ゆきやま

ジャパリパークにはゆうえんちやろっじだけではなく、過酷な大自然や過酷ではない大自然も広がっていて、むしろそういった大自然の方がジャパリパークのメインの地域である。ここ「ゆきやまちほー」は過酷な大自然の中でも1,2を争うほど過酷なちほーで、いつも一面真っ白で、気温は氷点下を下回ることが多く、天気も変わりやすく、雪崩も起きる。


そんなゆきやまちほーにいるボスはそこに住んでいるフレンズ達に雪崩の危険をいち早く伝えるために、他のちほーでは必要のない山の測量を行う。それはこの温泉旅館の管理をしているボスも同じで、1日1回夕方に山を測量している。

「ボス、また山を見てるの?」

「山の雪を見ているんダ」

「ボスは遠くに行ってみたいから山を見てるの?」

ボスが話せなかった頃には聞けなかったことをギンギツネは聞いてみた。

「違うヨ。雪が溶けて雪崩が起きないかを見てるんダ」

その後、ふたりは「わかるの?」、「わかるヨ」と取り留めもない会話をして宿泊施設にもどった。


今日はここにはギンギツネとボスしかいない。温泉に浸かりにきたフレンズ達はさっぱりして帰っていき、キタキツネは「ホラー探偵ギロギロの新刊が出たらしいの」と言ってろっじに出かけて行った上に、カピバラまで新しい温泉を求めてこはんに行ってしまったのだ。


その日の晩、やることがなかったギンギツネはいつもキタキツネがプレイしている筐体でゲームをして過ごした。ふだんキタキツネに「ゲームの前に温泉!」など色々言っているギンギツネだが、そのゲームの腕前は超がつくほど凄腕である。

落下してくるブロックを操作して隙間なく敷き詰めて消すゲーム、上空に浮遊している敵が撃つ弾を避けながら敵に弾を当てて撃破するゲーム、画面端から飛んでくるじゃぱりまんを音楽に合わせて袋で回収するゲーム、ひとりのフレンズを操作して巨大なセルリアンを狩るハンティングアクションゲーム…、ギンギツネはどれをやっても華麗なボタンさばきで実にスタイリッシュなプレイを見せる。

「ギンギツネ、やりすぎは良くないヨ」

「そうね。これが終わったら寝ようかしら」

そんな会話をしながらじゃぱりまんを完全回収フルコンボしたギンギツネは寝室に入っていった。


翌日の昼頃、ギンギツネはキタキツネが帰ってきて真っ先にゲームの方に走っていくのを「まずお風呂!」と引き止め一緒に温泉に入った。もちろん毛皮は取っている

「毛皮が取れたり、ボスが喋ったり、カバンさんは凄いことをやってくれるなぁ」

「もう、上がっていい?」

「まだ、あと50数えなさい」

50を数え終わった後、凄い速さで毛皮を着てゲームコーナーに走っていったギンギツネはボスが赤くなっているのを見つけた。

「警告、警告、24時間以内に雪崩が発生する可能性がありマス」

「なんでそんな恐ろしいことを…」

「あ、キタキツネ、雪崩が発生するから今日は建物の中にいてネ」

この温泉宿は雪崩が来ても問題がないようにできている。現に今までこうして建っているのが証拠である。

「あれ、ゲームしてるんじゃなかったの?」

「雪崩が起きるから建物の中にいるようにって、ボスが」

「雪崩が起きるときにカピバラが帰ってこないといいんだけど…」

「この辺りにフレンズが近づかないようにしてるカラ、心配ないヨ」

ボスが言う通り、宿がある雪山の周辺にはどこからともなくボスが集まっており、フレンズが近づかないようにしていた。そして集まっているボス曰く時折「今日は温泉に行こうと思ってましたのに、残念ですわー」と言って帰っていくフレンズや「ボスがこうやって通せんぼしてるのって珍しいですね」と言って満足して帰っていくフレンズがいたらしい。


雪崩が起きたのはその日の夕方で、何度も雪崩に耐えてきた建物は今回も雪崩に耐えた。温泉には雪が流れ込んでしまったが、3日間くらいかければ取り除ける量だった。

そしてボスの働きによって、雪崩に巻き込まれるフレンズは1人も出なかった。


—雪山の雪崩が終了したことを報告。大きな被害は無し。今からフレンズの雪山への立ち入りを許可。温泉周辺にいるラッキービーストに温泉の点検を手配。…自身が最も温泉に近いことを確認。温泉の点検を開始する。


翌日は雪崩の後を見に来るフレンズと今日温泉に行こうとしてボスに止められたフレンズでいつもよりも賑やかになったそうだ。

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みんなもボスとお喋りしたいみたいですよ おれくん @Ore

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