メロディ.

雪森ぎはる

現状

「ねぇ歪魅(ヒズミ)、次どんなんにする?」

「今回はロック」

「OK、歌詞考えとくねー…てなわけで

今回もイラストはよろしくね、曖瀬(アイセ)ちゃん」



…うっさい


「何でいつも私なの」

「だって曖瀬ちゃんの絵好きだし」

「俺らの作る曲に綺麗にはまるし」



どうしてこうなった









崎山曖瀬(サキヤマ アイセ)


普通の女子高生気取り。いや普通ではないか。

こんなよくわからない双子に付きまとわれて普通でいられるはずもない



"田中の双子"と呼ばれる彼らは某動画サイトなどでも有名な、知る人ぞ知る現役高校生歌手、らしい。


それが私の目の前にいるコイツら



田中歪深(ユガミ)と田中歪魅(ヒズミ)

同じクラスで席も隣とその後ろ


大体何このふざけた名前

わかりにくいにも程がある



ちなみに歌手活動の役目は

歪深が歌詞

歪魅が曲を作る


そして曲を作るにあたり重要になる

イラストやPVは何故か…何故か、


私が描いている



数ヶ月前に美術の時に描いた絵を見て

「…惚れた」と歪魅に言われ

その後歪深にも認められたらしく

3作位私が描き続けている



ちなみに、非常に呼びづらいのもあって


歪深をゆーくん

歪魅をひーくん


と呼んでいる





「なー頼むって!!曖瀬様っ」

「そんなこと言われても…」

「……ケーキ作るから」

「うっ…」


ひーくんの作るケーキはめちゃくちゃ旨いんですマジ。あれはプロの犯行。


「今なら僕の入れた紅茶付き~」

「うぐぐっ」


はい、ゆーくんの紅茶も旨い。

なんなのこの双子、出来過ぎだよ

出来杉くんかよ


「…ロックだっけ」

「おっやってくれる?よろしく~!!」

「チョロ…」

「うっさい!!ひーくんのケーキが悪い!!」

「いや俺悪くない」

「うん歪魅は悪くないねぇ」



んなこた知ってるわ!!

私が釣られたのは明らかだ!!

だけどその原因は以下略


「てか私の昼寝の邪魔しないで」

「やだ、曖瀬ちゃん寝ないでよ~」

「曖瀬、ここで寝たら死ぬ」

「流石に死なないって…ここ教室だし」

「…そのまま目を覚まさず、起きたら閉じ込められ…密室殺人が」

「ごめんなさい起きてます」

「ははっ曖瀬ちゃんチョロすぎだって!!」


そんなことを言うゆーくんを叱ってるとキンコンと鐘がなった。

昼休み終わりの合図。あー、寝れなかった


「メロディできたら曖瀬にも渡すからそれ元に頼む」

「はいはい、ひーくんのケーキ楽しみにしてるからね」

「前払いでいいか?明日持ってくる」

「むしろやる気でるからありがたく受け取ります」



実は今から絵が浮かび上がってる

絵を描くことは好きだ

例え下手でも、1人でも私の絵が好きだといってくれればそれでいい

実際、コメントで絵を褒められるとそれだけで励みになる


そうじゃなきゃ、ケーキだけで描こうなんて絶対思わないし、"久しぶり"に褒めてくれた彼らに絵を提供なんてしない




授業中でも私は紙いっぱいに落書きをする。その落書きが最高の絵になることだってある。ちなみにこの授業の先生は起きていれば何しても怒らない人だから堂々と沢山描けた。


「おっ曖瀬ちゃん描いてるねー」

「うわっまだ見ないでよ!!」

「いーじゃん!!ほら、僕の歌詞みせてあげるからさ~ほれほーれ」


ひらひらと泳がせる紙にはこれまた沢山の詩。綺麗な字ではっきりと書かれた、伝えたい一つ一つの単語たち。


「歪魅も授業そっちのけで曲聴いてるよ。ま、考えてるのは明日のケーキの材料だろうけどー」


そんなひーくんの席(斜め後ろ)をみると、確かに音楽を聴いている。手元のノートには苺とかブルーベリーとか書いてる。明日のケーキはベリー系なのかな?












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る