旅半ば

@_kei_

しおり

しおりの進まない本がある。

しおりの進まない本には、難しくて興味がなくなりが進まない本と、その言葉を、意思を、感覚を心に刻みたくてを進めたくない本の2つがある。

後者と出会った時、私は身体の中から、まるでシャボン玉に似たようなものがぽわぽわと湧いてくるような感覚になる。


そんな幸せな時間を連れて来てくれる本に、出会える機会は少ないが、

今月購入した本がまさにそれだった。

最近活躍が目覚ましい星野源ほしのげんさんの「いのちの車窓から」というエッセイである。


仕事帰りの巣鴨の書店で購入した。

「袋にお入れしますか?」との店員さんの親切を丁重に断り、カバーだけを付けてもらった本を持ち、電車に乗ったと同時に開き、読み進める。

最初は少しワクワクしつつ読むと、面白い内容に思わず電車で笑みがこぼれた。これは、素敵な本に出会えたんじゃなかと、身体の中が落ち着かないような、そわそわするような感覚になった。

読むにつれ、それは確信に変わり、私の身体からぽわぽわとシャボン玉のようなものが宙を舞う。本を鼻に押し当て、くんくんと匂いを嗅ぐと、幸せな気持ちに包まれた。


(今思えば、その時の電車での私はとても不審者だっただろう、、、。笑みを浮かべたかと思えば、眉間にシワを寄せ、また笑みを浮かべ、急に本の匂いを嗅ぐ。自分で言うのもなんだが、私がそんな人を見かけたら、ひとまず目を合わせないようにする。)


本を読み始め1週間が経った今でも、しおりは進まない。

けれど、私の世界は少し変わった。世界が少し明るく色づいた。この世界は面白い、私の人生はまだまだこれからだと思うようになった。そして、エッセイっていいものだなと思うようになった。自分でもエッセイを書いてみようと思った。

日記のように、ただ思ったことを、素直に綴る。見てくれる人がいなくていい、ただの自己満でいい、その日、もしくは1週間のうちに起ったこと、思ったことをまるで整理する、見直すようにただ書いてみようと思った。

星野源さんのような素敵な文章が書けなくても、私の世界で起きている事実と思いとを、実は素敵な日々を送っていることを自分自身に証明してみせるような、そんなエッセイを書こうと思った。


さて、明日は、今週は何が起こるだろうか。

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