ろっじ

ボスが話せるようになってから衝撃の事実が発覚した。これはその事実が発覚する際にアリツカゲラのろっじで起こった些細な事件の話である。


ある日の朝、タイリクオオカミは寝坊した。…と言っても、別にその日に大事な予定があったとかそういったことはなく、ただいつも通りの時間に起きれなかったのだ。

「おはようアリツさん」

「ああ、おはようござます。今日は遅かったんですね」

「いやぁ、昨日徹夜で新作を完成させたのと、今日はキリンが起こしに来なかったから…、ん?キリンは?」

キリンというのはアミメキリンのフレンズで、ホラー探偵ギロギロと、その作者であるオオカミのファンである。

「今日はまだ起きて来ませんね…。」

「キリンは眠りの短い動物ダヨ。こんなに長く眠るのは珍しいネ」

「なんだかボスが喋るのにもすっかり慣れてしまいましたね。」

「ボスが喋るのに比べたらそんなに不思議じゃない気がしてしまうけど、気になるな…」

オオカミの一言を受け、アリツカゲラがキリンが寝ているはずの「みはらし」の部屋に行くと、キリンはいなかった。

「キリンさんいませんでしたよ〜…」

「さて、どうしてキリンはいなくなってしまったんだろうね。ところでアリツさん、ボス、こんな話は知ってるかい?」


<気配のしないセルリアン>

昔、あるフレンズが遭遇したセルリアンの話なんだけどね、そのセルリアンは音も立てなければ匂いもしなかったんだそうだ。そしてそのフレンズに気付かれることなく背後から…ガブリ


「それはないヨ、オオカミ。『ガブリ』されたフレンズからどうやって話を聞いたのサ」ブルブル

そういうボスは体内にバイブレーション機能があるかのように振動していた震えていた

「おっ、ボスのいい顔頂き☆」

「オオカミさん、そんなことしたら明日からじゃぱりまん貰えなくなりますよ〜」

アリツカゲラが言った今までオオカミがしていたどの話よりも怖い一言にオオカミの耳が垂れる。

「そ、そんな酷いことしないだろう、ボス?」

「最近じゃぱりまんの材料が減っているカラ、明日はオオカミの分が準備できないかもネ。道で落とすかもしれないネ。発注ミスでもしようカ」

カマクラも作ろうか的なノリで便乗するボスにはオオカミも参ったようで、「ごめんよ、ごめんよ」と頻りに頭を下げていた。

「いい顔頂きだヨ、オオカミ」カシャ

ボスが本当にオオカミのいい顔を頂いた撮ったところで、アリツカゲラが話題を戻す。


「キリンさんってここにオオカミさんが泊まっているから泊まってるって感じだから突然いなくなるって変だと思うんですけど…」

「ふうむ…、名探偵の失踪か。創作意欲が湧いてき

「そんなことを言っている場合じゃないですよ」

オオカミのセリフは途中でばっさりと切り捨てられてしまった。

「ここハ、名探偵のボクにマカセテ」

ここでわかった衝撃の事実—それはボスもホラー探偵ギロギロのファンだったことである。突然すぎるボスの発言にオオカミもアリツカゲラも揃って「は?」と声をあげてしまったが、ボスは気にせずに続けた。

「失踪したフレンズを探すにはまず最後の目撃証言を得ないとネ」

「丁度あそこの廊下を通って『みはらし』の部屋に行かれたのを見てますけど」

「私はその前にじゃぱりまんをあげたよ」

「オオカミ、どうしてじゃぱりまんをあげたんだイ?」

「ちょっとうるさかったから静かにしてもらおうと思ってね」

「慕ってる先生から『うるさい』と言われたショックで出て行ったのでは?」

「いや、『うるさい』とは言ってないよ。ただ、『静かにしてくれ』とは言ったね」

…にわかに犯人らしきフレンズが浮上してしまったが、それ以外は特に何も無いようだった。

「足跡を探してみヨウ。キリンは飛べないから足跡があるはずだヨ」

「ボスはキリンみたいな 推理はしないんだね」

「探偵は情報を集めてからが本番だってギロギロも言ってたヨ」

「オオカミさん、かばんさんや博士達にも負けず劣らず賢いですね〜」

「ストップ。足跡ダネ。これを追っていこウ」


しばらくキリンのものと思われる足跡を追ってきた3にんはとしょかんに着いた。

「やあ、博士。キリンを見なかったかい?」

「あ、先生!何してるんですか?」

「突然キミがいなくなったから探していたんだヨ」

「え?あ…、何も言わずに出ちゃったからか…」

「お前はこれを何も言わずに持ってきたのですか!」

「あり得ないですね。助手」

そういう博士の手にはなんと本になったばかりのホラー探偵ギロギロの新刊が握られていた。

「あ。そういえば起きてきたときに『新作ができた』って言ってましたけどそれですか?」

「そうそう、これだよ。いやぁまさか勝手に持って行かれるとは思わなかったよ。次回作は『窃盗事件と助手の裏切り』とかにしようかな」

めるのです、助手と被るのです」

「あれ?でも先生、『持って行ってくれ』って言ってませんでした?」

キリン曰く、朝いつものように先生…オオカミの部屋に行くとオオカミがとてもだらしない格好で寝ていて、口が動いているので耳をすますと 「やっと完成した〜。博士のところに持って行ってくれないか。キリン」と言っていたそうで、最初は寝言かと思ったが、あまりにもハッキリと聞こえたのでそのまま急いで持ってきたそうだ。

「一声かけて下さればよかったのに〜」

「あのときアリツさん、下を向いて何かしてたじゃないですか…。あっ、今思えば怪しい…」

「鳥は立ったまま寝るからネ」

「あ、確かにそのときは寝てました。てへ」


こうして「キリン失踪事件」改め、「キリンとギロギロ最新刊失踪事件」はオオカミの寝言が原因ということで幕を閉じたのであった。



「そういえば、オオカミさんはどんな格好で寝てたんでしょう…」

「それは…、迷宮入りの方がいいと思うよ」

…些細な謎を残して幕を閉じたのであった。

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