝓を背に負ひて河を渡し、再び川獺の元へ向へど、携へたる石の失せしことに気づきたる。川獺にそのよしを告ぐるに、川獺はいとよろこび、「面白き石はまたも得べし。蛞蝓を助けしことこそ良きことなれ。然らば今日は我とともに楽しかるべし」と褒めける。

 その夜、縞紋様の衣を着たる少女、来たりていふやうは、「われは、君に助けられたる蛞蝓にして、熱帯草原縞々大蛞蝓様の使ひの者なり。君が情けにめでて、その礼をなさむために来たれり」とて、白米10俵を与へて去りぬ。じゃがーはその米を触人に振るまひ、一層人望厚く栄へける。

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